初心者ロードレース観戦日和

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【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第8ステージ

ピレネー山脈突入、超級山岳とダウンヒル

前日の第7ステージ(【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第7ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)での横風分断で遅れた総合勢が挽回のために攻めるのか、それとも上位の選手が突き放しにかかるのか、いずれにせよダイナミックな展開が予想された第8ステージは、1級、超級、1級という3つの厳しい山岳が設定された上級山岳コース。

 

開始直後から13名の逃げが形成されるが、その中で何故かドゥクーニンク・クイックステップのミケル・モルコフが先頭交代に参加していない。

というか、そもそもモルコフは何故逃げに乗ったのだろうか…?

このステージを逃げ切れるような脚質ではないし、スプリントポイントや山岳ポイントを稼ぐ必要もない。

むしろ、サム・ベネットのポイント稼ぎを助ける立場なので、逃げてに乗ってポイントを潰してはダメではないか…?

中継のカメラもローテーションに加わらない姿をアップで映すし、放送席からもいじられまくるモルコフ。

世界中のファンが「?」となっている中、中間スプリントポイントの直前でジェローム・クザンが飛び出しトップ通過を狙うと…、何故かモルコフも加速しはじめた!?

そのまま2位で通過したモルコフは、当然だけれど逃げ集団のイルヌール・ザカリンなどから文句を言われている。

レース後には「逃げの他の選手たちより、きっと自分のほうがポイントを有効に活かせるから」というかなり納得しがたい理由を述べたけれども、中間スプリントの通過順位は賞金も出るらしいので、そりゃ他の選手は怒るよね…。

そんなフワッとした理由で漁夫の利的に2位通過してしまうなら、初めから逃げに乗らない方がよくないか…?

 

そんなモルコフの「ご乱心」がありながらも、逃げはメイン集団との差を13分以上も許され、早くも逃げ切り勝利が濃厚な状態に。

メイン集団をコントロールしているミッチェルトン・スコットとしては、アダム・イェーツが僅差で総合首位に立っているので逃げ集団がボーナスタイムを潰してくれた方が都合がいいという訳だ。

他のチームも特に異論はない(集団コントロールの役割をミッチェルトンが引き受けてくれるなら都合がいい)ので、メイン集団は非常にゆったりした雰囲気でレースは進行していく。

 

最初の1級山岳は逃げに乗ったコヌフロワが先頭通過し、山岳ジャージをキープするために着実にポイントを回収。

超級山岳の麓では逃げ集団からクザンが独走を仕掛けるも、それを悠々と追い抜いたザカリンとナンズ・ピーターズの2人が先頭に躍り出る。

ピーターズが若干先行して山頂を通過すると、そのままダウンヒルでザカリンを引き離していく…というか、ザカリンの下りが下手すぎてみるみる離されていく…。

確かに、ザカリンは下りが苦手と言う印象があったけれども、ここまでとは…。

もはや見ているのが怖いレベルの危なっかしさで、「どうか2016年のジロのような落車をしないでくれ…」と祈るばかり。

 

そんな中、メイン集団では事件が発生。

なんと、総合優勝候補の1人であるティボー・ピノが苦悶の表情を浮かべながら遅れていってしまう!

明らかに何らかの痛みを抱えている様子だが、どうやら第1ステージの落車の際に痛めた背中の状態が悪化し、ペダルを踏む力が上手く入らないよう…。

チームメイトに支えられながらなんとか完走はしたものの、大幅にタイムを失ってしまい、総合争いからは脱落してしまう事に。

地元フランス期待の総合エースのピノ、2年連続で悪夢のツールとなってしまった。

 

一方、先頭を独走しているピーターズは最後の1級山岳も順調に登り切り、フィニッシュに向かってのダウンヒルも快走を続ける!

そのまま他の選手を寄せ付けず、最後は余裕をもってガッツポーズ!!

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これがプロ2勝目、そして昨年のジロでのステージ勝利がプロ初勝利だったという、大舞台に強い男ピーターズ!

フランスから期待の勝負師が誕生した!

 

一方メイン集団では、各チームが既にアシストを失いほぼエース単騎での戦いとなっている中、タデイ・ポガチャルが昨日の遅れを取り戻そうと最後の1級山岳で執拗にアタックを繰り返す!

山頂まで残り5kmほどの地点でついに単独で抜け出すことに成功し(というか余力のありそうなプリモシュ・ログリッチが無理して追いかけなかった感がある?)、そのままダウンヒルも1人で駆け下りる!

同じく前日にタイムを失っていたリッチー・ポートやミケル・ランダもポガチャルに続いて飛び出し、残りのメンバーは少し牽制しながら(ログリッチがにらみを利かせながら?)リスクを抑えつつ下りをこなしていく。

ポートとランダはログリッチたちに追いつかれてしまうがポガチャルは見事に逃げ切り、40秒ほどのタイムを取り戻した!

 

結果として、総合争いでの大きな出来事は、ピノの脱落と、ポガチャルが昨日の遅れをリカバリーした事の2点ぐらい。

もっと大掛かりなシャッフルが発生する可能性もあるかなと考えていたけれども、ここまでのステージが結構厳しかった事と、次のステージもかなり厳しい戦いが予想される事もあり、結局この日はあまり大きな動きはなかった印象。

翌日の第9ステージは、その後ろに休息日が控えているために、もっと激しい争いになりそうな予感がする…。

激動の1週目を締めくくるにふさわしい熱いレースを期待したい!