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【レース感想】ツール・ド・ラ・プロヴァンス2021

南仏で躍動する2つの「最強」チーム

南フランスの風光明媚な風景の中を走り抜ける、UCIプロシリーズのステージレース、ツール・ド・ラ・プロヴァンス

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今シーズンも新型コロナウィルスの影響で中止となっているレースが多い為、このレースがシーズン開幕となるワールドチームもチラホラある中で、日本のJ SPORTSも今シーズン最初のレース中継!

 

注目選手は大体こんな感じ。

・失意の昨シーズンからの復活を期すエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ

・世界王者のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ

・昨シーズン最強スプリンターの1人ルノー・デマール(グルパマFDJ)

・昨年のこのレースで総合2位のアルクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)

・先週のエトワール・ド・ベセージュ総合優勝のティム・ウェレンス(ロット・スーダル)

 

個人的には、ケガから復帰したベルナルの状態が気になるところ。

もう苦しそうな表情をしながら山岳で遅れていく姿は見たくないのだよ…。

 

そんな個人的な思い入れはともかくとして、注目選手も多く集まり見どころが多そうな全4ステージのレースがスタート!

 

第1ステージ

美しい海岸線近くにフィニッシュする第1ステージは、カテゴリー山岳はありながらも集団スプリントになりそうなコースレイアウト。

 

最初に逃げたのは、リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン)とデリオ・フェルナンデス(デルコ)の2人のみ。

追いかけるメイン集団を牽引するのはデマールでのスプリントを狙いたいグルパマ。

序盤から中盤は特に何もなくレースが進行するかと思いきや、思いのほか早いタイミングで逃げを吸収しそうな勢い(というか、GPSによるタイム差表示がずれていたようで、1分差と表示されていたのに急に集団が追いつきそうになっていてビックリ!)。

 

残り70km強地点、メイン集団からレミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク)が飛び出して逃げを捕まえると、メイン集団も頑張ってこの動きをキャッチ。

そしてここからドゥクーニンクが怒涛の波状攻撃を開始!

カスパー・アスグリーン、マウリ・ファンセベナントと立て続けにアタックを仕掛け、集団に断続的に負荷を掛けに行く。

その間隙を縫ってジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)とジャンニ・モスコン(イネオス)が飛び出すと、これをなんとアラフィリップがチェック!

そしてそのまま3人で逃げを形成!

 

チッコーネ、モスコン、アラフィリップという超強力な逃げは最大で1分20秒ほどまでタイム差を広げるも、メイン集団はアルケア・サムシックやUAEチームエミレーツ辺りが積極的に牽引して、残り30km辺りでは30秒差ぐらいまで近づいてくる。

3人はそのまま粘りに粘って残り3kmでもまだ捕まらないけれども、ここの登りでチッコーネが脱落。

そのままアラフィリップとモスコンも残り2km地点で捕まり、メイン集団はスプリントに向かって加速していく。

 

グルパマやアルケアがトレインを組んで良い形を作る中、ドゥクーニンクはなんと直前まで逃げていたアラフィリップが牽引を見せる!

そのドゥクーニンクトレインの背後を上手く取ったグルパマトレインから、絶好のタイミングでデマールが発射!

デマールはそのままグングン加速して後続を5m程突き放し、独走態勢!!
しかし、後ろからドゥクーニンクのダヴィデ・バッレリーニがこれを猛追!

みるみるその差を縮め、そしてついにデマールの横に並び…

勝ったのはバッレリーニ!!

チームの素晴らしい連携に応える見事な差し切り勝ち!!

あのデマールを差したバッレリーニの爆発力!!

そして「ウルフパック」ことドゥクーニンクのチーム力が凝縮されたようなステージだった!

 

ちなみに、自分の予想はこんな感じ。

無難な予想をして外すという、一番つまらないパターン。

デマールも悪くない走りだったので、これはバッレリーニを褒めるしかないかな。

 

第2ステージ

小刻みなアップダウンを経てからの登りフィニッシュで、パンチャー系の選手が有利そうな第2ステージ。

 

この日の逃げは5人、そしてメイン集団を牽引するのはもちろんリーダージャージのドゥクーニンク。

逃げとメイン集団のタイム差は最大3分程度でレースは進んでいく。

 

残り40km辺りで、逃げ集団からフィリッポ・コンカ(ロット)が抜け出して単独逃げの形に。

ドゥクーニンクが中心となって牽引していたメイン集団も、残り35km地点にある2級山岳の登坂でイネオスやAG2Rが手を貸した事によりペースを上げていく。

結局コンカは残り16km辺りで吸収され、残り11km辺りで飛び出したフロリアンフェルメールシュ(ロット)とマッテオ・ヨルゲンセン(モビスター・チーム)も残り4km辺りでメイン集団に捕まる。

 

もうすぐそこに迫っている登りフィニッシュに向けて、やる気満々な感じで態勢を整えているのはアスタナ。

ゴルカ・イサギレが集団の先頭を牽き、後ろにはウラソフとアレクセイ・ルツェンコという2枚看板が備えているという、万全の構え。

しかし、ここで以外な落とし穴が…。

なんと、残り1km地点でウラソフが落車。

そしてそのウラソフをぴったりマークしていたアラフィリップも巻き込まれ、2人は勝負から脱落してしまう。

そしてゴルカ・イサギレが牽引を終えて先頭に立ったルツェンコとしては、自身がアシストして発射する予定だったエースがいなくなってしまったため、仕方なくそのままロングスパートを仕掛ける形に。

長すぎるスパートで失速していくルツェンコを追い抜いていくのは、なんとリーダージャージを着用しているバッレリーニ!

背後からチッコーネも迫るが、バッレリーニの勢いは衰えない!!

なんと、バッレリーニがステージ2連勝!!
落車によって生じた荒れた展開でも慌てず、しっかり自分の間合いでスパートをかけてその爆発力を見事に発揮!!

というか、2019年にはツアー・オブ・カリフォルニアで山岳賞を獲得したぐらい、意外な登り耐性があるんだよな…。

今後、多くの場面で活躍が期待できそうで楽しみだ。

 

落車したウラソフとアラフィリップも、大きなケガは無く遅れてフィニッシュ。

フィニッシュ手前という事でタイム差も付かず、とりあえず一安心といったところ。

 

この日の自分の予想はこんな感じ。

う~ん、落車はどうしようもないなぁ…。

とりあえずウルフパックは頑張っていて結果も残したので、まぁよしとしよう。

 

第3ステージ

魔の山」モン=ヴァントゥーを登る、クライマーの活躍が楽しみな今大会のクイーンステージ。

「クライマーの活躍が楽しみ」と言うか、個人的には「ベルナルの状態はどうなのか」がハッキリするであろうステージという事で、気が気ではない状態でレースはスタート。

 

この日の逃げは6人、メイン集団とのタイム差は最大で4分弱ぐらい。

メイン集団を牽引するのはリーダージャージのドゥクーニンクの他に、イネオス、アスタナ、トレックと言ったチームのアシスト達。

イネオスはベン・スウィフトを集団牽引のローテーションに参加させながら、その少し後方でガッチリとトレインを組んで、早くもやる気満々な構え。

これは…、ベルナルの調子がいいという事か…!

期待を胸に抱きつつ、レースは特にアクシデントも起こらずに逃げとメイン集団のタイム差が縮小していき、モン=ヴァントゥーの登坂に入って間もなく逃げは全て吸収される。

 

魔の山」で最初に仕掛けたのはアスタナ。

ヨン・イサギレがハイペースで先頭を牽引して、残り9km地点でアロルド・テハダがアタックを仕掛ける!

対するイネオスは一旦テハダのアタックを静観しつつメイン集団を牽引して、そのままテハダを吸収。

イネオス期待の若手カルロス・ロドリゲスが牽引を開始すると…これがもの凄いハイペースで、集団がどんどん小さくなっていく。

ルツェンコ、ワレン・バルギル(アルケア)などの有力選手も零れ落ちていくような、それどころかロドリゲスの次に牽引する予定だったはずのローレンス・デプルスさえもついていけないような、もの凄いハイペースを刻むロドリゲス。

そして残り4.8km地点、ロドリゲスがその仕事を終えた直後、ベルナルの最終アシストと思われていたイヴァン・ソーサがアタック!

ベルナルはソーサに付いていかず、メイン集団で様子見をしながら温存の構え。

ソーサは一発のアタックで20秒程のリードを作り、そのままペースを落とさずに独走を続ける!

アラフィリップのためにファンセヴェナントが集団を牽引するも、ソーサとの差は縮まらない。

残り3.3km地点でファンセヴェナントが牽引を終了すると、そのままアラフィリップがアタックしてソーサを追いかける。

そして、ベルナルはもちろんこの動きをマークして、アラフィリップにピッタリと張り付いていく。

このベルナルの軽快な踏み、そしてその涼しげな表情…。

ファンの贔屓目が入っているかもしれないけれども、これはケガで調子を崩していた昨年とは違う、強い状態のベルナルだ!

 

アラフィリップ、ベルナル、そして少し遅れて追いついてきたワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)の3人で追走集団を形成するも、ソーサの力強い踏みは止まらず、タイム差をキープしたままフィニッシュへ向かう!

残り1.5km辺りでアラフィリップがペースを上げるとプールスは遅れるが、肝心のベルナルを引きはがせず、逆にベルナルはカウンターアタックの素振りを見せる余裕がある様子。

ベルナルは無理せずにアラフィリップの後方に戻り、そして今度はアラフィリップが再びアタックするも、やはりベルナルは離れない。

 

そうこうしているうちに気付けばソーサはもうフィニッシュ直前まで達していて、そのまま独走でのフィニッシュ!

一発で決めた素晴らしいアタック、そしてそこからの独走、お見事!!

 

そして後方ではベルナルがアラフィリップを引き離し、2位でフィニッシュ地点へやってきた!!

イネオス・グレナディアーズ、その力を改めて見せつけるような圧巻のワンツーフィニッシュ!!

そしてもちろん総合でも1位・2位を独占する結果に!

というか、昨シーズンまでのイネオスなら、「そのままソーサに牽かせて、最後にベルナルがアタック」という作戦で行くようなシチュエーションだったと思う。

今シーズン「more racing style(もっとレースらしさを)」「rekindle everything about the joy of racing(レースの喜びを再び)」という標語を掲げるイネオス。

より積極的で今まで以上に見ていて楽しくなるようなイネオスに、そしてそこで輝くベルナルに期待したい!!

 

ちなみにこの日の予想がこちら。

…よし、実質正解だな(違う)。

ベルナルが元気だったから、予想の当たり外れなんて最早どうでもいい(暴論)。

 

第4ステージ

最終日の第4ステージは、3級山岳が3つあるものの集団スプリントになりそうなコースレイアウト。

 

総合争いは起きそうにないと思っていたら、中継開始前に意外な情報が飛び込んでくる。

なんと、総合3位のアラフィリップがスタート直後のスプリントポイントを先頭通過して3秒のボーナスタイムを獲得したため、総合争いで2秒リードしていたベルナルを抜いて総合2位に浮上したらしい。

驚きというか「その手があったか」というか…、確かにドゥクーニンクとアラフィリップがその気になれば、スタートから16km地点にあるスプリントポイントを先頭通過するのはそこまで難しいミッションではないはず。

これで、何かトラブルや波乱が無い限り、総合順位は1位ソーサ、2位アラフィリップ、3位ベルナルで確定。

 

この日の逃げはルイス・マス(モビスター・チーム)、アンドレアス・レックネスン(チームDSM)、トニー・ガロパン(AG2Rシトロエン)、ジェレミー・ルヴォー(ゼリス・ルーべリールメトロポール)の4人、メイン集団とのタイム差は最大で4分ほど。

残り25km辺り、タイム差が1分強まで縮まってきたタイミングで、逃げ集団からマスが独走を開始して一時は15秒程のリードを稼ぐも、残り10km辺りで追いつかれて再び4人の逃げ集団に。

この動きと前後して、メイン集団ではドゥクーニンクのカヴァニャが牽引を開始すると、逃げとのタイム差を一気に縮めてくる。

そこから逃げ集団が意外な粘りを見せるも、残り3km地点辺りからメイン集団も流石にスプリントに向けてペースアップをして、結局残り2km地点で逃げを吸収。

 

市街地の曲がりくねったテクニカルなコースで主導権を握ったのはドゥクーニンクのトレイン。

イヴ・ランパールト→アラフィリップ→ゼネク・スティバル→バッレリーニという盤石の態勢で、ガッチリと先頭をキープ。

ロットやアルケアやUAEのトレインもエースを引き上げてスプリントに備える中、グルパマのトレインが機能しない…というか、エースのデマールのスピードが上がらずに遅れていくという意外な展開に。

 

ドゥクーニンクが主導権を握ったまま最終コーナーを抜けて、バッレリーニを完璧な形で発射!

それを後ろから追いかけるのは2つの赤いジャージ、バーレーンのフィル・バウハウスとアルケアのナセル・ブアニ!

横並びで際どいタイミングのフィニッシュ!!

三つ巴の激戦を制したのはバウハウス!!

万全の態勢で飛び出したバッレリーニを純粋にスピードで上回り、最後は見事な差し切り勝ちでバーレーンに今季初勝利を持ち帰った!

 

2着のバッレリーニは第1・第2ステージに比べると爆発力に欠けた印象で、チームのお膳立ては完璧だっただけに少し残念。

3着のブアニは、最後トップスピードに乗る直前に進路を塞がれてしまい、不満げなリアクション。

そして優勝候補のデマールは、なんとスプリントに絡まず40位と言う予想外の結果に。

トレインの主力メンバーを全員引き連れての参戦だっただけに、ステージ0勝に終わるとは正直思っていなかった。

 

飛ばしすぎじゃない?大丈夫?

改めて、総合順位と各ステージ勝者の振り返りを。

 

総合優勝:イヴァン・ソーサ(イネオス・グレナディアーズ

総合2位:ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ

総合3位:エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ

 

第1ステージ勝者:ダヴィデ・バッレリーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ

第2ステージ勝者:ダヴィデ・バッレリーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ

第3ステージ勝者:イヴァン・ソーサ(イネオス・グレナディアーズ

第4ステージ勝者:フィル・バウハウスバーレーン・ヴィクトリアス

 

こうやって振り返ると、イネオスとドゥクーニンクという「最強」の2チームが大暴れしたレースだったのがよく分かる。

イネオスもドゥクーニンクもエース級の選手を複数揃え、その上で積極的にアタックとコントロールをしていたので、他のチームとしてはたまったものではないと言った感じかな…。

ただ、決して「一方的で退屈な展開」だった訳ではなく、ロードレースらしい連携の魅力が凝縮された、とても熱い戦いだったと思う。

正直、シーズン序盤からこんなに盛り上がるレースになるとは…。

 

大丈夫?

みんな飛ばしすぎてない?

シーズン始まったばっかりだよ?

 

とか言いつつ、見る側としてはとても楽しく、こんなレースが続いてくれると嬉しいな!

今シーズンも素晴らしいレースを、たくさん繰り広げて欲しい!

 

それでは、また!