三度目の正直!
今大会唯一の200km越えとなる第12ステージは、フィニッシュ25km手前の2級山岳に急勾配区間があるので、スプリンターが生き残るのは難しそうな丘陵ステージ。
急勾配という事で、パンチャーが勝利を目指して逃げたがりそうな予感がする。
開始早々の4人が逃げ、遅れて2人も合流して計6人の逃げ集団を形成。
意外に少ない人数だなと思っていたら、メイン集団をコントロールしているのは、なんとボーラ・ハンスグローエ!
逃げとの差をあまり広げないように高速で集団を引っ張り、タイム差は2分程度で推移していく。
予想外の展開に意図が分からず頭にクエスチョンマークが浮かんだけれども、少し考えたらペテル・サガンのための牽きだと思い至る。
高速牽引で他のスプリンターをふるい落とし、ステージ勝利とまではいかなくとも上位でフィニッシュしてポイントを稼ぐ算段っぽい。
前日の第11ステージ(【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第11ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)では危険行為によりポイントを剥奪されてしまったサガンとしては、なりふり構わずポイント回収に励まなければならないという事か…。
確かにサガンなら今日のアップダウンをクリアできる可能性はありそうだけれども、結構難しそうなミッションではある。
果たして完遂なるのか。
序盤の中間スプリントポイント、メイン集団は最早このツールでお馴染みの光景となりつつある「モルコフのリードアウトとライバルのポイント潰し」がまたしても成功し、サム・ベネットがまたサガンとの差を少し広げてきた。
中間スプリントでしっかり稼ぐのはサガンの強みの1つな訳で、これをドゥクーニンク・クイックステップがしっかり潰しに来るのはキツイ…。
サガン、危うしか?
それでもボーラは高速牽引を続け、気づけば逃げ集団とのタイム差は30秒ほどに。
このタイミングでメイン集団から飛び出したのはチーム・サンウェブのセーアン・クラーウアナスンとティシュ・ベノートの2人!
そのまま一気に先頭に躍り出る!
ここにマルク・ソレル、マクシミリアン・シャフマン、カンタン・パシェ、そしてマルク・ヒルシ(またサンウェブ!)が合流し、先頭集団6人の内3人がサンウェブという状況に。
残り28km地点、ここまでのステージでも見せ場を作っていたマルク・ヒルシが単独でアタック!
追走集団はジュリアン・アラフィリップを含む強力なメンバーになってきたが、サンウェブは元々先頭にいたクラーウアナスンに加えてニコラス・ロッシュも追いつき、万全の態勢でヒルシをサポート!
急勾配もダウンヒルももの凄い勢いで駆け抜けるヒルシに対して、追走はメンバーが強力すぎてお見合い状態な上にサンウェブの2人がローテを阻害してペースが上がらず、そして抜け出しも2人がしっかりとチェックして許さない!
ヒルシはそのまま最後まで快調に独走を続け、余裕をもってフィニッシュ!!
第2ステージと第9ステージではあと1歩で勝利を逃していたヒルシだが、3度目の正直でのステージ勝利!!
ツール初出場にして、なんとこれがプロ初勝利!!
おめでとう!!
そして、チーム・サンウェブの連携はヒルシと共に称賛されるべき見事なものだった。
ヒルシを先頭に送り込むために先行したクラーウアナスンとベノート、そしてクラーウアナスンとロッシュによる追走でのローテ阻害とアタック封じ。
これぞロードレースの魅力と言える、チーム一丸となって勝利を手繰り寄せる美しい連携!
今年のパリ~ニース第6ステージでも見事な連携を披露した(【レース感想】パリ~ニース2020 第6ステージ~第7ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)ように、今年のサンウェブのチーム力は素晴らしく、見ていて本当に楽しいレースを繰り広げてくれる。
今後のステージ、そしてツール後のクラシックレースにも期待ができそうだ!
そしてメイン集団ではサガンが先頭フィニッシュしてステージ13位となり、僅かながらポイントを稼ぐ結果に。
序盤からサガンの為にレースをコントロールしていたボーラの目論見はギリギリ達成されたものの、決して成功とはいえない小さな収穫に終わってしまった…。