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【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第19ステージ

激しくも静かな1日

厳しいアルプス山脈3連戦を終え、迎えるこの第19ステージは一応平坦カテゴリーではあるものの、終盤はアルデンヌクラシックのような細かなアップダウンが出現するコースレイアウト。

 

この日の逃げは、つい先日に個人タイムトライアルのフランス王者になったばかりのレミ・カヴァニャ1人のみ。

この「クレルモンフェランTGV(ダサいのかカッコいいのか何とも言えない、非常に絶妙なバランスのニックネームな気がする…)」は、途中発生した追走が追いつけない高速ペースで巡行して、中間スプリントを超える辺りまでの約120kmを1人で逃げ続ける。

中間スプリントでは、この日もメイン集団で仁義なきポイント賞争いが発生。

集団トップ通過はまたサム・ベネット、続いてペテル・サガン、ミケル・モルコフ、マッテオ・トレンティンの順で、ベネットが手堅くリードを広げる。

…というか、ボーラ・ハンスグローエはこの日もペースアップを仕掛けるか、サガンを逃げに送り込むのどちらかをしたかったんだろうけれども、サガンには常にベネットがピッタリ張り付き、しかもドゥクーニンク・クイックステップのアシストがその周りで常に3~4人警戒していたから、何もできなかったんだろうというのが正直な感想。

しかもこの日のボーラは不運な事に、大事な牽引役のルーカス・ペストルベルガーがレース開始直後に蜂に刺されてリタイアと言うアクシデントに見舞われているから、なおさら序盤では仕掛けられなかったんだろうなぁ…。

 

中間スプリントで前に出たベネット、サガン、トレンティンなどがそのまま先頭に追い付くような動き(!)があったりしたけども、さすがにその逃げは許されずに一旦吸収される。

そしてそこからのアップダウンの多い地形を利用して、集団はアタック合戦となり活性化、まるでクラシックレースのような見応えのある展開に!

残り30kmほどでベネット、サガン、トレンティンを含む12人の逃げ集団が形成され、ベネットとトレンティンはアシストも同行していたけれども…、サガンは単独での戦いに。

残り20kmを切ると、トレンティンが数の利を(もう1人の同行者がグレッグ・ファンアーベルマートというこれまた猛者である強みも)活かして何度かアタック、サガンはこれを防ぐために自らチェック、そしてベネットはサガンを徹底マークと言う構図になる。

そんな膠着状態の一瞬の隙を見逃さずに抜け出したのは、チーム・サンウェブのセーアン・クラーウアナスン!

後ろはメンバーが強力すぎるが故にお見合い状態となってしまい、クラーウアナスンは差をどんどん広げていく!

タイム差は残り5km地点で1分ほどにまで広がり、逃げ切りはほぼ確実に。

順調にペダルを回し続けるクラーウアナスン、しかし、カメラバイクに向かって何事か叫んでいる?

「え?順調に見えるけど何かアクシデント?」と一瞬心配するも、無線が壊れてタイム差が分からなかった為にそれを聞いていただけの模様。

後ろとの差が分からないまま逃げ続けるとか、そりゃ不安すぎてバイクに聞きたくもなる(笑)

残り1km辺りでやっと勝利を確信してリラックスした表情になり、最後は勝利をゆっくりと噛みしめながらのフィニッシュ!!

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クラーウアナスン、第14ステージに続く見事な独走勝利!!

ゲスト解説のマトリックス・パワータグの安原監督も「ここしか無いというとこ(タイミング)で行ったもんね」と述べていたように、彼の抜け出すタイミングに対しての嗅覚は第14ステージと同様に完璧だった!

そしてチーム・サンウェブは、この日も最後の逃げ集団にニキアス・アルントもしっかり送り込むという見事なチーム力を披露!

総合争いはチーム・ユンボ・ヴィスマが盤石の態勢で静かな戦いになる中、ステージ狙いでは間違いなくサンウェブが一番輝いている!!

 

クラーウアナスンのフィニッシュから約1分後、ベネット、サガン、トレンティンもゴールイン。

ポイント賞争いは、1位ベネットが319pt、2位がサガンで264pt、3位のトレンティンは250ptという状況に。

残すポイント獲得の機会は第21ステージのみで、ベネットとサガンの差は55pt。

これは流石に逆転の可能性はほぼゼロと言っていいでしょ。

ベネットは第20ステージのタイムトライアルでタイムアウトにならない事にさえ気を付ければ、待望のマイヨヴェールを獲得できるはず。

 

そしてその第20ステージは、総合勢の最後の争いの場でもある。

プリモシュ・ログリッチがしっかり首位をキープするのか、それともタデイ・ポガチャルが奇跡を起こすのか。

ミゲルアンヘル・ロペスは苦手のタイムトライアルで表彰台を守り切れるのか、それともリッチー・ポートが悲願の初登壇となるのか。

リチャル・カラパスは山岳賞を守るためにどのような走りを見せるのか。

決戦の地ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユの丘で待っている結末や如何に。