大事故からの復活を目指すコロンビアの至宝
エガン・ベルナル(Egan Arley Bernal Gómez)
所属チーム:イネオス・グレナディアーズ
国籍:コロンビア
生年月日:1997年1月13日
脚質:クライマー・オールラウンダー
主な戦歴
総合優勝(2019)
総合優勝(2021)、ステージ通算2勝(2021 × 2)
総合優勝(2019)、ステージ1勝(2019)
・パリ~ニース
総合優勝(2019)
総合優勝(2018)、ステージ通算2勝(2018 × 2)
・コロンビア国内選手権 個人タイムトライアル
優勝(2018)
・ツール・ド・ラヴニール
総合優勝(2017)、ステージ通算2勝(2017)
3位(2019)
・ストラーデ・ビアンケ
3位(2021)
どんな選手?
圧倒的な登坂力を武器にツール・ド・フランスを22歳の若さで制覇した、コロンビア出身のクライマー。
クライマー大国コロンビアで生まれたベルナルは、コロンビアの有力選手の例にもれず、標高2,000mを超える高地で生まれ育ち、常に高地トレーニングを行うような環境で自転車競技を開始。
ジュニア世代の頃はロードレースではなくマウンテンバイクの選手であり、世界選手権のジュニアカテゴリーで2位に入るなど、早くから結果を残していた。
その才能がロードレース界へ転向したのは、2016年。
イタリアのプロコンチネンタルチーム(現行制度におけるプロチーム)のGM、名伯楽として名高いジャンニ・サヴィオの耳に、ベルナルの情報が入る。
ベルナルがまだ若すぎるために一旦は獲得に難色を示したサヴィオだったが、ベルナルの群を抜いた走行データを知らされると、獲得を決定。
こうしてベルナルは、ジュニアカテゴリー(20歳以下)とU23カテゴリーをすっ飛ばして、飛び級でプロ選手としてヨーロッパで走る事になる。
ヨーロッパ挑戦初年度となった2016年、ベルナルはとても19歳とは思えないハイレベルな走りを披露。
複数のレースでヤングライダー賞を獲得するだけではなく、ヨーロッパツアー1クラスのツアー・オブ・スロベニアで総合4位と、驚きの結果を残す。
若手の登竜門として名高いツール・ド・ラヴニールでも、並み居るU23世代の有力選手に交じって、総合4位に。
まだ年齢としてはジュニアカテゴリーの選手がこれだけの成績を残すのは、当時としては異例の出来事だった。
翌2017年もベルナルの勢いは止まらず、ワールドツアーのティレーノ~アドレアティコでヤングライダー賞2位、HC(現行制度におけるプロシリーズ)のツアー・オブ・ジ・アルプスで総合9位、ヨーロッパツアー1クラスのシビウ・サイクリングツアーではステージ2勝を挙げて総合優勝と、その実力は完全にトップカテゴリーで通用するものになっていた。
そして、前年に続いて出場したツール・ド・ラヴニールでは、ステージ2勝を挙げて総合優勝を飾る。
まだ20歳の若さと言っても、これだけの結果を残せば流石にワールドチームが黙ってはいなかった。
争奪戦の末、2018年からは当時最強の総合系チームであったチーム・スカイ(現イネオス・グレナディアーズ)への加入が決定する。
2018年、ベルナルはワールドチーム加入初年度ながら、2月のコロンビア国内選手権個人タイムトライアル優勝を皮切りに、相変わらず結果を残し続ける。
4月、ツール・ド・ロマンディの山岳個人タイムトライアルにおいて、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)やリッチー・ポート(BMCレーシングチーム)などのトップ選手を下して、ワールドツアー初勝利。
5月には、ツアー・オブ・カリフォルニアでステージ2勝を挙げての総合優勝。
21歳でワールドツアーのステージレース総合優勝は、当時の最年少記録だった。
そして7月には、早くもツール・ド・フランスに初出場する事に。
ツール3連覇中の最強チームにおいて、ワールドツアー初年度の21歳の選手がメンバー入りするだけでも凄い事だったが、ベルナルは山岳アシストとしてしっかり活躍。
特に、第17ステージと第19ステージでクリス・フルームを助けた牽引は、このアシストが無ければフルームの総合3位が危うかったと言えるほど重要なものであり、チームの総合1・3フィニッシュに直接的に貢献したと言えるだろう。
2019年、既にその才能の証明が十分すぎるほどであったベルナルは、ジロ・デ・イタリアで総合エースとして走る事を目標にシーズンをスタートさせる。
3月のパリ~ニースで抜群の安定感を見せて総合優勝と、その仕上がりは順調と思われたが、ジロの直前にトレーニング中の落車で骨折してしまい、ジロは回避する事に。
ベルナルは改めてツールを目指して調整する流れになり、前哨戦の1つであるツール・ド・スイスに出場する。
そんな最中、チームを揺るがす大アクシデントが発生。
これまでツール総合優勝4回、2018年も総合3位に入った大エースであるフルームが、同じくツールの前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネで、個人タイムトライアルの試走中に壁と激しく激突して、重傷を負ってしまったのだ。
チームに激震が走る一方で、ベルナルはツール・ド・スイスでステージ1勝を挙げて総合優勝と、しっかり快走を披露。
結果、イネオス(2019年5月より、チーム名がスカイからイネオスに変更)はベルナルと前年ツール覇者のゲラント・トーマス、2人のエースでツールに挑む事になる。
初めてエースとして臨むツールで、ベルナルは若手らしからぬ安定した走りを披露。
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)による予想外の快進撃でフランスのファンが沸く中、2週目を終えるまでは静かに機を伺っていた。
迎えた3週目、最大の勝負所と目されていたアルプス山脈に入ると、ベルナルの登坂力と高地適正が遺憾なく発揮される。
まずは第18ステージ、ガリビエ峠(標高2,642m)でライバルたちを置き去りにして30秒以上のタイムを稼ぎ、総合2位に浮上。
そして第19ステージ、今大会最高峰のイズラン峠(標高2,770m)では、山頂まで5km以上ある位置からアタックを仕掛けると、前日同様にライバルを一気に突き放す事に成功。
イズラン峠山頂までに逃げていた選手も全て抜き去り、そして総合勢のライバルに約1分もの差を叩きつけたその圧倒的な登坂力と高地適正は、まさにベルナルの真骨頂だった。
その直後、第19ステージは悪天候のため中断となり、イズラン峠の通過タイムがステージの最終リザルトとして反映されることになり、ベルナルは総合首位に浮上。
続く第20ステージ、これまた悪天候のために短縮され、ヴァルトランス峠(2,365m)の登坂一発勝負となったレイアウトで、ベルナルは危なげなくリードを守り切り、総合優勝が実質確定。
弱冠22歳でのツール総合優勝は、当時の戦後最年少記録。
このベルナルの若くして圧倒的な力と同時に、イネオスとしては前年覇者トーマスも総合2位に入った事で、フルームの離脱がありながら、改めて総合争いにおける盟主としての立場をアピールできたツールだった。
ツール制覇で一気にロードレース界の主役に躍り出たベルナルは、秋にはイタリアのワンデーレースに挑戦。
グラン・ピエモンテで優勝、そしてモニュメント(5大ワンデーレース)の一角、「クライマーズ・クラシック」として名高いイル・ロンバルディアで3位入賞と、その才能が総合レースだけに収まらない事を見せつけた。
22歳でのツール総合優勝と、その破格の才能で早くもロードレース界の頂点を掴んだベルナル。
2010年代の総合争いはチーム・スカイの時代、フルームの時代だったが、2020年代はチーム・イネオスの時代、ベルナルの時代となるのだろうか。
圧巻の登坂力、とても若手とは思えない落ち着き、そして強大なチーム力は、そうなると予感させるには十分すぎる。
コロンビアからやってきた特大の才能が、果たして今後どれだけの結果を残していくのか、楽しみにしながら応援していきたい。
※2020年12月19日追記
ツール・ド・フランスのディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2020年シーズンは、ベルナルにとって非常に厳しいものとなってしまった。
コロナウィルスによるレース中断の前に出場予定だったパリ~ニースは、監督である二コラ・ポルタル氏の急逝の影響もありチームとして出場を回避。
チームの黄金期を築き上げた若き名将の突然の訃報の影響も大きかったのか、8月からのレース再開後のイネオスの歯車は噛み合わない。
まず、ベルナルと共にツールをトリプルエース体制で戦う予定のクリス・フルームとゲラント・トーマスの調子が一向に上がらない。
2人に比べてそれなりに走れていたベルナル自身も、ツール前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネ第3ステージ終了後、背中の痛みを訴えてリタイアしてしまう。
そして結局、ツールの出場メンバーにフルームとトーマスは選ばれず、ベルナルは自身もコンディションが万全ではない中、エースとしての重圧を一身に受ける立場となった。
そして迎えたツール開幕、当初の予定からメンバー変更もあった影響か、イネオスはチーム全体の調子が上がらないまま。
それに対して、最大のライバルと目されていたチーム・ユンボ・ヴィスマとエースのプリモシュ・ログリッチは、前哨戦と同様に圧倒的な力を披露。
ユンボの支配力に対してイネオスがチームとして対抗できない中、コンディションに不安のあったベルナルはやはり調子が上がり切らない様子を見せつつも、それでも第12ステージまではログリッチとタイム差無しのフィニッシュを続け、ボーナスタイムの秒数だけ差の開いた総合2位に位置付ける。
しかし、第13ステージの山頂フィニッシュ手前で少し遅れ、ログリッチから38秒離れてしまい3位に転落。
そして第15ステージ、ベルナルは超級山岳グランコロンビエール峠の中腹で突如失速。
先日のドーフィネをリタイアする原因となった背中の痛みがここで悪化し、7分20秒という決定的な差を付けられてしまった。
これで実質終戦となったベルナルは、第16ステージ終了後にリタイア。
ベルナルが2連覇を達成できなかっただけでなく、これでイネオス(前身のチーム・スカイを含む)のツール連覇が5で止まる事となった。
そしてそのままログリッチが優勝するかと思われたツールは、なんと第20ステージでタデイ・ポガチャルが歴史に残る走りを見せて大逆転での総合優勝を飾る。
前年に戦後最年少となる当時22歳で総合優勝したベルナルよりも1年若い、21歳での総合優勝となった。
ツール・ド・ラヴニール総合優勝、ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝、そしてツール総合優勝と、まるでベルナルの経歴をなぞる様に結果を残してきたポガチャル。
ベルナルにとっては早くも最大のライバルが登場したと言えるだろう。
少しタイプは違うものの2人とも超一流の登坂力を有しているので、今後10年に渡って山岳での熱い総合争いが繰り広げられるはずだ。
ここまで順調すぎると言っていいほどのキャリアを送ってきたベルナルが、初めて大きな敗北を味わった2020年。
冷静沈着に見えながらも実はかなり負けず嫌いで熱いハートを持っているベルナルが、その挫折を乗り越えて2021年はどんな走りを見せてくれるのか。
ファンとして大いに期待しながら、見守っていきたい。
※2021年11月2日追記
前年は挫折を味わったベルナルは、ケガ明けながら2021年シーズンの初頭から順調な走りを見せる。
ツール・ド・ラ・プロヴァンスではチームメイトのイヴァン・ソーサにチャンスを譲りながらの総合3位、更にはトロフェオ・ライグエリアでの2位。
そして何より、強豪ワンデーレーサーと渡り合ってのストラーデ・ビアンケ3位は、タフさや未舗装路の適正という新たな強みを披露した事も含めて(ジュニア時代はマウンテンバイクの選手だったので未舗装路適性は当然ではあったが)、驚きの結果だった。
直後のティレーノ~アドレアティコではクイーンステージで少し遅れを喫するも総合4位に入り、その力が昨年のケガ以前のものに戻ってきていると実感させてくれるには十分だった。
そして、満を持しての初挑戦となったジロ・デ・イタリア。
プロ生活をスタートさせた「第2の故郷」イタリアの地で、ベルナルは躍動する。
まずは第4ステージと第6ステージ、総合勢の中ではトップでフィニッシュして、やはりその仕上がりが順調な事をしっかりとアピール。
1週目最大の勝負所と目されていた第9ステージ、「急勾配も含む未舗装路」というかなり特殊なフィニッシュ前のレイアウトで、ベルナルは明らかに他の選手と違う勢いでペダルを踏み込み、後続を完全に引き離してステージ勝利を飾る。
自身初のグランツールステージ勝利、そして総合首位に立ちマリア・ローザ着用となったベルナルの勢いは、2週目も衰えない。
「ストラーデ・ビアンケ風」の未舗装路が設定された第11ステージでは、未舗装路区間ではライバルを振り落とすために自らが集団先頭を牽く積極性を見せ、そして舗装路の登坂で残ったライバルも突き放す、これまた別格のパフォーマンスを披露。
厳しい激坂を有するゾンコラン山頂フィニッシュの第14ステージでは、調子を上げてきたサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)のアタックに唯一反応して、そしてフィニッシュ手前ではそのサイモン・イェーツをも振り切り、またしても総合勢トップフィニッシュでリードを広げる事に成功。
そして圧巻だったのは、大会最高峰のジャイ峠を越えてのフィニッシュとなる第16ステージ。
冷たい雨の中、ベルナルがメイン集団からアタックすると、ライバルは誰も付いてこれない。
全ての逃げを追い抜いて先頭で山頂を超えたベルナルは、そのまま問題なくダウンヒルもクリアして単独でフィニッシュ地点にやって来る。
そしてフィニッシュ直前、おもむろにレインジャケットを脱ぎ、総合首位の証であるマリア・ローザを見せつける。
マリア・ローザへの敬意と王者としての矜持を見事に表現したそのパフォーマンス、そしてライバルを突き放す圧倒的な走り。
この瞬間、2020年はケガで苦しんだ2019年ツール覇者が、ベルナルが「復活」したのだ。
3週目、第17ステージでは調子を崩してサイモン・イェーツに遅れを取るシーンもあったが、ダニエル・マルティネスの献身的なアシストもあり、傷口を最小限に抑える事に成功。
その後の第19ステージ・第20ステージでもライバルは逆転を狙って攻撃を仕掛けてきたが、小さくない総合タイム差がある事を活かした冷静な走りを見せ、マリア・ローザをしっかりと守り抜く。
そして最終ステージの個人タイムトライアルも無事に走り抜き、見事ジロ・デ・イタリア総合優勝を掴み取った。
この自身2度目となるグランツール制覇で、やはりその力はトップクラスにあると改めて証明できたと言っていいだろう。
ツールやオリンピックは回避して、ベルナルはこれまた初挑戦となるブエルタ・ア・エスパーニャに出場。
3連覇を狙うログリッチとの直接対決は当然として、もし総合優勝する事ができれば史上最年少での全グランツール制覇となる点も注目を集めていた。
しかし、ベルナルはジロ閉幕後に新型コロナウィルスに罹患していた影響もあり、特に1週目は明らかに調整不足だった。
第1ステージの個人タイムトライアルで27秒のタイムを失うだけでなく、第9ステージの山頂フィニッシュでもログリッチから1分以上の遅れを喫してしまう。
それでも、3週目の第17ステージでは残り60km地点からまさかのロングアタック、第18ステージでも再三のアタックと、結果的に成功はしなかったもののファンを喜ばせるような積極的な姿を見せてくれた。
その後、第20ステージではまたタイムを失ってしまい、総合6位で初めてのブエルタを終える事になったベルナル。
最終的な結果だけを見ればベルナルにしては振るわなかったと言えるかも知れないが、コンディションが万全ではないながらも終盤に見せたその積極的な走り、そしてどこかリラックスしながらレースを楽しむ様子は、来シーズン以降に期待を抱かせるには十分だっただろう。
苦しんだ2020年を超えて、また新たな一歩を踏み出したベルナル。
来シーズンから始まるであろうその物語の新章を、楽しみにしていたい。
※2022年11月13日追記
2022年の1月15日、ショッキングなニュースが世界中を駆け巡った。
母国コロンビアでトレーニング中のベルナルが、停車中のバスに衝突してしまい、重傷を負ったと…。
幸い、命に別状はなかった。
それでも、大腿骨の粉砕骨折、膝蓋骨の解放骨折、更には胸椎の脱臼骨折など、スポーツ選手としては致命傷になりかねない重傷を負ってしまったのだ。
復帰時期は不明、当然今シーズンのツール出場は絶望的、そもそもトップコンディションに戻せるのかすら分からない。
前年に輝きを取り戻したベルナルは、またしても大きな試練との戦いを余儀なくされてしまった。
「来シーズンにでも戻ってこれたら僥倖」というレベルの重傷を負ったベルナルだったが、なんと手術の2週間後には退院、更にその翌週にはエアロバイクでのトレーニングを開始と、とんでもない勢いでの回復を見せつける。
3月末には屋外でのトレーニングを開始すると、7月にはブエルタに出場予定の選手とともに高地合宿を行うなど、常人とは明らかに違うペースで力を取り戻していく。
そして噂される、シーズン中の復帰。
ブエルタに向けた高地合宿に参加という事で、前哨戦であるブエルタ・ア・ブルゴスでの復帰や、ブエルタ期間中に開催されるドイツランド・ツアーで復帰するというような報道が出ていた。
そんな中、突如発表されたツアー・オブ・デンマークへの緊急参戦。
あの痛ましい事故から半年余りの時を経て、ついにベルナルはレースに戻ってきたのだ。
その後ベルナルは、ドイツランド・ツアー、ジロ・デラ・トスカーナ、コッパ・サバティーニと転戦。
ジロ・デラ・トスカーナまではアシストに支えられつつ途中リタイアが続いていたが、コッパ・サバティーニでは28位でフィニッシュと、復帰後初の完走を果たして見せた。
2019年に世界の頂点を取り、2020年はケガに苦しみ、2021年に改めて頂点への挑戦権をアピールするだけの結果を残し、そして迎えたこの2022年。
事故の直前までトレーニングがとても順調そうな様子を伝えてくれていて、非常に期待度が高かっただけに、失意の1年になってしまったのは間違いない。
それでも、改めてベルナルが見せつけてくれた規格外の回復力や、長期のリハビリに励む不屈の闘志は、また新たな期待を抱かせてくれるものであった。
正直なところ、どのタイミングでトップコンディションにまで戻せるのかは、まだ分からない。
それでも、きっとその眼差しは頂点を見据えている。
「本当の復活」を目指し、また力強くペダルを踏み込んでいくのだろう。
改めて頂点を目指す、ベルナルの走りに大いに期待していきたい。
※2023年11月14日追記
2023年のベルナルは、1月のブエルタ・ア・サンファンからシーズンを開始させる。
残念ながら落車の影響により第6ステージでリタイアする事になったものの、第5ステージの1級山岳山頂フィニッシュではステージ4位に入る好走を見せ、その登坂力が回復傾向にあることを伺わせた。
ただ、まだ一線級の相手と戦って勝利を挙げられるようなレベルに戻った訳では無く、ツール・ド・ロマンディでの総合8位が、シーズンを通しての一番大きなリザルトと言えるだろうか。
リザルト以上にポジティブな要素としては、まずは年間を通して大きな離脱が無く走り切った事が挙げられるだろう。
そして、ツールにブエルタ、2つのグランツールをしっかり完走したのには大きな意義があるだけでなく、結果的に年間レース出走数79、そしてレース距離12,117kmと、いずれも自己最高の数字を残す事になった。
これは恐らく、意図してレース強度の負荷を掛け続けたのであろう。
特にツールでは、メイン集団から脱落した後、グルペット(山岳が苦手な選手による大集団)と共に走るのではなく、しっかり自分のペースで走ってフィニッシュしていたという情報もあった。
当然、2019年や2021年の走りには程遠いが、「復活」に向けて着実に走り続けているベルナル。
活躍し始めた時期が早いので勘違いしそうになるが、2024年1月で27歳と、一般的に「脂がのってくる」と言われるような年齢を迎えるのは、本来はこれからだ。
現時点で、2024年のメインターゲットはブエルタであることが発表されている。
コンディションを完全に戻せたのなら当然総合優勝候補の1人である上に、もし総合優勝したら史上8人目となる「全グランツール制覇」を達成する事になる。
勿論、2024年シーズン中にそこまでコンディションを戻せるのかは、誰にも分からない。
それでも、間違いなくベルナルは前を向いて走っている。
完全復活を目指して、走り続けている。
そんなベルナルを、これからも全力で応援していきたい。