真の「チーム力」
「クラシックの王」ロンド・ファン・フラーンデレンを占う大事な一戦であるE3サクソバンク・クラシック。
ロンド覇者は同年のこのレースで結果を残している事が非常に多く、「北のクラシック前哨戦」の中でも重要度の高いこのレースにはやはり多くの有力選手が出場する中、自分の予想がこちら。
E3サクソバンク・クラシック予想
— kiwa (@kiwa2408) March 26, 2021
本命:ワウト
対抗:マチュー
穴:ランパールト
大穴:ポリッツ
ワウトとマチューが出てると、どうしても本命と対抗は埋まりがち… #E3SaxoBankClassic #gcnjapan #ロードレースjp
「規格外」の2人vsドゥクーニンクのチーム力vsその他、みたいな感じかな。
昨年は新型コロナウィルスの影響で残念ながら中止となったこともあり、選手もファンも待望のレースがスタート!
この日の逃げは12人、タイム差は2分前後で推移。
レースが動き出したのは残り80km、ターインベルグから。
ドゥクーニンク・クイックステップがチーム総出でメイン集団を全力牽引すると、中断はたちまちバラバラになってしまう。
ドゥクーニンクはロンドでエースを張るであろうジュリアン・アラフィリップを連れてきていないながら、早くもやる気満々だ!
この「選別」で生き残り第2集団を形成するのは、わずか9人の精鋭のみ。
- イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク)
- カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク)
- ゼネク・スティバル(ドゥクーニンク)
- フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク)
- マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
- ワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
- マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)
- ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
- マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)
そしてその後ろの第3集団は30人程、グルパマFDJやAG2Rシトロエンが中心となって引っ張っている模様。
残り72km辺りで、第2集団のファンアールトがパンクによって遅れたため第3集団に吸収され、第3集団はファンアールトを前に戻したいユンボが牽引を開始したので第2集団との差を急激に縮めていく。
しかし、残り70kmで逃げを吸収した第2集団では、ファンアールトが戻る前にまたしてもドゥクーニンクが仕掛け始める。
残り67kmのボイネベルグに入ると、ドゥクーニンクが集団のペースを上げ、そして波状攻撃を開始!
セネシャルとスティバルのアタックは防がれるも、第三の矢として放たれたアスグリーンが独走を開始!!
そしてもちろん、集団ではセネシャルとスティバルがローテーションを阻害して集団のペースを上げさせない。
ペースが落ちた第2集団に、ユンボが牽引を続けた第3集団が残り62km辺りで合流。
前方を逃げるアスグリーンを捕まえようといくつかのアタックが繰り出されるも、この動きはことごとくドゥクーニンクがチェックしてしっかりと潰していく。
残り54km辺りでアントニー・テュルジス(トタル・ディレクトエネルジー)の動きをきっかけに6人の追走集団が形成されるも、ドゥクーニンクはここにセネシャルをしっかり入れてくる。
6人の追走も、その後ろの第3集団も、ドゥクーニンクの選手が「重し」となってペースが上がらず、アスグリーンとの差はなかなか縮まらないままレースは進んでいく。
レースが動いたのは残り42km、ロンドでも大事な勝負所となるパテルベルグ。
ファンアールト、ファンデルプール、グレッグ・ファンアーベルマート(AG2Rシトロエン)がアタック、そしてそれに反応したスティバルを含む4人が抜け出し、前を走る6人に合流する事に成功。
更にはディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)とランパールトも追いつき(しかし、ランパールトは後にメカトラで脱落)、先頭のアスグリーンを追いかける追走は11人に。
- セネシャル(ドゥクーニンク)
- スティバル(ドゥクーニンク)
- オリバー・ナーセン(AG2R)
- ファンアーヴェルマート(AG2R)
- ファンデルプール(アルペシン)
- ジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン)
- ファンアールト(ユンボ)
- ファンバーレ(イネオス)
- テュルジス(トタル)
- マルコ・ハラー(バーレーン・ヴィクトリアス)
- マルクス・フールゴー(UNO-Xプロサイクリングチーム)
AG2Rはダブルエースがしっかり残り、ファンデルプールはアシストを1人残し、そしてドゥクーニンクもしっかり2人(+先頭のアスグリーンも)いるので、この3チームは目論見通りの展開と言えそう。
逆に、ファンアールトは単騎になってしまっている上に、パンクによる遅れで脚も消耗していそうで、少し苦しいか。
残り20kmから始まるティーヘンベルグ、アスグリーンとのタイム差が30秒強の第2集団からアタックを仕掛けたのはファンアールト。
しかし、その背中にはファンデルプールがしっかりと張り付き、そしてファンアールトが一旦脚を緩めるとファンデルプールがカウンターアタックを繰り出す!
ファンデルプールにはスティバル、ファンアーベルマート、セネシャル、ナーセンがしっかり反応して追いかけるも、最初に仕掛けたファンアールトは力を使い果たしたのか追いかけられない!
抜け出した5人に遅れてファンバーレが後から合流し、6人となった追走集団はアスグリーンとのタイム差を縮めていく。
残り13km、ついにアスグリーンは吸収され、先頭は7人に。
- アスグリーン(ドゥクーニンク)
- スティバル(ドゥクーニンク)
- セネシャル(ドゥクーニンク)
- ファンアーベルマート(AG2R)
- ナーセン(AG2R)
- ファンデルプール(アルペシン)
- ファンバーレ(イネオス)
後続の集団はファンアールトが中心となって懸命に追いかけるも、残念ながら追いつける雰囲気は無く、勝負は先頭の7人で争われることに。
残り5kmでアタック仕掛けたのは、なんと直前まで50km単独で逃げていたアスグリーン!
追走を避ける為に中央分離帯の反対側から飛び出す「中央分離帯アタック」がキレイに決まる!
もちろんアスグリーンを追いかけようとナーセンやファンデルプールがアタックを試みるも、スティバルとセネシャルがしっかりとマークして行かせない!!
アスグリーンと追走の差は…最後まで縮まらない!!
2度の独走を実らせたアスグリーン、雄たけびを上げてのフィニッシュ!!
勇敢な走り、驚異の粘り強さ、そしてそこにチーム力も加わった圧巻の勝利!!
更に、ドゥクーニンクは追走集団による2位争いもセネシャルが制して、ワンツーフィニッシュを達成!!
ドゥクーニンクが「個の力」と「チームの連携」を遺憾なく発揮して、完璧なレース運びでのまさに完勝!!
「ウルフパック」と称される見事な連携だけでなく、そもそもの選手個人の能力の高さも合わせて、レースを完全に掌握しての勝利を飾ったドゥクーニンク。
チームワークと個の力の融合、これこそが真のチーム力。
翌週に迫っている「クラシックの王」ことロンド・ファン・フラーンデレンでは、このレースには出場しなかったジュリアン・アラフィリップも加わって、万全の態勢で勝利を目指すはず。
そんな「ワンデーの王者」に対して、「2人の怪物」とその他のチームはどのように挑むのか。
今から楽しみで仕方がない!