逃げ集団による目まぐるしいステージ勝利争い!
総合争いが巻き起こるには易しく、スプリンターが生き残るには厳しすぎる4級山岳フィニッシュという、まさに逃げるためのような第8ステージ。
更には、翌日が厳しい山岳ステージなので総合勢は無理をしたがらないというオマケつき。
そんな逃げ切り勝利の大チャンスというステージなだけあって、レース開始直後から勝利を掴みたい選手たちによるアタック合戦が過熱!
更には、横風分断を狙ったイネオスがペースアップを図ったりもしたので、なかなか逃げが決まらない模様。
イネオスさんよ、そりゃエガン・ベルナルを前に行かせよう(逃げに乗せよう?)なんてしたら、逃げが決まる訳ないでしょうに…。
ただ、「隙あらばライバルを置き去りにしよう」というしたたかさは、総合争いに対する本気度と経験値がよく出ていると、唸らされる部分ではあると思う。
1時間ほどのアタック合戦の末に出来上がった逃げ集団は9人。
- ネルソン・オリヴェイラ(モビスター)
- ヴィクトル・ラフェ(コフィディス)
- ヴィクトール・カンペナールツ(チーム・クベカ・アソス)
- ニキアス・アルント(チームDSM)
- コービー・ホーセンス(ロット・スーダル)
- フェルナンド・ガビリア(UAEチームエミレーツ)
- アレクシー・グジャール(AG2R・シトロエン)
- フランチェスコ・ガヴァッツィ(エオロ・コメタ)
- ジョヴァンニ・カルボーニ(バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
なかなかのメンバーというか…え?
ガビリア?
…あぁ、なるほど、中間スプリントポイント狙いか。
前日の「早掛け」もそうだけれど、不振に苦しむガビリアが現状なりに必死に頑張っているのがよく伝わってくる。
逃げがじわじわとメイン集団とのタイムを広げる中、少し残念なニュースも飛び込んでくる。
ここまでステージ2勝で、この日からマリア・チクラミーノを着用していたカレブ・ユアン(ロット・スーダル)が、膝の痛みの為にリタイアしてしまった…。
ただ、元々ユアンはツール・ド・フランスへ向けての調整の為に途中リタイアの可能性を示唆していたので、まぁ想定の範囲内と言えばそれまでではある。
ステージ2勝としっかりと結果を残した上で無理せずに次の目標に切り替えるのは、見ている側からしたら色々と安心できる一面もあるので、ここはポジティブに捉えたいところかな。
レースに話を戻して、メイン集団を牽引しているのはリーダージャージをキープしているグルパマFDJのメンバー。
グルパマとしてはアッティラ・ヴァルテルのマリア・ローザを守れればそれでいいし、イネオスやドゥクーニンク・クイックステップのような総合優勝を狙うチームとしても、翌日の難関ステージのためにエネルギーを温存したいところ。
要は、メイン集団としては「この日は逃げ切りを許しても問題ない」という思いが一致したので、逃げ集団とのタイム差はどんどん開いていき、あっというまに「逃げ切りがほぼ確定」というような状況が出来上がる。
中間スプリントポイントは、ガビリアがしっかりと先頭通過してポイントを獲得。
ポイント賞争いのトップだったユアンが離脱した事もあり、順位を6位に上げる事に成功する。
残り50km地点にある2級山岳は、ホーセンスが先頭で通過。
てっきり、ここを先頭通過できれば山岳賞争いで暫定首位に立つことが出来るガヴァッツィが狙うかと思っていたけれども…、ガヴァッツィは無理に踏み込まずに3位で通過。
逃げ切りが「確定」したこの状況下で、ステージ狙いの為に力を温存するという事…なのか?
ダウンヒルでガビリアが落車するというトラブルはあったけれども、そのガビリアもなんとか追いついて、逃げ集団は9人のままステージ争いの最終局面へと突入していく。
フィニッシュ地点の4級山岳は途中に勾配が11%ほどになる区間が登場するので、まずは平坦が得意な選手、TTスペシャリストのカンペナールツが早めに仕掛けると、一気にアタック合戦が始まる!
カンペナールツのアタック、グジャールのカウンターアタック、再びのグジャールのアタック、ホーセンスのアタック、そしてオリベイラのアタック。
度重なるアタックもなかなか決まらかったものの、オリベイラのアタックに対するカウンターでまたしてもカンペナールツが仕掛けると、これに付いていけたのはカルボーニ1人のみ。
カンペナールツが流石の独走力を見せて、先頭の2人は一気に後方との差を広げていく。
ここまでかなり積極的な動きを見せていたカンペナールツだけれども、登坂区間に入ると明らかにカルボーニの方が余裕のある様子を見せている。
残り3km地点でカンペナールツはカルボーニに付いていけなくなり、カルボーニが独走を開始!
「このままカルボーニの勝利か?」と思ったのも束の間、直後に追走集団からラフェが飛び出すと、残り2.5kmにある急勾配区間で一気にカルボーニ追いつく!
ラフェはそのまま勢いを失わず、間髪入れずにカルボーニを追い抜いていく!!
残り1.5km辺りで後方からガヴァッツィがアタックを仕掛けて(やっぱりステージ狙いの為に力を温存していた!)ラフェを追いかけるも、時すでに遅し。
既に20秒以上のタイム差を稼いでいたラフェは勝利を確信して、早めにガッツポーズを繰り出しながらフィニッシュ地点へ!!
逃げからの素晴らしいアタックを見せたラフェ、これが嬉しいプロ初勝利!!
しっかりと自分の力量を把握し、適切なタイミングでアタックした判断はお見事!!
恥ずかしながら、ラフェの事は全く知らなかったんだけれども…、調べてみると4月のボルタ・ア・コムニタ・バレンシアナで総合4位に入っているように、勢いと実力のある若手クライマーらしい。
今後も注目していきたい!
メイン集団では総合争いは巻き起こらず、有力選手に大きな順位変動はなくフィニッシュ。
その視線は翌日の第9ステージ、1週目最大の山場となる山頂フィニッシュに向いている。