2304m、ロズ峠の戦い
2つの超級山岳を有し、フィニッシュ地点は今大会最高標高の2304mを誇るロズ峠。
間違いなく「クイーンステージ」であり、しかもこの日が最後の山頂フィニッシュとなるので、確実に総合勢は勝負に動くはず。
注目の大一番である第17ステージも、いつも通りスタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられる。
一時は30人ぐらいの逃げになりかけるけれども、序盤の中間ポイントを稼ぎたいチームが中心となってこれを吸収。
最終的にはジュリアン・アラフィリップ、リチャル・カラパス、ゴルカ・イサギレ、ダン・マーティン、レナード・ケムナという、超豪華な5人の逃げ集団が形成される。
アラフィリップ、カラパス、ケムナは前日に続く逃げ、特にケムナとカラパスは前日の1位を激しく争った2人という(【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第16ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)、なかなか熱い展開に。
もちろんこの日もメイン集団では中間スプリント争いが発生して、もはや見慣れた光景になりつつある、サム・ベネット→ミケル・モルコフ→ペテル・サガンの順番での通過に。
というか、サガンはモルコフを差せない状態が続いているのか…。
マイヨヴェール獲得のためには、ポイント差的に第19ステージか最終日で1位を取る事がほぼ必須な状況なだけに、この調子ではもうほぼ不可能な気が…。
先頭は1つ目の超級山岳であるマドレーヌ峠の入り口に到着し、この時点でのリードは6分ほどにまで広がっていたけれども、メイン集団も登坂に入るとペースアップ。
メイン集団を牽いているのは、意外にもバーレーン・マクラーレン!
これは…ミケル・ランダの調子がいいという事か?
少しでもユンボ・ヴィスマのアシストを攻撃して、最後の超級で仕掛けようという算段なのだろうか?
とにかく、このバーレーンの動きで先頭との差は一気に1分半ほどにまで縮まり、先頭集団では静かにケムナが脱落。
ケムナ、連日の積極的な走りお疲れさまでした。
クリテリウム・デュ・ドーフィネでの1勝、そしてツールでの1勝と積極的な走りは鮮烈な印象を残してくれて、今後も注目していきたいと思う。
マドレーヌ峠のダウンヒルではダン・マーティンが遅れ(というか、アラフィリップの下りが速すぎ!)、そしてロズ峠の登りに差し掛かるとアラフィリップが早々に脱落し、先頭はカラパスとイサギレの2人に。
そしてイサギレも残り9km地点でカラパスのペースに付いていけなくなり、先頭は昨年のジロ・デ・イタリア覇者の1人旅に。
単独で抵抗を続けるカラパスだったけれども、メイン集団がダヴィ・デラクルスの牽引でペースを上げると(総合3位のリゴベルト・ウランなどを振るい落とすような強烈なペースアップ)、残り4kmほどで流石に吸収される。
…というか、このペースアップでランダが遅れているんだけれど、そうなるとマドレーヌ峠でのバーレーンの牽引は一体何だったのか…。
ランダ、ここまで安定して調子が良さそうだっただけに、無念の失速。
残り4kmは急勾配区間が続くロズ峠、残る役者はプリモシュ・ログリッチ、タデイ・ポガチャル、ミゲルアンヘル・ロペス、そしてログリッチのアシストのセップ・クス。
ここまで粘ったエンリク・マスは遅れ始め、リッチー・ポートもギリギリで集団にしがみついてる状態。
そして残り3kmでアタックを仕掛けたのは、なんと意外にもクス!?
どうやらこれは、ログリッチの指示でポガチャルの様子を見極める為に飛び出したらしいけれども、見ているときは意図が分からずにちょっと混乱したよね…(汗
そしてこの動きにしっかり反応して追いかけたロペスが、そのまま飛び出して単独でゴールを目指す!
さすがは高地生まれ(故郷の標高は何と2800m!)のコロンビア人、2000m越えを苦にしない軽やかなクライミング!!
これを見てログリッチも加速を開始すると…、あぁ!
ポガチャルがこのペースに付いていけない!
大きくは離されないものの、ログリッチから10秒以上離されてしまう!!
そしてログリッチもロペスに追いつけないというか、ロペスのペースが落ちない!
そのまま最後まで踏み続けて単独でフィニッシュ!!
ツール初出場のロペス、大事なクイーンステージで見事な勝利!
流石はクライマー大国コロンビアが産んだ「スーパーマン」、ジロとブエルタの両方で総合表彰台に上ったその実力を遺憾なく発揮!
これで総合3位に浮上し、ツールの総合表彰台も射程圏内に!
そして、ログリッチとポガチャルのタイム差はボーナスタイムも含めて17秒広がり、57秒差に。
ログリッチは着実に総合優勝に向けて前進、逆にポガチャルは盤石のログリッチに対して力負けした格好で、もう打てる手が少ないかな…。
第18ステージでアタックしてもチーム力で封殺されそうだし、第20ステージのタイムトライアルで逆転というのも、あのログリッチが相手だと考えると難易度が高いミッションな気が…。
やはり、かなり表彰台の姿が見えてくる結果となったこの第17ステージ。
残す総合の戦いの場は第18ステージと第20ステージ。
果たして、ドラマはあるのか。
熱戦に期待!!