初心者ロードレース観戦日和

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【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第20ステージ

天井知らずの才能、そして衝撃の結果

ここ数年は登坂力も身につけてオールラウンダーへの転身をしたとも言えるけれども、プリモシュ・ログリッチは現役屈指のタイムトライアルスペシャリストである。

グランツールの個人タイムトライアルでの3勝に、もちろん他のステージレースでも個人タイムトライアルでは圧倒的なリザルトを残し、そして世界選手権個人タイムトライアルで準優勝。

今までの実績を鑑みればこの認識に異論を挟む余地は無いと思う。

 

今ツール最後の山場である第20ステージは、平坦な前半、緩いアップダウンのある中盤、そして急勾配を登坂する後半で構成された個人タイムトライアル。

第19ステージ終了時点で、総合2位のタデイ・ポガチャルに対して57秒のアドバンテージを有し、そしてここまで無理をしないで力を温存しつつ盤石なレース運びをしていたログリッチの有利は揺るがないと、殆どの人が考えていたはずだ。

しかし、この日ポガチャルが見せたパフォーマンスは、そんな有利など簡単にひっくり返してしまった。

 

たしかに、この日のログリッチは若干の不調だったとは思う。

ペダリングにいつもの力感が見られず、そして表情も硬い。

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの個人タイムトライアルで見せていた、集中とリラックスが混ざったような表情と、圧巻のパフォーマンスとは違う姿ではあった。

それでも、グリッチ本人としては不本意な走りだったかもしれないけれども、ステージ5位となる57分51秒。

2位に入ったチームメイトであり元世界王者トム・デュムランから、35秒しか遅れていない。

決して悪くないタイムのはず。

しかし、ポガチャルが叩き出したタイムは、何と55分55秒。

2位のデュムランより1分21秒も早く、そして何より、ログリッチより1分56秒も早かったのだ。

もしかしたら、調子次第ではログリッチを上回るタイムを出す可能性はあると考えていた人はいたかもしれない。

しかし、総合順位が逆転するタイム、つまりログリッチより57秒以上速いタイムを出すと想像していた人は、果たしていたのだろうか?

このタイムを出されてしまったら、正直言ってどうしようもない。

仮にログリッチがベストなパフォーマンスを見せていたとしても、ポガチャルが勝っていた可能性が普通にある。

だから、ここははっきり言いたい。

ポガチャルが勝ったのはログリッチが不調だったからではなく、純粋にポガチャルが強かったから勝ったのだと。

その圧倒的な登坂力と、大一番にベストな走りを持ってくる心身両面のタフさ。

この2点を大きな武器として、スロベニア超新星は、早くもロードレース界の一番星として輝いたのだと。

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おめでとう、ポガチャル!!

今回の勝利を手繰り寄せたその凄まじい登坂力は、山岳賞狙いの為に後半区間だけ全力だったリチャル・カラパスを軽く上回る程!

最早、現役最強クライマーの1人である事は疑いようがない。

そして、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの第20ステージでも鮮やかな独走勝利で逆転の3位入賞を果たしている事を考えると、3週間を戦い抜くタフさも抜群。

というか、終盤に入る方が元気な様子すらあるような…。

ツール閉幕翌日に22歳となるこの若者は、恐るべき登坂力とタフネスを併せ持ち、総合系の選手として既にかなりの完成度を誇ると言っていい。

昨年のエガン・ベルナルに続く、若くして完成度の高いチャンピオンが今年も誕生した!

以前に紹介記事でも書いたけれども(【選手紹介Vol.12】タデイ・ポガチャル - 初心者ロードレース観戦日和)、その天井知らずの才能がこの先どんな結果を積み重ねていくのか、楽しみで仕方がない!

 

そしてまさかの、無念の敗北となってしまったログリッチ

ここまでの19日間、チーム全体でレースを支配し、そして自身の走りで守り続けてきたマイヨ・ジョーヌが、たった1時間のタイムトライアルでその手から零れ落ちてしまうとは…。

激坂区間での苦しそうな表情、フィニッシュ前辺りの悲痛な表情、そしてフィニッシュ後に呆然と座り込む姿…。

それらは、見ているこちらも辛くなるほどの、言葉にしがたい光景だった…。

それでも、何の慰めにもならないかもしれないけれども、声を大にして言いたい。

このツールの主役は間違いなく君だったと。

最も気高く、リーダーとして振る舞い、力強く、そして美しく走っていたのは、ログリッチ、間違いなく君だったと。

そして、昨年のジロ・デ・イタリアでの敗戦を糧に、ブエルタ・ア・エスパーニャでは見事に頂点に立ったその姿を、私たちは決して忘れてはいないと。

またその圧倒的な走りを披露してくれる事を待っているぞ、ログリッチ

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ポガチャル、ログリッチに続いて総合表彰台の座を勝ち取ったのは、この日のスタート前には総合4位だったリッチー・ポート!

ステージ3位となる好タイムを叩き出し、ついに悲願のシャンゼリゼの表彰台へ!

今までは不運も多かった苦労人のポート、以前の紹介記事(【選手紹介Vol.7】リッチー・ポート - 初心者ロードレース観戦日和)にも書いたように、今回の結果は本人の力でしっかりと勝ち取ったものだ~!!

おめでとう!ポート!

 

総合順位も固まり、これで残すはパリ・シャンゼリゼでの凱旋フィニッシュのみ!

新型コロナウィルスの感染拡大という未曽有の危機の中、ツール・ド・フランスという21日間の物語が無事に完結できそうなのが本当に嬉しくてたまらない!!

最後の瞬間まで、しっかりと楽しんでいきたい!!