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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2021 第6ステージ

苦境のチームを救う若き才能

コース中盤に2級山岳と3級山岳が連続で登場し、最後は長いダウンヒルを経てからの2級山岳の山頂フィニッシュとなる、間違いなく総合争いが起こるであろう第6ステージ。

 

冷たい雨が降る中、この日の逃げはバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)やマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)といった大物も含む8人。

最初の2級山岳を先頭で通過したジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン)が山岳ポイントを18点獲得して、山岳賞争いの暫定首位に躍り出た。

 

メイン集団では、2級山岳と3級山岳の短い谷間で、イネオス・グレナディアーズが強烈なペースアップを敢行。

谷を吹き抜ける横風と狭い道幅を利用しての横風分断作戦は、総合争いのライバルを置き去りにする事は出来なかったけれども、集団は一気に人数を減らし、残った選手も脚を削られるような格好に。

3級山岳を超えてからの長いダウンヒルでは、メイン集団からアルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・NIPPO)、ロマン・バルデ(チームDSM)、ジュリオ・チッコーネ(トレック)という強力な3人が飛び出して一旦先行するけれども、フィリッポ・ガンナ(イネオス)がダウンヒルをほぼ一人で牽き倒して、最後の登坂口の手前で3人をキャッチする。

 

フィニッシュに向けた2級山岳の登坂に入り、先頭はモレマ、モホリッチ、ジーノ・マーダー(バーレン)、ダリオ・カタルド(モビスター・チーム)の4人に減っていて、2人の選手を残しているバーレーンはモホリッチが積極的に牽引して、マーダーを温存する作戦をとる。

モホリッチは残り13.5km辺りまで牽引を続け、役目を終えて下がっていく。

 

一方のメイン集団は相変わらずイネオスが牽引…というか、まだガンナが牽引を続けている。

ガンナは残り10kmを切る辺りまで牽引を続け、全てを出し切った様子で後方に下がっていく。

約60kmに渡る強烈な牽引を見せたガンナの働きは、凄まじいの一言。

このガンナの「鬼牽き」の甲斐もあって、イネオスはパヴェル・シヴァコフという強力な選手が離脱した事による穴を感じさせない支配力を披露。

ガンナに続いてジョナタン・カストロビエホとジャンニ・モスコンが牽引をして、その後ろにはエースのベルナルとダニエル・マルティネス(シヴァコフに代わるセカンドエース兼山岳アシスト?)が控える、盤石の態勢でレースを展開させていく。

パンクしながらも牽引を続けたカストロビエホが役割を終えて下がると、集団の先頭に上がってきたのはドゥクーニンク・クイックステップのトレイン。

エースのレムコ・エヴェネプールをファウスト・マスナダとジョアン・アルメイダが護衛しながら、ペースを刻んでいく。

 

残り3.3km、逃げ集団からマーダーがアタックするとモレマとカタルドは全く反応できず、マーダーがステージ勝利に向けて独走を開始!

ただ、メイン集団は約1分30秒後方にまで迫り、さらにはイネオスのマルティネスがアタックを仕掛けているため、ペースが上がっている!

マルティネスを捕まえようとメイン集団を牽引するのはドゥクーニンクとアスタナ・プレミアテック。

しかし、残り1.5kmでマルティネスが捕まりそうになると、イネオスのエースであるベルナルがアタック!!

イネオスは中盤からメイン集団の脚を削り続け、おまけにマルティネスを追いかけさせることで更に負荷をかけてからの、満を持してのベルナルのアタックという、周到で強烈な攻撃!

このベルナルの動きに反応できたのは、エヴェネプール、チッコーネの2人。

しばらくすると3人が牽制状態になったために後続が一旦は追いつくけれども、残り1kmでベルナルが再度加速すると、付いてこれたのは先ほどの2人とダニエル・マーティンイスラエル・スタートアップネーション)の計3人のみ!

アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ)やサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)といった有力と目されていたライバル達が遅れていく!!

 

メイン集団から4人が抜け出す一方、単独で逃げるマーダーも驚異的な粘りを続ける!

タイム差はじわじわと縮まっていくけれども、マーダーは着実にフィニッシュに近づいていく!

マーダーは苦しさに顔を歪めながらも、最後までしっかりと踏み続けてフィニッシュ!!

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最後は大きなガッツポーズができないほど全てを出し尽くしたマーダー、見事な逃げ切り勝利!

3月のパリ~ニースでは残り50mのところでプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)に躱されてしまったけれども、ジロというより大きな舞台で今度こそ勝利を掴み取った!!

そして何より、前日にエースのミケル・ランダを失ったチームにとって大きな救いとなるであろう、価値ある勝利を持ち帰る事が出来た!

 

マーダーの12秒後、総合勢4人による2着争いはベルナル、ダニエル・マーティン、エヴェネプール、チッコーネの順でフィニッシュ。

アタック以後の残り1kmを牽き続けるような形になっていたベルナルは不利かなとも思っていたけども、パンチ力に定評のあるダニエル・マーティンを制して、貴重なボーナスタイムを獲得する事に成功!!

ファンとしては、昨年はけがに泣いたベルナルが調子の良さそうな走りを見せてくれているのが、本当に嬉しくてたまらない!!

このまま、総合優勝まで突き進め!!