実力者による順当な争い、そして波乱
例年は春のクラシックシーズンの終わりを告げるレースである、「最古参」リエージュ~バストーニュ~リエージュ。
今年は秋の集中開催のど真ん中、裏ではジロ・デ・イタリアが開催されている過密日程の中で、アルデンヌクラシックの総大将としての登場!
注目選手として
- 1週間前に新たな世界王者となったジュリアン・アラフィリップ
- ツール・ド・フランス総合優勝のタデイ・ポガチャル
- 同じくツール総合2位のプリモシュ・ログリッチ
- 直前のフレッシュ・ワロンヌを制したマルク・ヒルシ
- 前日まで行われていたビンク・バンク・ツアーで劇的な独走勝利を飾ったマチュー・ファンデルプール
こんな選手が挙げられる中、自分の予想はこんな感じ。
リェージュ〜バストーニュ〜リェージュ予想
— kiwa (@kiwa2408) October 4, 2020
本命:アラフィリップ
対抗:ヒルシ
穴:シャフマン
大穴:クフィアト
さて、NTTの予想とどちらが近いでしょうか…#jspocycle #ロードレースjp #LBL https://t.co/ohInaoGfH7
有力候補のアラフィリップとヒルシを本命と対抗に挙げ、穴と大穴には脚質的にも向きつつツールでも活躍したマクシミリアン・シャフマンとミハウ・クフィアトコフスキーを入れるという、あまり面白みは無い予想。
そしてNTTのAI予想と張り合っている、というか煽っている…。
これはかなり見当違いな予想な気が…
— kiwa (@kiwa2408) October 4, 2020
それとも、我々には見えない深淵な何かを捉えているのか…#jspocycle #ロードレースjp #LBL https://t.co/ohInaoGfH7
いや、いくらファンデルプールが化け物じみていても、このレースのアップダウンは向いていないような気が…。
そしてグレッグ・ファンアーベルマートもフランドルクラシック向きのパンチャーでしょ。
そして他の有力候補を差し置いてのシャフマン。
う~ん、AIの考えている事は分からん…。
いやでも、ファンデルプールはイル・ロンバルディアでもしれっと10位に入っていたから分からないか…?
スタート地点は雨、そして気温10℃と厳しい環境の中レースはスタート!
裏で同時開催のジロが30℃近い好天のため、なんだか余計寒そうに見える…。
逃げは9名、ただこれはもちろんレースにはあまり影響ない逃げで、折り返しを過ぎたあたりから集団が徐々にペースアップして捕まえにかかる。
そんな中、いくつか落車が発生してしまう。
残念ながらファンアーベルマート、ジェイ・マッカーシー、アダム・イェーツがリタイアする事に…。
ファンアーベルマートは骨折や肺気胸などの重傷を負ってしまい、2週後に迫っているフランドルクラシックへの出場がかなり厳しくなってしまった…。
そこが彼にとって最大の目標だったであろうに、最悪なタイミングでの落車となってしまい残念…。
他にアラフィリップやヒルシも落車に巻き込まれたけれども、こちらは大きなダメージが無く集団に復帰。
ただ、アラフィリップは数回の機材の交換を余儀なくされて、結構無駄脚を使ってしまった印象で、これが勝負にどう影響するか。
中盤以降のアップダウンの連続で逃げはどんどん人数を減らし、最後まで頑張っていたミハエル・シェアーも残り35km程でメイン集団に吸収。
そして「ここからが本番」とばかりにドゥクーニンク・クイックステップが先頭で牽引を開始!
ドリス・デヴェナインスやマウリ・ファンセヴェナントのペーシングで集団はどんどん人数を減らし、いくつかの単発のアタックをしっかり飲み込みながら、いよいよ最後の勝負所「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」に突入。
ここでペースを作ったのは、なんとユンボ・ヴィスマのトム・デュムラン!
ユンボ移籍以後、なんだかアシスト業が板についてきたな…。
その強力なペースアップで集団はみるみる小さくなる中、頂上まで残り500m程の勾配の厳しい区間でアラフィリップがアタック!
これに即座に反応できたのはヒルシとログリッチ、遅れてポガチャルとクフィアトコフスキーも合流して先頭は5人に。
凄い豪華なメンバーというか、みんなツールと世界戦選手権を沸かせた華のあるメンバーという、激熱な展開!
その後の無名坂でのヒルシのアタックでクフィアトコフスキーは付いていけず、先頭は4人に。
この4人で決まったかなと思っていたら、残り10km地点で後ろの追走との差は20秒ほど、そして先頭を牽くのは…ファンデルプールだ…!
もしかして、前日の独走勝利を成し遂げた規格外の力を披露して追いつくのか?
そしてまさか、昨年のアムステルゴールドレースの再現となってしまうのか…!?
しかしそうは問屋が卸さない…、いや、デュムランが許さない!
しっかり集団の2番目に位置取り、ローテーションを阻害してペースアップを阻む見事な仕事ぶりを披露!
ツールでも献身的にアシストする姿が印象的だったデュムラン、素晴らしい仕事人すぎるでしょ!
本来なら絶対的エースとして振舞えるだけの力と、そして野心もあるだろうに…。
ログリッチのために全力で仕事をする姿、カッコ良すぎる。
しっかりローテーションを続けた先頭の4人は20秒のリードを保ったまま残り1kmを通過して、流石にここからは勝負に向けて牽制を開始。
ゴール前スプリントなら順当にいけばアラフィリップか?
いやいやヒルシもスプリント強いし、ログリッチは総合系にしてはパンチ力あるし、ポガチャルだってそのログリッチをツールで2度も差しているし…、正直分からん…。
なんて思っていたら、え!?
後ろからマテイ・モホリッチが単独で迫ってきている!?
残り400mで追いつき、そのままロングスプリントを開始するも…さすがにこれは勢いがない。
そのドラフティングを利用して飛び出したのはアラフィリップ!
フェンス際を先行するアラフィリップ、中央からヒルシとポガチャルもしっかり反応、と思ったら、ここでアラフィリップが急激な方向転換で中央へ!?
ヒルシは避けられずに接触して外へ膨らんでしまい、ポガチャルも押し出されて勢いを失う形に。
そしてそのままアラフィリップがガッツポーズしてフィニッシュ…ん?
…外からログリッチが差しに来ていた!!??
初参加となったリエージュ~バストーニュ~リエージュで、見事にモニュメント1勝目おめでとう!!
ツールでは本当に悔しい思いをしただけに、この勝利で少しは気持ちも救われたと思うと、本当によかった!
そしてアルカンシェル初お披露目だったアラフィリップは、完全にやっちまったな…(汗)。
フィニッシュが少し登っていたから、最後まで踏まなきゃいけなかったよね…。
そして、ヒルシの進路を妨害した動きが斜行と判断され5位に降格処分と、踏んだり蹴ったりな結末に。
レース後には
「全責任は自分にある。スプリントラインを変えたことで他のライダーの走りに問題を引き起こしてしまったことを謝りたい。ただ、意図的ではなかったことだけは理解してほしい」(※出典:ログリッチがモニュメント初制覇 アルカンシエルお披露目のアラフィリップは降着5位 | Cyclist)
と、しっかり謝罪。
アルカンシェル姿は本当に似合っているから、また次頑張ってくれ~!!
(ちなみに、3日後のブラパンツ・パイルでもフィニッシュ地点で早めのガッツポーズをして、危うくファンデルプールに抜かれそうになるという…。なんというかとても彼らしいけど、見る側はハラハラするよね…)
2位のヒルシと3位のポガチャルは、今シーズンの勢いそのままにしっかり実力を披露。
もはや「勢いのある若手」枠ではなく、今後は完全に「本命」枠の一角として厳しいマークを受けるだろうけれども、なんかそれでも普通に勝ちまくりそうな末恐ろしさを感じるのは自分だけだろうか…。
4位にはモホリッチが入った事で、上位4人中3人がスロベニア勢というとても珍しいリザルトになり、ツールに続いて今年の勢いを象徴する結果に。
そして追走集団の先頭である6位には、しっかりとファンデルプールの名前が。
あれだけ牽引して、しっかり集団の先頭を取るとは…。
やはり怪物としか表現しようがない…。
最後は少し波乱な展開になってしまったけれども、結局はログリッチという強い選手、ユンボという強いチームがしっかりと結果を残したという事だと思う。
スロベニア勢の力に若い世代の台頭と、まるで今年の流れを象徴するようなリザルトは、今後のレースではどうなっていくのか。
ログリッチの次の予定は、ディフェンディング・チャンピオンとして出場するブエルタ・ア・エスパーニャ。
連覇となるのか、楽しみにしたいと思う。
あ、そういえば、NTTのAI予想より自分の予想の方がかなり近かったでしょ。
やったぜ!
それでは、また!