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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2021 第10ステージ

「指定席」へ戻ってきた千両役者

1週目の締めくくりとなる第10ステージは、4級山岳を含む起伏が存在しつつも終盤は下り基調が続き、最後は集団スプリントになりそうなレイアウト。

 

この日の逃げは5人、メイン集団とのタイム差はあまり広がらずに2分台で推移していく。

途中、逃げ集団が踏切によって足止めを食らうなんていうトラブルはありつつも、レースは穏やかに進行していく。

 

レースが動き出したのは4級山岳の手前、カテゴリーのついていない「無名の丘」。

この起伏と直後の4級山岳を利用して、ボーラ・ハンスグローエが集団のペースを上げる事による「スプリンターふるい落とし作戦」に打って出た!

このボーラの攻撃によって、ディラン・フルーネウェーヘン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、ティム・メルリール(アルペシン・フェニックス)、ジャコモ・ニッツォーロ(チーム・クベカ・アソス)といったステージ勝利の有力候補がメイン集団から遅れると共に、逃げ集団はあえなく吸収されてしまう。

4級山岳を通過後、ニッツォーロはヴィクトール・カンペナールツのアシストを受けて集団への復帰を試みるけれども、残り27kmでそれも諦める事に。

アワーレコードの世界記録保持者であるカンペナールツの牽引力でも追いつけない、ボーラの攻撃の恐ろしさ…!

これで、この日のスプリントはメイン集団に生き残る事の出来た、少数精鋭のスプリンターで争われる事に。

 

残り17.8km地点の中間ポイント(ボーナスタイムが加算)では、総合1位のエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)と、総合2位のレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)による激しい争いが勃発!

ドゥクーニンクが早めに集団前方へ陣取ってボーナスタイムを取りに行く姿勢を見せると、イネオスもフィリッポ・ガンナがベルナルを引き上げてくる。

そのまま先頭まで出てきたガンナとベルナルはエヴェネプールとの間にギャップを作る事に成功するけれども、エヴェネプールはなんと単身で2人に追いつき、そしてアシストを終えて下がっていくガンナを尻目にそのままベルナルを追い抜く!

負けじとイネオスはジョナタン・ナルバエスが踏み込み、ナルバエスはそのまま先頭へ出る。

そして、そのままナルバエス(ボーナスタイム3秒獲得)、エヴェネプール(2秒獲得)、ベルナル(1秒獲得)の順番で中間ポイントを通過。

…ん?

エヴェネプールとベルナルが得たボーナスタイムの差は1秒。

もしナルバエスが出ていかずにエヴェネプールが先頭通過(3秒獲得)していても、ベルナルが2番手通過(2秒獲得)できていれば、結局2人の獲得したボーナスタイムの差は1秒のままじゃない…?

むしろ、ナルバエスが先頭通過した事で(ベルナルが2秒ではなく1秒の獲得となった事で)、ベルナルはエヴェネプール以外のライバルとのタイム差を更に1秒広げる機会を失っただけ…?

 

フィニッシュ手前は、残り2kmを切ってから鋭角なコーナーが連続で出現する少し難しいレイアウト。

残り1.5km、ここまで積極的に動いてきたボーラのアシストが先頭に2人陣取り、この局面でも主導権を握る!

残り1km、直角コーナーでチームDSMのエーススプリンターであるマックス・カンターが無念の落車…。

幸い、後続を巻き込むような大きな落車では無かったけれども、集団は完全に分断してしまい、勝負権は前方の15人程に絞られる!

残り400m、ファン・モラノ(UAEチームエミレーツ)が意表を突く早めのアタック!

この意外な飛び出しにボーラはエースのペテル・サガンが自ら張り付き、逆にUAEはエースのフェルナンド・ガビリアがサガンの真後ろに位置取る事に成功!

残り200mを切ってモラノが力尽きると、絶好の位置でサガンがスプリントを開始!

後ろに控えるガビリアや他のライバルも全力で追いかけるけれども、サガンは前を譲らない!

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王者サガングランツールでは2年振りとなるスプリントでのステージ勝利!

流石の位置取り、流石の仕掛け所!

これが王者の貫禄か。

チームの献身に応える見事な勝利、おめでとう!

 

そして、このステージ勝利により、サガンはポイント賞争いでも首位に浮上!

ツールではもはや「指定席」状態だったこの順位を、ジロでも守り抜くことができるのか。

マリア・チクラミーノ争いも面白くなってきた!