2強、激突
自転車熱が高いスペインはバスク地方で行われるステージレース、イツリア・バスクカントリー。
この6日間の戦いで昨年の2強が、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)の2人が、今年初めて直接対決する事になります。
もちろん注目選手はその2人だけではなく、グランツールを見据えた選手、そして激坂にも対応できるパンチ力を兼ね備えた総合系の選手が出場し、激戦は必至です。
今回も注目選手の紹介を行いますが、今までとは少し趣向を変えて、期待度を★の数で表して紹介していきます。
★★★:現役最高峰の「2強」
UAEツアーでもティレーノ~アドレアティコでも付け入る隙の無い完璧な走りで総合優勝と、今シーズンも絶好調なポガチャル。
ここまで山岳で最強なのはもちろん、個人TTでもスペシャリストに全く引けを取らないタイムを叩き出すなど、昨シーズン以上の怪物っぷりを見せています。
強いて弱みを挙げるならアシストの力かもしれませんが、それも決して「弱い」というレベルでは無く、そしてポガチャル自身があまりアシストに頼りきりにならない走りをするために、今のところ問題にはなっていません。
今回もまた他を圧倒する完全無欠の「王者の走り」を見せるのか、そして最大のライバルであるログリッチとの対決はどうなるのか、目が離せません。
パリ~ニースでは最終日の落車で総合優勝を逃してしまいましたが、第7ステージまでは完璧な走りを披露したログリッチ。
元々TTスペシャリストだったのでTTでタイムを稼ぐのはもちろん、山岳ステージでも2勝する登坂力を見せつけ、更には登りスプリントでも勝利と、文字通り他の選手を寄せ付けない次元の違う走りを見せてくれました。
アシストの豪華さもやはり強みの一つで、今回はトビアス・フォス、クリス・ハーパー、レナード・ホフステッド、アントワン・トールク、サム・オーメン、ヨナス・ヴィンゲゴーと、若手中心ながらかなり期待できるメンバーを揃えてきました。
チーム力と個人の力で、ポガチャルとどんな争いを見せるのか楽しみです。
★★:「2強」に立ち向かう強者
アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)
正直なところ、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで完璧な走りを見せたアダム・イェーツを「★★★」にするか「★★」にするか、かなり迷いました。
山岳ステージで持ち前の登坂力を見せてタイムを稼いだだけでなく、苦手とされてきた個人TTでも好タイムを叩き出し、そしてチーム力はもちろん最強クラスなので、カタルーニャと同じような走りを披露できれば「2強」とも互角に渡り合えるとは思います。
ただ、やはり少し不安なのが初日の個人TTステージで、カタルーニャでの走りが「出来すぎ」だった可能性を、正直言って否定しきれません。
そして、もしそこでタイムを失った場合、イネオスの強力すぎる選手層が問題になる可能性、つまりリチャル・カラパスやテイオ・ゲイガンハートにエースをスイッチする可能性が、十分考えられます。
逆に言えば、初日を上手く纏められれば文句なしの優勝候補なので、頑張りに期待したいところです。
マクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
パリ~ニース2連覇と、ここ数年でステージレーサーとして一気に飛躍したシャフマン。
元々定評のあったパンチ力とTT能力に加え、厳しい山岳でも生き残り続ける意外な粘り強さを披露してくれています。
このイツリア・バスクカントリーは、2019年の前回大会(2020年は中止)でステージ3勝を挙げて最終盤までリーダージャージをキープし続けた、とても相性のいいレースです。
そしてチームはシャフマンの他に、エマヌエル・ブッフマンとウィルコ・ケルデルマンという2人のエース級選手を連れてきているので、3人の調子がよければ相手としては的が絞りにくく、非常に厄介だと思います。
ポガチャルやログリッチと正面からやり合えるかは…正直言って少し厳しい気もしますが、パンチ力を活かした意外性とチーム戦略で立ち向かえたら、かなり面白い存在になりそうです。
バーレーンのエースを務めるランダは、このレースの舞台であるバスク地方出身の選手です。
地元の星という期待度はもちろんありますが、ティレーノ~アドレアティコで総合3位に入ったように、その登坂力は充分に戦う力を備えています。
そしてティレーノで表彰台に上がっただけでなく、今年参戦した2つのクライマー向けワンデーレースでも1桁順位でフィニッシュしたように、調子は上々です。
アシスト陣も、エース級のペッリョ・ビルバオ、期待の若手であるジーノ・マーダー、そして我らが日本の誇り新城幸也選手など、有力な選手を引き連れてきたので十分期待できると思います。
★:総合上位を窺う有力選手
伝染性単核球症からの完全復活を目指すチャベスは、先日のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャのクイーンステージで勝利を挙げ、復調の兆しが見えてきています。
状態さえ良ければやはりその登坂力は一級品なので、期待したいところです。
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)
今シーズン既に2勝と、状態が良い事を伺わせているモレマ。
そのアタック力は今大会のようなレイアウトではかなり活きるはずなので、積極的な走りを見せてくれると面白くなりそうです。
マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)
モレマ同様、アタック力には定評のあるウッズも期待できるでしょう。
先日のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャのクイーンステージではチャベスに次いでの2位と、調子も良さそうです。
ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)
昨シーズンのブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位に入ったカーシーも、もちろん期待したい選手の1人です。
あの「アングリル」を制した登坂力と激坂適正は、間違いなくこの大会に向いています。
ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)
前回大会(2019年)の覇者ヨン・イサギレも、当然ながら注目の選手です。
先月のパリ~ニースで総合3位と調子は上々、そしてヤコブ・フルサンという強力なチームメイトを引き連れての参戦となっているので、チームとしての動きにも注目でしょうか。
アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)
今シーズン限りで引退予定の大ベテランですが、先日のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで総合4位と、未だその力は健在です。
年齢を感じさせない積極的な走りで、不振だった昨シーズンの分も取り返すような暴れっぷりを期待しています。
※追記!
4/3開催のグラン・プレミオ・ミゲル・インデュラインで優勝!
やはり好調のようです!
テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ)
イネオスにはアダム・イェーツという好調のエース候補、そしてリチャル・カラパスというこれまた強力なチームメイトもいますが、昨シーズンのジロ・デ・イタリア覇者に注目しない訳にはいかないでしょう。
先月のパリ~ニースではその力を見せる前に落車でリタイアしてしまいましたが、昨年同様の快走を見せればもちろん総合上位が狙えるはずです。
「2強」といかに戦うか
個人の力では、正直言ってポガチャルとログリッチが頭一つ抜けているようにも感じます。
ただ、それでも勝負はどうなるか分からないのがロードレースの面白いところです。
チーム力や戦術で個人の力量差をひっくり返すのか、それとも強者がその力を示してしっかり勝ち切るのか。
グランツールを占う重要な一戦、今から楽しみですね!