サガン、そしてボーラの総攻撃!
いわゆる移動日である平坦カテゴリーの第7ステージは、事前から「横風注意!」とアナウンスがされていたので、多くのチームが警戒をしていたはず。
しかしそれは、後半のカストレという町を通過してからの終盤40kmの話で、イネオスに代表される総合系のチームが仕掛けるものだと思い込んでいたら…。
まさか、スタートから9kmに位置する3級山岳で仕掛けるチームがいるとは。
しかもそれを仕掛けたのが、マイヨヴェール奪還を目論むペテル・サガンを擁するボーラ・ハンスグローエだとは。
予想できた人はどれだけいたのだろうか?
そして、予測して警戒できていたチームはどれだけあったのだろうか?
山岳賞キープの為に山頂目指して飛び出したブノワ・コヌフロワ。
それすらも飲むような勢いで、ボーラがチーム全員を前方に集めて猛烈な牽引を開始!
山頂通過して間もなくコヌフロワは吸収され、ボーラはそこからも休むことなく牽引を続ける。
3級山岳とはいえ、多くのチームが備えていなかったタイミングでありえないペースの高速牽引が行われた結果、レース最序盤から多くの有力スプリンターが遅れてしまう事に…。
サム・ベネット、カレブ・ユアン、ジャコモ・ニッツォーロ、エリア・ヴィヴィアーニ、アレクサンダー・クリストフ、アンドレ・グライペル、ケース・ボル…。
今日のスプリント勝利の候補に挙げられていたような猛者たちが、早くも勝負権を失うという衝撃の展開が繰り広げられた!
この強烈すぎるボーラの「鬼牽き」、なんと監督からの指示ではなく、チームメイトがレース前に話し合った結果行われたとの事!
サガンへの厚い信頼やリスペクトにチームとしての結束力、そして思い切ったプランを完璧に成功させるチーム力は凄まじい…。
ボーラはもちろんそのまま中間スプリントでも先行し、しっかりとサガンにポイントを加算させ、暫定でのスプリントポイント首位を取り返した。
っていうか、中間スプリントの5位にマクシミリアン・シャフマンが入っていた(そもそも牽引での先頭交代も積極的に行っていた)けど、ツール開幕の2週間ぐらい前に鎖骨を骨折しているはずだよね…?
いつも思うけれども、ロード選手の回復力と痛みへの耐性はちょっと頭がおかしいレベル(誉め言葉)すぎて、言葉を失ってしまう…。
その後2つ目の3級山岳では「逃げ職人」トーマス・デヘントが飛び出し、単独での逃げを敢行。
ロット・スーダルとしては、エーススプリンターのユアンが後ろに取り残されてしまった瞬間にこのステージは実質終戦だった訳だけれども、しっかり爪痕を残そうとするデヘントの逞しさがカッコいい!
60km程逃げた辺りで、イネオス・グレナディアーズが引っ張ってペースを上げた集団に捕まってしまうが、その走りにはプロとしての矜持がたっぷり詰まっていたように思える。
そしてイネオスが追い風区間で猛牽引して負荷をかけると、集団は分断!
タデイ・ポガチャル、リッチー・ポート、バウケ・モレマ、ミケル・ランダなど、総合の有力選手が後ろに取り残されてしまう…。
これ幸いと他のチームも千切れた集団を引き離すために協力し、みるみる差は広がっていく…!
イネオスはパンクで遅れたリチャル・カラパスを後方に切り捨てなければいけない不運はあったものの、見事に2年続けて横風分断によるアドバンテージ獲得に成功し、チーム力の高さを見せつけてくれた!
そして残すは、役者が少なくなり混戦になりそうなスプリント勝負。
ロングスプリントを仕掛けたのが2人、エドワルド・ボアッソンハーゲンと…、もう1人はジュリアン・アラフィリップ!?
しかしアラフィリップはここで無念のメカトラ、そしてほぼ同時にサガンもメカトラでポジションを下げてしまう。
早掛けをしたボアッソンハーゲンが粘る!
ブライアン・コカールとジャスパー・ストゥイヴェンも追いかける!
そんな中、フェンス際から伸びてきたあの黄色いジャージは…、まさか…
なんでまたスプリントに参加している!?
ワウト・ファンアールトだー!!
なんでまたスプリントに参加している!?
アシストの仕事はどうした!?
レース前に「今日はスプリントに参加しないよ」って言っておいて、レース後のインタビューでは「自転車選手の言ってることを信じちゃダメ(笑)。いやいや、実は、自分自身でもびっくりしてる。でも小集団スプリントでチャンスを狙いに行かないなんて、ありえないと思ったんだ」とか言っちゃって…。
(※出典:宮本あさかのツール2020 レースレポートhttps://news.jsports.co.jp/cycle/article/20190310219061/?p=1)
最高にカッコいいじゃないか、この野郎!!
序盤と終盤、それぞれ目的の違う2度の大規模な横風分断があり、色々と順位変動があったこの第7ステージ。
マイヨヴェールはベネットからサガンへ移り、そして総合3位につけていたポガチャルなど数人の選手がタイム差を抱えてしまう結果に。
続く第8・第9ステージで待ち受けるのはピレネーの険しい山々。
遅れを取り戻すのか、それともさらに突き放すのか、いずれにしても本格的な山岳バトルが開幕するはずなので、目が離せない!