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【レース感想】ミラノ~サンレモ 2021

入り乱れる思惑とギリギリの攻防

ヨーロッパに春を告げる「ラ・プリマヴェーラ」ことミラノ~サンレモが開幕!

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モニュメント(5大ステージレース)の1つであるこのレースには当然ながら多くの有力選手が出場!

終盤の勝負所「ポッジオ」で仕掛けそうなアタッカーとしては

  • 昨年の覇者、異次元の脚質を持つワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • 一昨年の覇者、世界王者のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ
  • 常識を覆す走りを見せる「怪物」マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
  • ロード本格参戦1年目ながら既に一級品のトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ
  • 実績は充分、コロナからの回復具合が気がかりなペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

この辺りの選手が優勝候補(サガンはスプリント?)か。

それとも「スプリンターズ・クラシック」らしいスプリント勝負になれば

  • 今シーズンも好調、チーム力も合わせて「現役最強」の一角サム・ベネット(ドゥクーニンク)
  • 爆発的なスプリント力を有する「ポケット・ロケット」カレブ・ユアン(ロット・スーダル)
  • 昨年の年間最多勝、2016年の覇者でもあるルノー・デマール(グルパマFDJ)
  • 現役随一の「登れるスプリンター」であるマイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)

この辺りの選手が有利か。

いずれにしても、「チプレッサ」「ポッジオ」そして「フィニッシュ地点」、残り約30kmに集中している3つの勝負所で熱い戦いが繰り広げられるのは間違いないはず。

ファンアールト、アラフィリップ、ファンデルプールが「3強」と目される中、とりあえず自分の予想がこちら。

「裏」のセーアン・クラーウアナスン(チームDSM)とフィリッポ・ガンナ(イネオス)は流石に奇をてらいすぎ?

 

「3強」による頂上決戦となるのか、それとも戦術やチーム力で対抗する者が現れるのか。

約300kmの長い長いレースがスタート!

 

8人の逃げ集団が形成されるも、正直このレースの逃げは展開に影響を与える存在ではなく、レースが本格化するのは残り27.2kmから登り始める一つ目の勝負所「チプレッサ」から。

メイン集団を引っ張るのは「3強」を抱えるユンボ、ドゥクーニンク、アルペシンのアシスト達。

チプレッサの手前でサム・ベネットがパンクで遅れてしまい、なんとか集団復帰することはできたけれども脚を消耗してしまう…というか、ドゥクーニンクはそこまで積極的にベネットを助けに行かない。

アラフィリップというエース、そしてベネットの代わりも務め得るダヴィデ・バッレリーニがいるからか。

 

そしていよいよレースはチプレッサに突入!

メイン集団の前を牽くのはユンボのティモ・ローセンとサム・オーメン

この2人(特にオーメン)の高速牽引で他のチームのアタックを封じ込めるだけでなく、アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・NIPPO)やフェルナンド・ガビリア(UAEチームエミレーツ)といった有力選手も脱落させていく。

チプレッサの頂上でユンボオーメンがその役割を終える(そしてファンアールトは全てのアシストを失う)と、先頭を引っ張るのはイネオスの選手達。

ルーク・ロウ、ディラン・ファンバーレという2枚のアシストが、ピドコックとミハウ・クフィアトコフスキの2枚看板をしっかりと引き連れている。

 

チプレッサのアップダウンでメイン集団は30人前後まで人数を減らすも、平坦区間で後続の選手が追いつきメイン集団の人数は50人程に。

そしてそのまま第2の勝負所ポッジオへと、意外にも人数を残したままなだれ込んでいく。

登りで前を牽くのは後続集団から舞い戻ってきたイネオスのガンナ。

他チームのアタックを許さないハイペースを刻みつつ、集団を振るいにかけていきたい…ところなんだろうけれど、意外とスプリンターが残っている。

マシューズやデマールといった「登れるスプリンター」だけでなく、登りが苦手なイメージのあるユアンまでもが残っている(それもかなり前方に)というのは…。

この「アタックは仕掛けにくいけどスプリンターも結構生き残る」というある意味絶妙なガンナのペーシングは残り7km辺りまで続き、続いて牽引を担ったファンバーレも同じようなペースで登っていく(っていうか、ユアンがそのファンバーレの真後ろにいる事がかなりの驚きなんだけど…!?)。

 

そして残り6.5km、頂上まで1kmの距離にあるこの急勾配区間で、今年も「あの男」が仕掛けた。

世界王者アラフィリップのアタック!!

しかしこのアタックにはファンアールトがしっかりと反応し、マクシミリアン・シャフマン(ボーラ)とクラーウアナスンが少し遅れて続き、更にはファンデルプールも一気にペースを上げて追いついて来るだけでなく、ユアン、マシューズ、ピドコック、マッテオ・トレンティン(UAE)、グレッグ・ファンアーベルマートAG2Rシトロエン)、ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)といった有力選手も食らいついて来る。

 

頂上が近づくとファンアールトがペースを上げるもライバル達はしっかりと反応して、そのまま10人強の集団で頂上を通過する。

少し大きめの集団でのダウンヒルとなったのであまりペースが上がらない、そして後ろからはさらに選手が合流しようと追いかける中、残り4.4kmからピドコックが果敢なダウンヒルアタックを敢行!

このアタックに先頭集団も一旦分断しそうになるけれども、千切れかけた選手も何とか合流して再び10人程の先頭集団となる。

そして合流によって一旦ペースの緩んだ隙をついて、ストゥイヴェンがアタック!!

残り3km、独走を試みる!!

離された集団は有力選手同士の牽制状態になってしまい、その差が開いていく!!

これは…、このまま勝利もあるぞ!!

 

残り1.5km、牽制の隙をついてクラーウアナスンがブリッジを仕掛け、直後にピドコックもペースを上げようとするも、ファンアールトが反応してピドコックは行かせない!

クラーウアナスンはそのまま残り1kmでストゥイヴェンとの合流に成功!

クラーウアナスンはストゥイヴェンの背後に潜む「付き位置」ではなく残り600mからは先頭に回りストゥイヴェンと協調。

そして追走は後ろから追いついた選手も加わるもファンアールトのみが牽かされている状況で、いまいちペースが上がらない!

 

残り150m、先頭ではストゥイヴェンがスプリントを開始、クラーウアナスンには付いていく力が残っていない!

そして追走もほぼ同時にファンデルプールがスプリントを仕掛けると他の選手も一斉に腰を上げて加速する!

追走で前に出ているのはユアンとファンアールトの2人!

ストゥイヴェンも最後の力を振り絞って踏み続ける…!!

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ストゥイヴェンが逃げ切ったー!!

手に汗握るギリギリの攻防を制してのモニュメント初制覇!!

安定した成績を残す事には定評のあった実力者ストゥイヴェンが、キャリア最大のビッグタイトル獲得!

隙をついての勇気ある飛び出しと独走、そして最後は死力を尽くしての逃げ切りスプリント、お見事!!

 

レース後に

「スプリント勝負をして5位や10位になるよりも、飛び出して全てを賭ける方がいいと思っていたんだ」

「友だちにも”オール・オア・ナッシング”で行くと伝えていたんだ」

と語ったストゥイヴェン(※)、その勝負勘と粘り強さは本当に素晴らしかった!!

 

追走の先頭を取って2着に入ったのはユアン

ポッジオで最前線に残る程の登坂力は正直かなり意外だったけれども、「今年は登りを改善しようと思っていた。ポッジオでのアタックも何度も練習していた」との事(※)。

2018年に続く2度目の2位はかなり悔しかっただろうけれども、あれだけ登れれば来年以降もチャンスはあるだろうし、何より活躍できるレースが今まで以上に広がりそうだ。

 

3着に入ったのは昨年優勝のファンアールト。

アシストをチプレッサで使い切ったのはもしかしたら戦略通りだったのかもしれないけれども、ポッジオでのアタックによる「ふるい落とし」があまり効かなかった事、そして何より最終盤はかなり厳しいマークを受けたのは厳しかった。

強力な力を持つが故の難しさは今後も続きそうだけれども、「北のクラシック」に向けて調子は良さそうなので、期待できそうだ。

 

(※ストゥイヴェンとユアンのコメントの出典:ストゥイヴェン「最後に全てを掛けた」 ユアン「2度目の2位は悔しい」 - ミラノ〜サンレモ2021 選手コメント | cyclowired

 

ラスト30kmの高揚感

あ~、面白かった!

チプレッサでの探り合いと駆け引き、ポッジオでのアタック、そして「逃げ切り」と「スプリント狙い」の手に汗握る攻防。

ミラノ~サンレモの醍醐味が思う存分堪能できるレースだったと思う。

 

「300kmは長すぎる」なんて意見もあるし、正直言って前半が退屈なのには同意するけれども、終盤のギリギリの攻防も長い距離を走ってきたから、選手たちも極限の状態だからこそ生まれるという一面は否定できないとも思う。

え~と、つまり「ミラノ~サンレモは面白い」と言いたい。

ラスト30kmは、中盤までの「ながら見」をしていた退屈な時間なんか完全に頭から消え去る程のスペクタクルなドラマが待ち受けていて、頭の中は興奮と感動で一杯になっている。

モニュメントの幕開けに相応しい、素晴らしいレースだと思う。

 

さあ、来週からは「北のクラシック」、そしてその後ろには「アルデンヌ・クラシック」が控えている。

ヴォルタ・ア・カタルーニャやイツリア・バスク・カントリーも開催される。

「春」を迎えたロードレースシーズン、思いっきり楽しんでいきたい!

 

それでは、また!

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