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【レース感想】ツール・ド・ロマンディ2021

さぁ、グランツールの前哨戦だ!

春のクラシックシーズンが終わり、そしてグランツールシーズンの幕開けを告げる重要なステージレースツール・ド・ロマンディ

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スイスを舞台に山岳も個人TTも織り込んだこのレースには、やはり直前に迫ったジロ・デ・イタリアに出場予定の選手や、ツール・ド・フランスへ向けて調整目的の選手、特に多くの総合系選手が出場する事に。

総合系選手で主だった選手は大体こんな感じかな。

  • ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ
  • リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ
  • ステフェン・クライスヴァイク(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • セップ・クス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)
  • マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)
  • マルク・ソレル(モビスター・チーム)

果たして、イネオスとユンボはどっちがエースなんだろうか…。

 

そして、トップスプリンターはあんまり出場していないけれども、ジロを目前に控えたペテル・サガン(ボーラ)の仕上がりは気になるところ。

 

プロローグ

初日は4kmのプロローグ(個人TT)なんだけれども、ラスト1kmが約10%の登り勾配というなかなかトリッキーなコースレイアウト。

なんか、最近こういうレイアウト増えてる気がするけど、結果が読みにくくて面白いからヨシ!

という事で、自分の予想がこちら。

プロローグを第1ステージと書いてしまっている…(汗)。

距離が短いからフィリッポ・ガンナ(イネオス)が登坂もパワーで押し切るだろうという、割と雑な予想。

 

最初にターゲットタイムとなる好走を見せたのは、シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO)。

そのタイムは、ヨーロッパチャンピオンジャージを着るシュテファン・キュング(グルパマFDJ)さえも追いつけないほどの好タイム。

先日のパリ~ニースでの勝利もそうだし、ビッセガーはもう完全にワールドクラスのTT巧者だね。

 

このビッセガーのタイムを11秒も更新したのは、元世界王者のローハン・デニス(イネオス)。

昨年のジロでも登坂力を見せつけたように、この日のラストも快調に登り切る貫禄の走りを披露!

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このデニスのタイムを塗り替える選手は最後まで出ず、デニスがステージ勝利!

これで今シーズン2勝目、そしてキャリア通算30勝目!

昨シーズンの「勝てない」デニスではなく、強いデニスが帰ってきた!

 

デニスの直後、現世界王者のガンナが登場するも…タイムが伸びない。

特にラストの登りのタイムがイマイチで、最終的にステージ9位というガンナにしては悪い結果に終わってしまう。

登り云々以前に、一時期の絶好調状態ではないように見えるけれども、果たしてジロではどんな走りを見せるのか、そしてその前にロマンディの最終ステージでどんなタイムを出すのか注目したい。

 

そして、総合勢で良いタイムを出したのはイネオスのダブルエース、トーマスとポート。

共にデニスから9秒遅れのタイムで、トーマスがステージ2位、ポートがステージ3位となり、なんとステージのワン・ツー・スリーをイネオスが独占する事に!

早くも万全の態勢を整えてきたイネオスが、総合トップ3を独占したボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャの再現のような、他を圧倒するような結末となるのだろうか。

 

第1ステージ

3級山岳が2つ入った周回コースを4周する、スプリントになるか際どい丘陵(?)ステージ。

とりあえず自分の予想がこちら。

とりあえず、間違いなく最後まで生き残れそうな選手の中で最もスプリント力のありそうなサガンをチョイス。

ただ、ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)やマグナス・コルト(EF)のような登れるスプリンター系の選手や、マルク・ヒルシとディエゴ・ウリッシ(共にUAEチームエミレーツ)みたいな強力なパンチャーもいるので、なんとも言えないところ。

 

この日の逃げは6人、メイン集団とのタイム差は最大で6分ほど。

ただ、リーダージャージを抱えるイネオス、そしてスプリントに持ち込みたいボーラやバーレーンやチーム・バイクエクスチェンジ辺りが牽引してしっかりとタイム差を縮め、最後の3級山岳で逃げを全て吸収する。

というか、この牽引でエリア・ヴィヴィアニ(コフィディス)やマッテオ・モスケッティ(トレック・セガフレード)なんかのピュアスプリンターが脱落しているので、牽いていたチームによるメイン集団への「攻撃」でもあった訳だ。

 

その後の平坦区間でいくつかのアタックはあったものの、メイン集団はこれを全て飲み込んでフィニッシュ地点へと向かっていく。

残り1km手前ぐらいから先頭を牽くのはバーレーンのヤン・トラトニック、もちろんエースのコルブレッリを引き連れている。

しかし、その背後にはパトリック・ベヴィン(イスラエル)とサガンがピッタリと張り付く。

残り250m弱、トラトニックが長い牽引を終えようとしたその瞬間、4番手にいたサガンがスッとポジションを上げ、少し長めのスプリントになったコルブレッリを追いかけるような形でスプリントを開始。

早めの仕掛けとなったコルブレッリがよく粘るも、最高のタイミングで飛び出したサガンが力強く先頭へ躍り出る!

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これぞサガン

抜群のポジショニングからの余裕の勝利!

「位置取りが上手い」っていうのはこういう事だなと、改めて実感させてくれるようなサガンらしさ爆発の動き!

コルブレッリの粘りもかなりよかったけれども、サガンの「上手さ」が1枚も2枚も上手だったかな。

 

第2ステージ

5つの2級山岳、そして残り17km地点で1級山岳を超えてのフィニッシュとなる、丘陵(?)ステージ。

これまた展開を読むのが難しいステージな気がするけれども、自分の予想がこちら。

調子が上がってきている(と自分は勝手に思っている)ヒルシをチョイス。

登れる・下りも上手い・パンチ力もあると、色々と条件は揃っていると思う。

 

この日の逃げはアントワン・トールク(ユンボ)、ジョナサン・カイセド(EF)、レイン・タラマエ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)、ヘルマン・ペルンシュタイナー(バーレーン)、クリス・ハミルトン(チームDSM)、ダヴィデ・ヴィレッラ(モビスター)という、強力な6人。

強力なクライマー揃い、かつ総合タイム差が1分以内の選手しかいない逃げが大きなリードを許される訳もなく、イネオスが牽引するメイン集団は最大で2分半ほどのリードしか与えずにレースは進行。

1級山岳突入前にタラマエ以外の逃げは吸収、生き残ったタラマエも登坂で捕まってしまう。

 

タラマエが吸収された直後、イラン・ファンワイルダー(チームDSM)がアタックを仕掛けると、クス、ウッズ、ケニー・エリッソンド(トレック)という強力な選手、というか総合を狙う目のある選手が飛び出そうとしたので、もちろんイネオスがチェック。

アタッカーを捕まえようと集団を牽引しているのは、リーダージャージを着用するデニス。

リーダージャージを着ようともアシストはアシスト。

イネオスの非情に見えながらも至極当然の采配によりアタックした選手は吸収され、そして集団はみるみる人数を減らしていく。

いやぁ、デニス強いなぁ…。

そしてデニスをアシストとして使えるイネオス、やっぱり強いな…。

 

1級山岳の展開は当然ながら前日の3級山岳よりも厳しかったようで、第1ステージ勝者のサガンを含めてスプリンターは殆ど残っていない状況に。

そんな中、前日は惜しくもサガンに敗れて2着のコルブレッリ、そして3着だったベヴィンは何とか生き残っている。

しかも、コルブレッリは複数のアシストを残せているという、スプリントで勝負する絶好のチャンスに。

前日は早めのスプリントを仕掛けざるを得なかったコルブレッリだけれども、この日は残り200mを切る辺りまでリードアウトを受けてスプリントを開始!

抜け出したコルブレッリを猛追するのはベヴィン!

じわじわとベヴィンが迫る!

コルブレッリも最後まで必死に粘る!

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今度は前を譲らなかった!

コルブレッリが粘り切って勝利!!

前日は悔しい思いをした2人によるスプリント、熱かったね~!

というか、3位以下がパンチャーやクライマーだらけなので、よくこの2人が残っていたな。

自分が予想したヒルシは3位とパンチ力は披露したものの、さすがに前の2人には敵わないや…。

 

第3ステージ

序盤は激しい起伏が無く、中盤以降は3級山岳が2つ登場する周回コースを3週する丘陵ステージ。

フィニッシュから約9km手前に3級山岳が存在するけれども、厳しさはあまりないので集団スプリントになりそうな雰囲気かな。

とりあえず、自分の予想がこちら。

第1ステージ同様、サガンが貫禄の勝利と予想してみる。

 

冷たい雨の中、この日の逃げは7人。

総合タイムであまり大きく遅れていない(1分19秒差)キュングとコービー・ホーセンス(ロット)が逃げに乗ったため、メイン集団とのタイム差は概ね2分程度で推移。

残り14.5km地点にある最後から2つ目の山岳で、キュングとホーセンスが逃げ集団のその他の選手を突き放すも、直後の濡れたダウンヒルでキュングが落車してしまい、先頭はホーセンスの単独に。

 

最後の登坂に入ると、ウッズ、クス、ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)、ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)といった、総合逆転を狙う選手が動き出したことによって、それを捕まえようとメイン集団がペースを上げていく。

このタイミングで、なんと総合リーダーのデニスが落車してメイン集団から離脱するも、イネオスはデニスを引き上げる動きは一切見せない。

まぁ、イネオスとしてはまだデニスでよかったというところか…。

 

ペースアップした集団はそのままホーセンスや飛び出した選手を山頂付近で吸収する事に成功。

その直後、カウンターでソレルが飛び出すと、そのまま一気に差を広げていく!

スプリントに持ち込みたいチームが必死に追いかけるも、路面状況の影響もあってなかなかペースが上がらない!

ソレルはそのまま順調に独走を続け、そのまま単独でフィニッシュ地点へ!

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ソレルはステージ勝利だけでなく、総合首位も獲得!

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージでも同じようなタイミングでダウンヒルでの独走を決めていたソレルは、やっぱりこの独走力が魅力というか、色々とポテンシャルはあるよなぁ。

 

第4ステージ

フィニッシュ地点も含めて1級山岳が3つ登場する今大会のクイーンステージ。

最後の山岳決戦の舞台となるフィニッシュのティオン峠は、標高2072m、登坂距離20.7km、平均勾配7.6%という、決戦の地に相応しい難易度。

そんな最後の「山場」に対して、自分の予想がこちら。

ここまで好調のトーマスが個人の力とチーム力を遺憾なく発揮すると予想してみる。

 

この日の逃げは7人。

2つ目の1級山岳でメイン集団とのタイム差は5分半ほど、ここからメイン集団がどんなペースアップを見せるのかと思っていたら、激しい雨と霧のため下りをニュートラルにするという審判判断が下る。

人数を減らしていた逃げ集団は、思わぬ形でタイム差を5分以上保ったまま最後の登坂へと突入していく。

 

ティオン峠に突入すると、さすがに逃げ集団は疲労の色を隠せずに人数がどんどん減っていき、気が付けば先頭はマグナス・コルト1人だけに。

このコルトの持ちタイムが総合で59秒遅れと意外と良いので、メイン集団もペースを上げないとまずいのだけれども、総合リーダーのソレルを抱えるモビスターの牽引はイマイチ弱いまま。

ここでモビスターの代わりに牽引を開始したのは、イネオスの面々。

もちろんコルトを捕まえるという意味もあるだろうけれども、満を持してメイン集団への攻撃を開始といった感じか。

エディ・ダンバー、続いてデニスの牽引によるメイン集団への「攻撃」はやはり強力で、メイン集団はどんどん人数を減らしていき、気が付けばソレルが全てのアシストを失い丸裸になっている。

15名ほどに絞られたメイン集団ではいくつかのアタックが発生し、抜け出しに成功したのは総合16位(30秒遅れ)のウッズ。

ウッズをすぐに追いかける選手は…いないように見える。

 

一方、先頭のコルトは残り5kmを切った辺りから急激にペースを落とし、一度振るい落としたはずのシモーネ・ペティッリ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)に先頭を譲ってしまう。

と言うか、一応スプリンターにカテゴライズされるコルトがここまで残ること自体が驚愕であり、正直言ってこうなる気はしていたけれども…。

アンテルマルシェ悲願の今シーズン初勝利に向けて、先頭を走るペティッリ。

しかし、後ろからウッズがもの凄い勢いで駆け上がってきて、そのまま無情にも抜き去っていく。

そのウッズを追いかけるのは、まずは単独でベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)、その後ろからトーマスとマスナダが猛追してオコーナーと合流…したと思ったら、そのままトーマスが加速!

オコーナーはなんとか食い下がろうとするも、トーマスは残り2.2km辺りでウッズに単独で追いつく事に成功する。

 

残り200m、ウッズが加速してトーマスを振り切ろうと試みるも不発に終わり、逆にコーナーで上手くインを取ったトーマスが前に出る形になる。

しかしウッズは再度ペダルに力を込め、最終コーナーでトーマスを躱そうとする!

もちろんトーマスも加速しようとしたその瞬間、なんとトーマスが転倒!?

寒さで指の感覚がなくなったのか、それとも雨で滑ったのかは分からないけれども、ダンシングでハンドルから指を滑らせるという、なんとも珍しい落車をしてしまう…。

そして、もちろんウッズは転倒したトーマスを尻目に先頭でフィニッシュ!

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これでウッズは一気に総合首位にジャンプアップ!

前日のソレルに続き、2日連続でリーダージャージ着用者が入れ替わる事に!

集団から単独で抜け出すアタック力、そして最後まで粘り続けた走りはお見事!

 

そしてフィニッシュ直前で転倒したトーマスは、オコーナーにも抜かれてウッズから21秒遅れの3位でフィニッシュ。

幸いにも大事には至らず、11秒遅れの総合2位という位置で、最終日の個人TTでの逆転を目指す事に。

 

第5ステージ

最終ステージの個人TTは、10%以上の登り勾配の石畳区間あり、テクニカルなダウンヒルありと、これまたかなりトリッキーなレイアウト。

予想難しいなぁ…などと思いつつ、とりあえず自分の予想がこちら。

デニスならこのアップダウンも乗り越えてくれるかなという、これまた安直な考え。

そしてついでに総合の予想もしているけれども、「落車のダメージは無い」という報道(というか本人談)があったトーマスが逆転、更にはポートも好走して表彰台へ…というシナリオ。

 

プロローグ同様、ビッセガーが好タイムを出すも、そのすぐ後にカヴァニャがタイムを3秒更新。

総合争いと関係のない2人のタイムは、そのままステージ1位・2位のタイムに!

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今シーズンここまで個人TTで2位が2度と「あと一歩」だったカヴァニャ、嬉しい今シーズン初勝利!

昨年のツールの個人TTでもそうだったけれども、パワー型に思えて意外と登れるのがこの選手の大きな強みなのかも?

 

そして注目の総合争い。

総合勢でトップとなるタイムを叩き出したのは、前日は落車で悔しい思いをしたトーマス!

前日の落車の影響を全く感じさせない好走を披露し、カヴァニャから17秒遅れのステージ3位に!

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そして、個人TTが苦手な最終走者のウッズは1分11秒遅れと苦しみ、総合首位から一気に総合5位へと転落してしまう。

まぁ、ウッズが総合優勝するには昨日もっとタイム差を付けなければいけなかったという事だね…。

という事で、プロローグで2位にこの日も3位と、流石の安定感を披露したトーマスが見事総合優勝!!

個人TTも山岳も強い、そしてアシスト陣も強いという、付け入る隙の無いまさに完勝。

本当に素晴らしかった!

 

そして、総合2位にはステージ5位のポート、総合3位にはステージ6位のマスナダがランクイン!

ポートの好タイムを予想した人は多かっただろうけれども、マスナダがこのタイムでフィニッシュするのは、個人的には結構驚いたかな。

 

イネオスが強い!

改めて、総合順位を確認。

 

総合優勝:ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ

総合2位:リッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ

総合3位:ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ

 

終わってみれば、トーマスとポートがワンツーフィニッシュと、イネオスの圧勝。

個の力もチーム力も、やはり強かったとしか言いようがない。

なんなら「デニスで総合優勝を狙っても取れたんじゃないの?」と思うぐらい強かった気がする。

ツールへの出場が予想されるトーマスとポート(恐らくデニスも?)は、色々といい調整と証明の場になったよね。

そして総合3位のマスナダはもうすぐ開幕のジロに向けて、視界は良好といった感じだね。

このマスナダがアシストとして控えるジロでのドゥクーニンク、かなり期待できるかも…?

 

いや~しかし、第4ステージの登坂は面白かった!

自分だけでなく多くの人がそうだと思うけれども、やっぱり総合争いの山岳決戦は見ていて熱くなるよね。

 

そして遂に、5/8にジロが開幕する!

3週間の長丁場、熱い山岳での戦いに期待したい!

 

それでは、また!

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