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【レース感想】UAEツアー2021 第1ステージ~第3ステージ

波乱のスタートとなった前半戦

今シーズン最初のワールドツアー、UAEツアーが開幕!

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総合勢もスプリンターも大物が多く出場する今回のUAEツアー。

とりあえず自分の総合の予想はこちら。

本命は昨年ツール覇者、山岳もTTも強くて、更にはアシスト態勢も万全なタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ)。

対抗は昨年のこのレース優勝、こちらも万全のアシスト陣と山岳でのアタック力で勝負するアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)。

穴枠のセップ・クス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)は、TT能力は未知数(恐らくあまり…)なので総合優勝は無いと思いつつも、抜群の登坂力に期待。

大穴のダニエル・マルティネス(イネオス)はTTも強いので、同チームのエースであるアダム・イェーツより適性がある可能性も…?

 

他にも総合勢ではジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)辺りに期待しつつ、レースはスタート!

※注目選手紹介記事はこちら

www.kiwaroadrace.com

 

第1ステージ

集団スプリント間違いなし、オールフラットな第1ステージ。

スタートから現地メディアのアラビア語での中継がある事は知りつつ、「スプリントステージだから勝負所だけでも十分かな」と思ってGCNの配信開始をゆっくり待っていたら、Twitterのタイムラインが何だか騒がしい。

…え、スタート時点から横風分断、集団が4つに分かれてる?

どうやら、吹きさらしの砂漠地帯での0kmアタック、そしてイネオスが誇る重戦車フィリッポ・ガンナの牽引などでこんな事になったらしい。

予想外な展開に驚くも、残り150km辺りで市街地に入り風の影響が少なくなり、この分断は一旦収まり集団は再び一つに。

 

そのままひと塊の集団を維持してレースは進み、残り112km地点の中間スプリントポイントへ。

ここで先頭でトレインを組んで動いたのはドゥクーニンク。

どうやらアルメイダに先頭通過させ、総合争いの為にボーナスタイムを取らせたい模様。

この目論見は上手くいき、アルメイダが先頭通過…だけに終わらず、ドゥクーニンクはそのまま先頭で高速牽引を敢行!

この動きで再び集団は大分断!!

うわ~、なんて綺麗なエシェロン…。

…いやいや、それどころじゃなくて!!

この強烈な分断、多くの有力選手が後方集団に取り残される事に!!

26人の先頭集団に残れた有力選手を挙げた方が早いぐらいで、総合優勝候補はポガチャル、アダム・イェーツ、アルメイダの3人スプリンターはフェルナンド・ガビリア(UAE)、エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス)の2人、あとはマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)ぐらいか…。

 

追走集団ももちろん必死に追いかけるけれども、そのタイム差は一向に縮まらないまま距離だけを消化していき、そして残り40km辺りで遂に諦めモードに。

この日以外もチャンスがあるスプリント争いはともかくとして、初日から総合争いがかなり絞られる事になった…。

 

先頭に5人送り込んだドゥクーニンクは徹底してアルメイダにボーナスタイムを稼がせる方針を貫き、第2中間スプリントもアルメイダが先頭通過し、第1と合わせて6秒のボーナスタイム獲得に成功。

総合のライバルであるポガチャルは2位通過で2秒獲得、アダム・イェーツはボーナスを獲得しない形に。

 

小集団のフィニッシュに向けて、積極的に動きを見せたのはまたしてもドゥクーニンク。

残り9km、なんとアルメイダがアタックを仕掛ける。

もちろんこの動きはすぐ捕まるも、ドゥクーニンクは攻撃の手を緩めずに、続いてファウスト・マスナダがアタック。

この動きも捕まるけれども、ドゥクーニンクは第三の矢として残り6km地点でマティア・カッタネオを放つ。

先頭に5人送り込んだ数の有利を最大限に活かしての波状攻撃、これぞウルフパック。

カッタネオの抜け出しは上手く決まり、そのままフィニッシュまでの距離を着実に縮め、あわよくば逃げ切りも狙いそうな雰囲気を漂わせている。

しかし、さすがに追走もそれは許さず、残り1.7kmでアタックを仕掛けたのは…なんとガビリア。

一気にカッタネオに追いつき、そのまま一緒に逃げ切ろうと動くも、今度はドゥクーニンクが追走を牽引して、残り800mでこの動きをキャッチ。

フィニッシュに向けての小集団スプリント、ドゥクーニンクはミケル・モルコフ、コフィディスはエースのヴィヴィアーニ、そしてその背後ではアルペシンのファンデルプールも勝負をする構え。

先行したのはヴィヴィアーニ、しかしタイミングが早すぎたのか、それとも手術明けの影響か、明らかに伸びが足りない。

それを抜き去るのはオランダチャンピオンジャージを身に纏うファンデルプール!

そのまま勢いを維持して余裕のフィニッシュ!!

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怪物マチュー・ファンデルプール、今シーズンもロードレースでの大暴れを予感させる余裕の勝利!!
この日のような荒れた展開、まさにファンデルプールの大好物というか…。

ドゥクーニンクがベネットを残せていたりしたらまた展開は違っていたのかもしれないけど…、ファンデルプールはそれでも普通に蹴散らしそうな雰囲気すらあるのが恐ろしいところではある。

 

総合争いでは、フィニッシュでアルメイダが3秒差を取られてしまう痛恨のミステイク。

せっかくボーナスタイムを稼いだのに、しっかり0秒差でフィニッシュしたポガチャルとは、結局1秒差しか開けなかった。

 

そして何より、総合優勝候補がいきなり絞られすぎなこの展開…。

総合勢で生き残ったのは、ポガチャル、アルメイダ、アダム・イェーツの他は、クリス・ハーパーユンボ)、ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO)、ダミアーノ・カルーゾバーレーン・ヴィクトリアス)、あとは強いて挙げるならカッタネオとマスナダ(どちらもアルメイダのアシストだけど…)ぐらいか。

予想外というか何というか、レースは何があるか分からないものだなぁ…。

あ、この日のステージ予想?

「ポケット・ロケット」の打ち上げは強風の為に中止となりました…。

 

第2ステージ

ド平坦、そして鋭角なコーナーの少ない、いかにもスピードが出そうなTTステージ。

レース開始直前、前日の勝者ファンデルプールが所属するアルペシン・フェニックスが、チームスタッフから新型コロナウィルス陽性者が発生したためにレースを撤退するという、衝撃のニュースが飛び込んでくる…!

こういう波乱は要らないというか、聞きたくなかったニュースだけれども…。

不幸中の幸いというべきか、選手には陽性反応が出た人がいないのがせめてもの救いかな。

 

今回のUAEツアーには個人TT7連勝中と言う絶好調のフィリッポ・ガンナ(イネオス)がいるので、予想の意味が薄い気もするけれども、自分の予想はこちら。

ガンナよりも総合争いに注目、あとは個人的に気になる選手が数人いる感じ。

 

早速、個人的な注目選手であるミッケル・ビヨーグが3番手として出走し、好タイムを出して暫定トップに。

「よしよし」と喜んでいたのも束の間、数分後にEFのシュテファン・ビッセガーがそのタイムを7秒更新。

あまり知らない選手だったので調べると、トラック競技出身でスプリントも強い23歳の若手スイス人との事なので、今後も要注目の選手かもしれない。

 

序盤に出走したビッセガーとビヨーグ、結局この2人がこのまま2位と3位にランクイン。

1位?

予想通りというか、既定事項というか…。

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ガンナ、強すぎる。

これで個人TT8連勝と、もはや意味が分からない。

このガンナと14秒差だったビッセガーの評価がうなぎ上りになるぐらい、ガンナが凄すぎる。

 

この日のスタート順は「総合トップ10のみ順位通りスタート」というかなりイレギュラーなもので、総合争いで注目のアダム・イェーツも早々に登場。

TTはそんなに得意ではない印象だったけれども、34位(+58秒)なら悪くないというか、かなり上出来の筈。

他の注目選手で良いタイムだったのは9位(+36秒)のダニエル・マルティネス。

流石はコロンビアのTT王者と言ったところ。

クス(87位、+1分40秒)とイスラエル・スタートアップネーション移籍初戦のクリス・フルーム(83位、+1分36秒)は、本気かどうかいまいち分からない走りだったなぁ。

 

そして最大の注目であるポガチャルとアルメイダ。

2人とも前評判通りの素晴らしい走りで、ポガチャルが4位(+24秒)、アルメイダが6位(+30秒)とかなりの接戦になり、ポガチャルが逆転で総合首位に。

 

これで総合の勝負権があるのは

1位ポガチャル

2位アルメイダ(+5秒)

3位カッタネオ(+18秒)

4位ハーパー(+33秒)

5位アダム・イェーツ(+39秒)

6位ポーレス(+41秒)

この辺りの選手までか。

やはり戦前の予想通り、3強のポガチャル、アダム・イェーツ、アルメイダが強い。

 

第3ステージ

登坂距離10.6km、平均勾配6.6%のジュベルハフィートの山頂フィニッシュで、総合争いを占う重要局面となりそうな山岳ステージ。

この日の自分の予想はこちら。

クスが総合優勝のためではなく、ステージ勝利の為に自由に走ると予想してみる。

 

この日の逃げはトーマス・デヘント(ロット・スーダル)とトニー・ガロパン(AG2Rシトロエン)の2人。

逃げが得意な2人だけれども、ひたすら平坦が続いて最後は山頂フィニッシュとなるこの日のレイアウトは、正直なところ逃げ切り勝利を見込めるものではない。

登坂入り口直前でガロパンがデヘントを突き放して独走を試みるも、UAEが牽引してペースを上げたメイン集団は登坂に入るとすぐにガロパンを捕まえてしまう。

 

UAEのペースメイクで集団はどんどん小さくなり、フルーム、ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)辺りも早い段階で遅れていく。

残り6km辺りからはイネオスが牽引を開始。

イネオスの、と言うかマルティネスの牽引は凄まじく、UAEのアシストであるダヴィデ・フォルモロを脱落させるどころか、自チームのイヴァン・ソーサまでついていけないようなとんでもないペースで集団を引っ張っていく。

残り5km辺り、10人強にまで絞り込まれた集団から飛び出したのはクス。

これについていけたのはポガチャルとアダム・イェーツのみで、この3人の登坂力はやはり印象通り抜きんでている様子。

3人は一旦ペースを落として後続集団が一時追いつくも、やはり3人と他の選手には差があり、またポガチャル、アダム・イェーツ、クスが抜け出す形に。

残り5.2km、今度はアダム・イェーツがアタックを仕掛けると、ポガチャルはしっかりと付いていくけれどもクスが遅れてしまう。

クスはこの時点でステージ勝利から方針転換して、自チームの中で総合最上位のハーパー(追走集団から遅れそうになっていた)のアシストに回る。

追走集団は総合2位のアルメイダがペースメイクして粘り強く登り続ける形に。

 

これで先頭はポガチャルとアダム・イェーツという、昨シーズンもこのレース・この場所でバチバチやり合った2人の争いに。

総合3位のアダム・イェーツは、首位のポガチャルからタイム差を奪うために積極的にペースアップを図るも、ポガチャルは離れる気配がない。

アダム・イェーツは総合タイムでアルメイダを抜くためにもここで牽制状態に陥ってペースを落とす訳にはいかず、逆にポガチャルはこのアダム・イェーツの動きにさえついていければ問題ないという展開に。

残り800m、アダム・イェーツが最後の力を振り絞り渾身のアタックを見せるも、ポガチャルは冷静に対応。

一呼吸おいてから、残り500mでポガチャルがアタックすると、軽々とアダム・イェーツを抜き去りそのままフィニッシュへと向かう!

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タデイ・ポガチャル、23歳とは思えぬ冷静な走りで首位を堅守するステージ勝利!!

アダム・イェーツのペーシングとアタックは、正直言ってもの凄いキレと威力だったように見えたけれども、それを全く問題にしない流石の登坂力、そして後続のアルメイダとのタイム差や力量をしっかり見据えた落ち着いた対応は、早くも貫禄すら漂い始めている。

ツール・ド・フランス覇者という肩書は、この若者にとっては重荷になるどころか、さらなる成長の糧となっているのかもしれない。

 

アダム・イェーツもステージ争いで敗れはしたものの、堂々たるアタックで後続を突き放し、総合2位(+43秒)に浮上。

フィニッシュ手前、もしポガチャルが対等にローテーションしないといけないような状況で、お互いが同様に消耗した状態での勝負だったなら…と少し考えたけれども、この日の展開を作ったのはここまで積み重ねたタイム差によるものだから仕方がない。

 

ライバル2人に先行されてタイムを失ったアルメイダは、総合3位(+1分3秒)に後退。

しかし、離されてからも自分のペースで粘り強く登り続けてこの位置にいるのは、登坂の早々にアシストを失った事と、そして本人がクライマータイプではなくTT系のオールラウンダーである事を考えると、かなり立派な成績だと思う。

 

総合4位にハーパー(+1分43秒)、総合5位にポーレス(+1分45秒)と続くけれども、やはり総合優勝争いはポガチャル、アダム・イェーツ、アルメイダの3人が抜きんでているここまでのUAEツアー。

残すは平坦ステージが3つ(第4・第6・第7)と、山頂フィニッシュステージが1つ(第5)。

更なる激戦に期待したい!

 

※後編(第4ステージ~第7ステージ)の感想記事は、3/2(火)のアップを予定しています。