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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2021 第11ステージ

 過酷なるトスカーナの洗礼

ジロ2週目のスタートは、トスカーナ地方の田園地帯を駆け抜ける「ストラーデ・ビアンケ風」なコースレイアウト。

レース中盤以降に登場する4か所の未舗装路区間がレースにどのような影響を与えるのか、もしかしたら総合勢でタイムを失う選手もいるのではないかと、注目を集めていたステージ。

 

この日の逃げは11人、メイン集団とのタイム差は…メイン集団をコントロールするイネオス・グレナディアーズがステージ勝利は全く眼中に入れないようなペーシングをしたので、なんと最大で14分以上にまで広がる。

逃げとメイン集団で「別のレース」が行われる展開の中、序盤は平穏な雰囲気でレースが進行していく。

 

残り70km、メイン集団が長さ9.1kmの最初の未舗装路に突入すると、レースは一気に動き出す。

集団を「破壊」するために、イネオスがフィリッポ・ガンナによる強烈な牽引を開始!

世界一の牽引力を有するガンナの牽引で、集団はあっという間に分断される事に。

レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)、アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)、ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)、サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)、ダニエル・マーティンイスラエル・スタートアップネーション)、ダヴィデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ)といった、結構な数の総合上位陣が置き去りにされるという、いきなり大荒れの展開に!

この遅れたグループは、残り52km地点から始まる2つ目の未舗装路区間に突入する前になんとかメイン集団に合流するけれども、ダニエル・マーティンとフォルモロの姿はそこにはなく、総合争いから脱落してしまった…。

2つ目の未舗装路区間は、途中に勾配16%の激坂があるという事で大きな勝負所かと思っていたけれども、トビアス・フォスとジョージ・ベネットというチーム・ユンボ・ヴィスマの2人が一時的に飛び出した以外には、大きな動きはなく通過していく。

 

残り26kmから始まる3つ目の未舗装路区間で、またもやイネオスが攻撃を開始。

ジョナタン・ナルバエスとジャンニ・モスコンの強烈な牽引で集団のペースが上がると、なんと総合2位のエヴェネプールが力なく失速していく…!

この好機をイネオスは逃さず、総合リーダーのエガン・ベルナル自らも牽引を行うという執拗な攻撃を見せると、集団から脱落したエヴェネプールとのタイム差は一気に1分にまで広がる!

ジョアン・アルメイダがタイム差拡大を食い止めようとエヴェネプールを引っ張るけれども、集団復帰はとても望めない、「いかにタイムロスを最小限に抑えられるか」という厳しい戦いに。

好調に見えた「神童」エヴェネプールの快進撃、この後のステージに控える厳しい山岳ではなく、ここで勢いを失うとは…。

 

一方の先頭集団は、4つ目の未舗装路区間直後に登場する3級山岳で、アレッサンドロ・コーヴィ(UAE)とマウロ・シュミット(チーム・クベカ・アソス)の2人が抜け出し、この2人でステージ勝利を争う事に。

風情のある市街地の石畳を抜け、最終コーナーを曲がって残り150m。

登りスプリントで先に仕掛けたのはシュミット!

コービーもしっかりと反応して横に並びかけるけれども、シュミットが驚異の粘り脚を見せてコービーを突き放していく!

最後はコービーが諦める程の差を付けて、シュミットが渾身のガッツポーズを見せながらフィニッシュ!!

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プロ1年目のシュミット、グランツールの大舞台で見事なプロ初勝利!!

恥ずかしながらシュミットの事は全然知らなかったけれども、元々シクロクロスとマウンテンバイク出身で「グラベル(未舗装路)レースが大好き」との事。

そりゃ、この日のステージは強い訳だ。

またまたスイスから現れた期待の若手に今後も注目!

 

先頭でのステージ勝利争いと前後して、メイン集団でも3級山岳で更なる動きが起こる。

エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)がアタックを仕掛けて先行、そしてヴィンチェンツォ・ニバリとジュリオ・チッコーネのトレック・セガフレードのコンビや、マルク・ソレル(モビスター・チーム)が遅れていく。

そこから集団の中で違いを見せつけたのはやはりこの男、ピンク色のジャージを身に纏うベルナル。

単身でブッフマンに軽々と追いつき、ブッフマンと2人で協調してフィニッシュ手前までやってくると、最後はスプリントでブッフマンを3秒も離してフィニッシュ!

ベルナルを基準として、ウラソフやサイモン・イェーツは約20秒遅れ、チッコーネは1分47秒遅れでフィニッシュ地点へやってくる。

そして後方に取り残されていたエヴェネプールは2分8秒遅れて、総合2位から一気に総合7位に転落と、総合勢の明暗がはっきりと分かれる結果に。

 

ただ、総合争いの「山場」はまだこの先に控えている。

まずは第14ステージ、これまでも数々の名勝負が繰り広げられてきた「ゾンコラン」が待ち構えている。

ここまで絶好調のベルナルが更に突き放すのか、明らかに抑え気味に走っているサイモン・イェーツが牙をむくのか、それともウラソフやチッコーネが化けるのか、はたまたエヴェネプールの逆襲はあるのか。

今から楽しみで仕方がない!