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【レース感想】パリ~ニース2020 第6ステージ~第7ステージ

終盤戦、魂の激闘!

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白熱した中盤戦を終え、最終第8ステージのキャンセルが発表されたパリ~ニース2020。

他のレースも軒並み中止・延期となっているので、実質休止前の最後の戦いとなったこのレース、総合優勝に向けた熱い終盤戦を振り返っていきます!

※コースの概要や有力選手など、レースプレビューはこちらの記事をどうぞ!

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※序盤・中盤の感想はこちら!

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 第6ステージ

事前のプレビューでは「あまり山岳が厳しくないから総合勢は動かない」と予想していた第6ステージ。

1日短縮となった事で総合優勝を狙うチーム・選手がかなり活発に動いた1日に

※ここまで毎ステージやっていたtwitterでの予想は、直前に発表された最終日キャンセルの情報やジロ・デ・イタリア延期の情報を調べているうちに忘れていました(汗

 

まずは最初の2級山岳を超えた辺りで逃げが形成され、メイン集団からは1分ほど先行。

逃げ集団の7人の中で、コフィディス・ソルシオン・クレディの二コラ・エデが積極的に山岳ポイントを獲得していき、ステージ終了時には山岳賞でトップに。

11年ぶりにワールドチームに返り咲いたコフィディスとしては、このパリ~ニースの第1目標はエリア・ヴィヴィアーニでのスプリント勝利だったのだろうけど、それが叶わなくともしっかりと結果を残しに行く姿勢は素晴らしかった

 

そのエデとロマン・バルデの2人が先頭集団から飛び出して「先頭2人」「追走5人(ついていけない選手が剥がれて減っていく)」「メイン集団」となっている状況で、メイン集団からはチーム・サンウェブのニキアス・アルントが飛び出して追走に合流

すると次は、またしてもサンウェブのセーアン・クラーウアナスンがメイン集団から飛び出し、この時に「あ、これ前待ち作戦か(※)」と気付く。(※アシストを先行させ、後から合流したエースを助ける戦術)

易々と追走に合流したクラーウアナスンはアルントのアシストを受けてさらに加速し、そのまま先頭集団に合流!

勢いそのままに最後の2級山岳でエデとバルデを引き離し先頭を単独で走るクラーウアナスン

総合2位のクラーウアナスンを(登りは強くないので翌日の山岳ステージで遅れるのが確実とはいえ)このまま放置する訳にはいかないメイン集団

追走の為にアタックを仕掛けたのは、ここまでのステージではあまり目立っていないが地味にいい位置につけている大ベテランのヴィンチェンツォ・ニバリ。

このニバリのアタックにメイン集団から反応したのは、またしてもサンウェブのティシュ・ベノート!

ニバリについていくどころか、なんと途中でニバリを引き離して1人で先頭のクラーウアナスンと合流することに成功!

現時点で総合2位のクラーウアナスンとエースのベノートの2人での抜け出しに成功という、サンウェブとしては完璧すぎる展開に。

もちろんメイン集団は追いかけたいけど、牽制状態になってしまい上手くペースが上がらないという、エース同士の集団では「あるある」な状態に・・・。

ベノートはこの機を逃さずにクラーウアナスンのアシストを受けてさらに加速して単独で先頭を快走、そしてそのままステージ優勝!

メイン集団も20秒ほど遅れてゴールインするが、メイン集団の先頭でフィニッシュし2位となったのはこれもまたサンウェブのマイケル・マシューズ!

ベノートと総合争いをしているセルヒオ・イギータより先着する事により、イギータに与えられる上位フィニッシュ時のボーナスタイムを削るという見事な仕事をやってのけた!

 

アルント → クラーウアナスン → ベノートという「多段式前待ち」とでも呼びたくなる作戦が大成功した上に、マシューズもしっかり残って2位に入るというチームとして完璧な連携を見せたサンウェブ

 個人競技でありながらチーム競技でもある」というロードレースの魅力が存分に発揮された素晴らしい勝利に、もうテンション上がりまくり!

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そんな中、リーダージャージのマクシミリアン・シャフマンが残り800m地点の下りコーナーで壁に激突するハプニングも。

いや~、ダウンヒルでスピードも出ている最中での壁(正確には手前に設置されたフェンス?)への衝突で、大した怪我がなかったのは奇跡的な気が・・・(汗

去年のクリス・フルームの例もあるので心配したけれども、表彰台で元気そうな姿(苦笑いだったけど)を見せてくれてまずは一安心

このトラブルによって集団から少し遅れてフィニッシュしたシャフマンだが、「フィニッシュ地点から3km以内のトラブルによる遅れは集団と同タイム扱い」という救済ルールが適用される事に。

正直、これは微妙な気が・・・。

集団落車やメカトラの際に適用されるのはとても納得度が高いけれども、完全に自分の責任での単独落車に適用されるのは違和感を感じる・・・というのが本音。

まぁ、調べてみると「明文化されているルールに則った結果」のようなので、とりあえずここはシャフマンの無事を喜んでおく。

 

第7ステージ

第8ステージの中止により最終ステージとなった、1級山岳フィニッシュの第7ステージ。

総合1位から2分差以内に9名の選手がひしめく大混戦の中、最終決戦に相応しい平均勾配6.3%・登坂距離16.3kmの1級山岳で、どんな戦いが繰り広げられるのか・・・。

 

放送開始前なのでテキスト速報で確認していると、レース開始直後からいきなりアタック合戦が繰り広げられた様子が伝えられてくる。

イギータ、バルデ、ニバリ、ベノート、ナイロ・キンタナ、ジュリアン・アラフィリップ、ティボー・ピノ、トーマス・デヘントなど、普通に考えたらこんな序盤でアタックしないマジでエース格同士のアタック合戦だった模様・・・!

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Paris - Nice 2020 | Stage 7 | Livestats site v4

これは映像で見たかったなぁ・・・。

流石にこのメンバーでの逃げが許されるわけもなく、最終的に逃げのメンバーはアラフィリップ、デヘント、エデ、オレリアン・パレパントル、アントニー・ペレス、アルベルト・ベッティオルの6人に。

しばらくは「逃げ6人」と「メイン集団」の状態を維持したまま進み、途中の山岳ポイントではエデがしっかりと先頭通過して山岳賞の受賞を確定させる。

 

最後の1級山岳突入時点ではエデのアシストという仕事を終えたペレスが途中脱落して逃げが5人、メイン集団との差は1分30秒ぐらいあるけれども、ボーラ・ハンスグローエやチーム・アルケア・サムシックが強力な牽引を開始して一気にタイム差は縮まってきている状況。

そんな中、逃げ集団からデヘントが強力な飛び出しを見せて単独で先頭に!

この時点でメイン集団もアルケアの強力な牽引により凄いスピードで走っていたけど、デヘントのペースも異常なぐらい速くてなかなか差が縮まらない。

その後もアナコナの謎アタック(キンタナのアシストしなくていいの?)やそれに合わせたギヨーム・マルタンの動き、バルデのアタック等もあったけれどデヘントは順調に逃げ続ける。

その表情は鬼気迫るような気合に満ちていて、「逃げ職人」としての矜持を感じさせる本当にカッコいいものだった。

 

「メイン集団の牽制が続けばデヘント逃げ切りの可能性も・・・」なんて考え始めた頃、残り4km地点でキンタナがアタック!

あっという間にデヘントを追い越し、そのまま山を翔ぶように登っていき見事に独走でのステージ優勝を飾る!

キンタナは第2ステージでの落車の影響で1位から2分38秒遅れている為、流石に総合優勝は厳しいものの、このアタックは本当に凄まじかった!

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その後メイン集団もニバリのアタックをきっかけに活発化して、逆転優勝を狙うベノートが抜け出すも、シャフマンが何とか遅れを最小限に留めて総合優勝に輝く!

ボーラがスプリントステージでの勝利も狙う編成だった為に、山岳アシストの少なかったシャフマンのダメージはゴール直後は起き上がれない程のものだったけど、死力を尽くしてリーダージャージを守り切ったその走りは優勝に相応しいものだった。

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激闘を終えて

最終総合成績は以下のように。

1位:マクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ) 27時間14分23秒

2位:ティシュ・ベノート(チーム・サンウェブ)+18秒

3位:セルヒオ・イギータ(EFプロサイクリング)+59秒

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正直な話、開幕前はシャフマンが総合優勝すると予想していた人はほぼいなかったのでは?

チームもパスカル・アッカーマンをエースに据え、急遽参戦したペテル・サガンもいるのでスプリント勝利を第1目標として狙っていたのはまず間違いないはず。

そんな中で、持ち前のタフネスと総合能力でリーダージャージをキープし続けたシャフマンの走りは、本当に強かった!

 

意外という意味では、ベノートの2位を予想できた人もまずいないはず

ワンデーレースに強いイメージだったので春のクラシックに照準を合わせていると思っていたけれども、その辺りのレースが軒並み中止・延期になった影響もあって、チームとしても総合を本気で争いに来たのかも。

よくよく考えると、昨年のツール・ド・スイスで総合4位に入っているので、ステージレーサーとして開花する日も近い・・・?

 

3位に入ったイギータも、今シーズンの好調ぶりを見せつけるいい走り!

小柄ながらも序盤の横風やタイムトライアルを無難にこなして、後は得意の山岳で勝負をかけたいところだったけれども、チームメイトにリタイヤが続出した影響であまりリスクを負うような走りができなかったのは不運だったかな。

それでも、22歳という事を考えると本当に恐ろしいほどの活躍ぶり。

彼の類まれなる才能が今後どのような結果を残していくのか、要注目!

 

開幕前から複数のチームが出場を辞退した上に、途中でリタイアする選手やチームもあり(いくつかの国が入国規制をするような話が出ていて、すぐ帰国しないと自宅に帰れない可能性が)、更には最終ステージがキャンセルされるなど、レース外の部分で波乱の多かったパリ~ニース2020。

今後しばらくの間ほぼ全てのレースが中止となっている事を受けてかは分らないけれども、選手たちは心を揺さぶるような素晴らしいレースを繰り広げてくれて、本当に白熱したレースを楽しませてもらいました。

こんな情勢の中でもレースの開催に尽力した運営陣や、リスクを背負って出場してくれたチームと選手には本当に感謝の気持ちでいっぱいです

 

次にレースを見られるのがいつなのか分からないですが、幸いにもこのブログは感想専門のブログではないので、レースのない期間は感想以外の「選手紹介」「初心者向け用語解説」「過去の名レース紹介」などの記事をアップしていく予定です。

なかなか明るい話題が少ないような状況ですが、ロードレース観戦を楽しむためのブログとして、少しでも盛り上がれる話題を提供できるように頑張りたいと思っています!

それでは、また!