君のジャージは
ロードレース中継を見ていると、各チームの色とりどりのジャージがよく印象に残ると思います。
少し慣れてくるとジャージの色でチームを判別し、例えば「集団から飛び出したあのアスタナの選手は誰だ?」「今集団の先頭にいるのはボーラの選手たちか」なんて思う事もあると思います。
そして、どのチームのジャージとも違う特別なジャージを着た選手がいるという事に気が付いたでしょうか?
中継で言及されることも結構ありますが、その意味を知らない内は「どのチームの選手か分からない・・・」と混乱してしまう要素でもある特別なジャージについて解説していきたいと思います。
チャンピオンジャージ
毎年、国内選手権、大陸別選手権、世界選手権が行われていて、その勝者は特別なデザインのチャンピオンジャージの着用が許されます。
・国内選手権
国内選手権で優勝すると、国旗のデザインをあしらった特別ジャージを着用する事が許されます。
グランツールなどの主要レースでは、様々な国のチャンピオンジャージ着用者が出場する事も多く、各国の国旗をあしらったジャージが集まるその光景はなかなかに壮観です。
※2014年のジロ・デ・イタリアで日の丸のデザインが入ったジャージを着用している新城幸也選手
・大陸別選手権
ヨーロッパ、アジア、アフリカなど大陸別(地域別)の王者を決める大会も行われていて、勝者は特別デザインのジャージ着用が可能…な筈ですが、自分はヨーロッパ選手権のチャンピオンジャージしか目にしたことがありません。
どうやらこれは、アジアやアフリカといったロードレースの歴史が浅くて格式の低い地域のジャージは、通常のジャージのデザインが変わる(スポンサー名が目立たなくなる)事をスポンサーが嫌がるという理由で、基本的にヨーロッパ以外の地域のチャンピオンジャージは着用する権利を行使しないという事のようです。
※2020年のヨーロッパ選手権、表彰台でチャンピオンジャージを受け取ったジャコモ・ニッツォーロ
・世界選手権
世界選手権に優勝するとマイヨ・アルカンシェルという虹色のジャージが贈られます。
やはり世界選手権なのでその価値はとても高く、後述するグランツールのリーダージャージと並ぶロードレース界を象徴するジャージと言っていいでしょう。
※世界選手権3連覇を達成し、アルカンシェルを3年間も身に纏い続けたペテル・サガン
これらのチャンピオンジャージは翌年の同じ大会までの1年間、全てのレース(※)で着用できます。
※上述のどのカテゴリーの選手権も人ロードレースと個人タイムトライアルの2種目が行われているので、ロードレースの優勝者は通常のレースの際にチャンピオンジャージを、タイムトライアルの勝者はタイムトライアルステージでのみチャンピオンジャージを着用します
※2020年のロードレース世界王者ジュリアン・アラフィリップ
※2020年の個人タイムトライアル世界王者フィリッポ・ガンナ
また、過去に優勝経験がある場合、袖口に虹色や国旗の色のラインを入れることもできます。
※右袖に虹色のラインが入っているミハウ・クフィアトコフスキ(2014年世界選手権優勝者)
リーダージャージ・特別賞ジャージ
チャンピオンジャージと違い、そのステージレースの期間中のみ着用するのがリーダージャージと特別賞ジャージです。
リーダージャージは総合順位が1位の選手が着用し、そのレースを象徴する存在として扱わます。
特にグランツール(3大ステージレース)では各レースのモチーフカラーとなっていて、ゲートや看板など各所にその色が使われています。
特別賞ジャージは何種類か存在し、主に
- スプリントポイント(ゴール時と中間チェックポイント通過時に順位に応じて加算)が最多の選手が着用する「ポイント賞ジャージ」
- 山岳ポイント(山頂通過時に順位に応じて加算)が最多の選手が着用する「山岳賞ジャージ」
- 25歳以下の選手で総合成績が最上位の選手が着用する「ヤングライダー賞ジャージ」
などがあります。
リーダージャージも特別賞ジャージも、各レースごとにデザインが異なります。
グランツールを例にすると
- リーダージャージ(マイヨ・ジョーヌ)黄色
- ポイント賞ジャージ(マイヨ・ヴェール)緑色
- 山岳賞ジャージ(マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ)赤い水玉模様
- ヤングライダー賞ジャージ(マイヨ・ブラン)白色
- リーダージャージ(マリア・ローザ)ピンク色
- ポイント賞ジャージ(マリア・チクラミーノ)紫色
- 山岳賞ジャージ(マリア・アッズーラ)青色
- ヤングライダー賞ジャージ(マリア・ビアンカ)白色
- リーダージャージ(マイヨ・ロホ)赤色
- ポイント賞ジャージ(マイヨ・プントス)緑色
- 山岳賞ジャージ(マイヨ・モンターニャ)青い水玉模様
- ヤングライダー賞ジャージ(マイヨ・ビアンコ)白色
このように、ヤングライダー賞以外は違う色になっています。
※ツール・ド・フランス2019表彰式での各ジャージの着用者。ヤングライダー賞ジャージは中央のベルナルが総合1位と同時受賞のため、左手に持っています
観戦時のジャージ活用
どのジャージも慣れてくると選手の判別にとても役立ちます。
そもそもの話として、1919年のツール・ド・フランスで「総合1位の選手が誰なのかパッと見て判別できるように」とマイヨ・ジョーヌが作られたのが始まりらしいので、当然と言えば当然の話ですね。
いずれにしても、チャンピオンジャージもリーダージャージ・特別賞ジャージも、着用しているのはそれ相応の実力者になります。
レースの中心となるこれらの選手に注目しながらレースを楽しんでみましょう!