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ツール・ド・フランス2021 今年も素人目線で予想をしてみよう!

ツールが夏に帰ってきた!

ロードレース界最大のイベント、ツール・ド・フランスの開幕が迫ってきました!

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やはりツールはイメージカラー的に、ひまわりの咲くこの季節が似合いますね!

昨年は色々と「時代の変化」を意識させられるような結果となりましたが、果たして今年はどうなるでしょうか?

今年も素人目線で予想をしてみます!

 

総合争い ~「3強」の力関係は?~

昨年はタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツの歴史に残るような大逆転劇というドラマティックな展開でしたが、ポガチャルが連覇を果たすのか、それとも雪辱に燃えるプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)イネオス・グレナディアーズが意地を見せるのでしょうか。

「3強」の強みがそれぞれ微妙に異なる事もあってなかなか予想が難しいところですが、自分なりに考えた結果がこちらです。

 

本命:プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

対抗:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

穴:ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ

大穴:テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ

 

色々とツッコミどころはあるかもしれませんが、とりあえず理由を書いていきます。

 

本命:ログリッチの強み

正直なところ、ポガチャルとどちらを本命にするかは最後の最後まで悩みました。

そんな状況でログリッチを本命に選択した大きな要因は、「レイアウトへの適正」「不安要素の少なさ」です。

 

まず、個人TTの距離が長い(そして平坦な)今年のツールのコースプロフィールは、今さら言うまでもなくログリッチにかなり向いています。

そして、山頂フィニッシュではなく「ダウンヒルを経てのフィニッシュ」が多い事も、ダウンヒル巧者のログリッチにはかなりの追い風でしょう。

そしてエースのログリッチを支えるチーム力も、相変わらず高いレベルにあります。

あまり難しく考えず、素直に「強みを発揮できるかどうか」という観点で考えると、今年のツールはやはりログリッチが強いだろうと感じました。

 

もちろん、全く不安要素が無い訳ではありません。

最強山岳アシストであるセップ・クスの不振、こちらも昨年大活躍したアシストのワウト・ファンアールトのコンディション、そしてツールというかイエロージャージにとことん縁がないログリッチのジンクス…。

ただ、もしクスとファンアールトが昨年ほどスーパーな働きを見せなかったとしても、大きな問題はないと思っています。

相変わらず最高の平坦牽引役であるトニー・マルティン、エース級の実力を持つステフェン・クライスヴァイク、急成長を遂げたヨナス・ヴィンゲゴー、安定感に定評のあるベテランのロベルト・ヘーシンクと、かなり良いメンバーが揃っていますので、そのチーム力はイネオスに次ぐレベルにあると言っていいでしょう。

 

そして「ジンクス」に関しては、個人的には無視していいと思っています。

こういった類のものは、結果を見て「後付けでジンクスと騒いでいる」のであって、「ジンクスのせいで勝てない」という事ではないと考えるべきでしょう。

そんな根拠のない要素を当てにするより、これまでのリザルトを頼った方がいい予想ができるはずです。

 

正直に告白すると、「昨年悲劇的な負け方をしたから、今年は勝ってほしい」という願望も少し入っていますが…その部分を抜きにしても本命に推すのに全く不足はないと思いますので、ログリッチを本命とします!

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対抗:ポガチャルの強さ

昨年の覇者ポガチャルを対抗としましたが、苦渋の決断というか…当たり前ですけどポガチャルは恐ろしく強いです。

プロトンでも随一の登坂力、TTスペシャリストにかなり近い(というかほとんど変わらない)レベルのTT能力、終盤の方が強さを増すように感じるほどの回復力、そして冷静さを保つメンタリティーと、22歳にしてグランツールで総合争いをするための全ての能力を持っていると言っていいでしょう。

今シーズンも、UAEツアー、ティレーノ~アドレアティコ、ツアー・オブ・スロベニアと、3つのステージレースで圧倒的な力量の差を見せつけて総合優勝しています。

 

実力・調子・安定感と揃っているポガチャルですが、唯一にして最大の不安はチーム力でしょう。

昨年はユンボが「ログリッチを守るためのプロトン支配」を行った結果、圧倒的な登坂力を持つポガチャルとしては「自分に向けての攻撃が飛んでこない」ような状況だったと思います(例外は第7ステージの横風分断と、第17ステージぐらいでしょうか)。

しかし、今年のユンボは間違いなく「ポガチャルを蹴落とすための攻撃」を仕掛けてくるでしょうし、チーム力で優位に立つイネオスも同様に総力を挙げてライバルを攻撃する事が予想されます。

そうなると、さすがにポガチャル個人の力では対応に限界があるので、チーム力で守る事になりますが…UAEのアシスト陣がそれに対応できるのかは、正直に言ってかなり不安があります。

ダヴィ・デラクルスとラファウ・マイカは今シーズン調子がイマイチですし(そうでなくともユンボとイネオスのアシストに比べると見劣りします…)、ダヴィデ・フォルモロは若干パンチャー寄りのクライマーな気もするので勝負所まで残るのは厳しそうです。

メキメキと実力を伸ばしているブランドン・マクナルティも、TT型オールラウンダーなので登坂力はまだまだ信頼できないでしょう。

 

昨年と違う状況の中で勝負所でチーム力の違いが響いてしまう可能性は高いですが、それでも抜きん出た個の力を有していると考えて、ディフェンディングチャンピオンのポガチャルを対抗として挙げます。

まぁ、ポガチャルは素人の考える「不安」なんか全て跳ねのけそうな気もしてきますが、一応予想に順列を付けなければいけないので…。

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対抗:トーマス、そしてイネオスの力

復活を期するトーマス、というかイネオスの最大の強みは間違いなくチーム力でしょう。

トーマスだけでなく、ゲイガンハート、リチャル・カラパスというグランツール覇者が3人もメンバー入りしているのは、もはや意味が分からないレベルです。

脇を支えるメンバーも、昨年ツール総合3位のリッチー・ポート(展開次第ではもしかしたらエース昇格も…?)を筆頭に、ミハウ・クフィアトコフスキ、ジョナタン・カストロビエホ、ディラン・ファンバーレ、ルーク・ロウと、お馴染みの超強力布陣を揃えてきました。

まぁ、強力すぎて「誰を本命のエースとするのか」という問題はありますが、チームの総合力では間違いなくナンバーワンでしょう。

 

肝心のエースであるトーマスの調子も、ヴォルタ・ア・カタルーニャ総合3位、ツール・ド・ロマンディ総合優勝、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合3位と、仕上がりは上々のように見えます。

平坦な個人TTでもログリッチに大きな遅れは取らない(というか調子次第では対等に渡り合える?)でしょうし、登坂力もツールを制した2018年レベルの力を発揮できれば全く問題はないでしょう。

 

2人以上のエース級の選手を総合上位に残しつつ、勝負所ではチーム総力を挙げて攻撃を仕掛けるような展開になれば、ポガチャルやログリッチからタイムを奪う可能性は充分見出せます。

最強のチーム力を従えた経験豊富なエースとして、トーマスを穴枠とします。

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大穴:ゲイガンハートのポテンシャル

ポガチャル、ログリッチ、イネオス勢の「3強」からタイムを奪える選手がいるのかどうかを考えたときに、正直なところ「いない」というのが自分の結論です。

そうすると、必然的にこの「大穴」はイネオスのトーマス以外のエースから選ぶ事になります。

 

候補はゲイガンハート、カラパス、そして一応ポートの3人。

最も若いゲイガンハートは3週間エースとして戦い続けた経験に乏しい(昨年のジロ制覇も、最初はトーマスのアシスト)ですが、2人と比べるとパンチ力があるため、色々な局面でタイム差を稼ぐには有利かもしれません。

純粋な登坂力ならカラパスが少しリードしていそうですが、逆にTT能力では他の2人に劣りそうです。

経験値ではポートが圧倒的ですが、今回はアシストに徹すると明言しています(実際にどうなるかは微妙な気もしますが…)。

 

とりあえず「アシスト宣言」をしているポートを除外して、ゲイガンハートとカラパスのどちらが先にタイムを失う可能性があるのかを考えてみると、第5ステージの個人TTでカラパスがタイムを少し失う可能性は高そうです。

そのため、ゲイガンハートを大穴として挙げます。

ただ、1週目から第8・第9ステージと厳しい山岳も登場して、多少の遅れならカラパスがそこで取り戻す可能性も充分あるので、まぁ割と何とも言えないところな気もしていますが…。

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その他有力候補

繰り返しになりますが、その他の選手はチャンスがかなり少ないとは思っています。

それでも、総合優勝や総合表彰台を目指して奮闘を見せてくれるであろう注目選手を数人挙げてみます。

 

・エンリク・マス(モビスター・チーム)

 「トリプルエース」でお馴染みのモビスターですが、エース級の選手をマス、アレハンドロ・バルベルデ、ミゲルアンヘル・ロペス、マルク・ソレルと、なんと4人も投入してきました。

流石に「クアドラプルエース」という事はないと思いますが、エース級の選手をアシストとして上手く運用できれば(そこが難しいというか、過去の事例では上手くいっていませんが…)強力だとは思います。

個人的には、4人の中で最もTT能力がありつつ、登坂力もロペスに次ぐ2番手だと思うマスに頑張って欲しいところです。

 

・ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)

ボーラに移籍してのツール参戦となるケルデルマンですが、ボーラはペテル・サガンでのポイント賞獲得を狙うチームであるため、山岳アシストが少ないのはかなりの痛手です。

TT能力に長けているので個人TTではあまりタイムを失わないかもしれませんが、山岳で「3強」からタイムを奪うだけの登坂力やチーム力があるかと問われると、正直言って厳しいところでしょう。

それでも、念願のツール総合エースとしてどのような走りを見せてくれるか注目しています。

 

・リゴベルト・ウラン(EFエデユケーション・NIPPO

過去にグランツール総合トップ10入りが8回、表彰台も3度経験しているウランですが、ここ3年間はグランツールの表彰台に登る事が出来ていません。

ただ、昨年のツールでも総合8位、今年のツール・ド・スイスでは山岳TTで驚きのステージ勝利を飾って総合2位と、まだその力が衰えた訳ではありません。

セルヒオ・イギータやニールソン・ポーレスといった登れる若手を従えて、どれだけ力を発揮してくれるか楽しみにしています。

 

ポイント賞争い ~2人の王者に割って入るのは?~

昨年はサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップが遂にペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)のポイント賞獲得を阻止しましたが、 サガンが定位置へと返り咲くのか、それともベネットを筆頭としたライバルが栄冠を掴み取るのか、こちらも総合争いと同じくかなり注目です。

…と思っていたら、ベネットは膝の故障による調整の遅れで、残念ながらツール不参加となってしまいました…。

急転直下の展開に色々な選手の名前が浮かぶ中、自分の予想がこちらです。

 

本命:カレブ・ユアン(ロット・スーダル)

対抗:アルノー・デマール(グルパマFDJ)

穴:ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

大穴:マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)

 

こちらも総合同様になかなかツッコミどころがありますが、しっかり理由を書いていきます。

 

本命:ユアンの爆発力

誰にも止められない抜群の加速力で現役最強のスプリンターの1人と目されているユアンは、 まず間違いなく今回のツールでもステージ勝利を飾ると思っています。

ただ、1つのステージで複数回踏み込むことが苦手なように見える事や、過去のレースでも中間スプリントポイントにあまり興味を示さなかった事から、ユアンはポイント賞にそこまで意欲を見せないと、当初は考えていました。

 

しかし、状況が変わりました。

最大のライバルと言えるベネットが欠場する訳ですから、3ステージぐらい(もしかしたらもっと多く?)普通に勝つ可能性があります。

ちなみに、2019年にステージ3勝した際にはポイント賞ランキングで2位となっています。

「今年も3勝は堅いと考えるなら、ポイント賞も2位以上は堅い」という理屈はさすがに強引すぎますが、勝てば勝つほどポイント賞獲得が近づくのは事実です。

 

そして、ベネット不在の中で序盤から勝利を重ねて大差でマイヨヴェールをキープしていた場合、さすがにジャージを守りるためにポイントを稼ぎに行くでしょう。

中間スプリントであまり稼がない可能性が高い事に一抹の不安はありますが、圧倒的なスプリント力で序盤からステージ勝利を重ねてポイントをかなり稼ぐと想定して、ユアンを本命にします。

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対抗:デマールの調子は?

昨年ジロのポイント賞を獲得したデマールは、個の力とチーム力をバランスよく兼ね備えています

スプリンターとしては比較的登れるタイプでありながら、昨年ジロの集団スプリントでは4戦全勝と言う爆発力があるのが魅力です。

 

今シーズン序盤はなかなか勝ちきれずに苦しむ姿も目立ちましたが、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナではカレブ・ユアン(ロット・スーダル)を降してステージ2勝と、復調の兆しは見えてきています。

今回のツールにもジャコポ・グアルニエールとマイルズ・スコットソンというお馴染みのメンバーを連れてきているので、トレインの力も充分と言っていいでしょう。

 

正直なところ、ユアンとデマールのどちらを本命にするかかなり迷いましたが、ベネットがいなくなった事による「上積み」が大きいのはステージを狙える力が強いユアンだと判断しました。

「ポイント賞争いで上位に来る可能性が高い」ならデマールだと思いますが、「最上位に立つ可能性が高い」のはユアン、といった感じです。

という事で、しっかり調子が上がっていればステージ勝利を狙え、そして中間スプリントでもある程度以上稼げる安定した存在として、デマールを穴枠で挙げます。

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穴:サガンはどこで稼ぐか

これまでツールを完走すれば必ず手に入れていたマイヨヴェールを、昨年初めて獲得できなかったサガンですが、それでもやはり有力候補の1人である事は間違いないでしょう。

純粋なスプリント力ではピュアスプリンターに太刀打ちできない場面が目立つようにはなってきましたが、その抜群のポジショニングと勝負勘、そして並のスプリンターとは一線を画する登坂力は未だに健在です。

 

今シーズン開始前に新型コロナウイルスに感染してしまい心配もされましたが、レースを重ねて調子を上げていき、昨年に続いてジロ・デ・イタリアに出場しました。

そして、しっかりとスプリントで1勝した上で、昨年は逃したジロのポイント賞を獲得を獲得と、調子は上々です。

 

今ツールは昨年同様に中間スプリントポイントが山岳より手前に配置されているステージが多く、そこでのポイント稼ぎには苦戦するかもしれません。

ただ、昨年から少し起伏のあるステージでチーム一丸となってペースを上げ、ピュアスプリンターを振るい落とす作戦を多用していて、ジロではこれが成功した事がステージ勝利とポイント賞獲得に繋がりました。

ダニエル・オス、ニルス・ポリッツ、ルーカス・ペストルベルガーと優秀な牽引役を連れてきているので、今ツールでもその作戦を仕掛ける可能性は高いでしょう。

王者の反撃に期待して、サガンを穴に推します。

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大穴:ファンデルプールはどんな形で暴れ回るか

スプリンターではありませんが、大穴として「怪物」ファンデルプールを挙げてみます。

皆さんご存知のように、シクロクロス界から殴り込んできたこの規格外の怪物は、プロトンでもトップクラスのとんでもない出力を出す事ができます。

そしてその高い出力を継続する能力は常軌を逸したレベルにあり、これまでも数々の度肝を抜くような勝ち方を見せてくれました。

アムステル・ゴールドレースでの単独牽きからのスプリント、長年のライバルであるファンアールトとの激戦を制したロンド・ファン・フラーンデレン、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク)を激坂で突き放したストラーデ・ビアンケなど、様々なパターンの衝撃的な勝利を飾っています。

 

今回のツールで平坦ステージでのピュアスプリントに参加するかは不透明(というか、スプリントには参加しない可能性が高い?)ですが、起伏のある丘陵ステージなどではその能力が猛威を振るう可能性があります。

平坦ステージでも、小さめの起伏などで早掛けをしかけて独走なんてパターンを見せるかもしれません。

また、多少の登りぐらいなら難なくこなすので、本人にその気があれば中間スプリントポイントでも稼げるでしょう。

要するに、ポイントを稼ごうと思えばいくらでも荒稼ぎができるはずです。

 

ツール後に控える東京オリンピック(マウンテンバイクで出場)のために途中でリタイア、もしくはどこかでセーブをする可能性も否定できませんが、怪物の怪物っぷりに期待して、ファンデルプールを大穴とします。

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その他有力候補

上記の4人以外にも実力・実績共に十分な有力選手が多数いるので、紹介していきたいと思います。

 

・ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス

ワンデーレースやサバイバルな展開のステージに強いコルブレッリは、直近のクリテリウム・デュ・ドーフィネでステージ1勝とポイント賞獲得、そしてイタリア国内選手権でも優勝と、絶好調の状態でツールに臨みます。

また、チームもここまでジロ2勝を含む16勝と、かなり結果を残しています。

過去出場したツールではステージ最高位は2位、そしてポイント賞最高位は4位とあと一歩のところまで来ているので、チームと共に上手く勢いに乗れば過去最高のリザルトを手に入れる事も出来るかもしれません。

 

・マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)

昨年のツールではまさかの出場メンバー外という屈辱を味わったマシューズは、古巣チームに復帰しての出場になります。

今シーズンはここまで結果を残せていませんが、そのスプリンターらしからぬ登坂力はやはり抜きんでていますし、2017年にはマイヨヴェールを獲得したように過去の実績も充分です。

非常に似た脚質のサガンと言う強力なライバルはいますが、奮闘に期待しています。

 

マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ

ドゥクーニンクがサム・ベネットの代わりに選出したのは、なんとツールのステージ通算30勝を誇るレジェンド、カヴェンディッシュでした。

ここ数年は不振でかなり苦しみ、流石に全盛期のような活躍は期待できないと思いますが、ミケル・モルコフのリードアウトと組み合わされば、ステージ勝利は決して不可能ではありません。

決してポイント賞の候補と言う訳ではありませんが、注目したいと思います。

 

山岳賞争い ~総合勢か、伏兵か~

山岳賞狙いの選手はもちろん、総合勢が上位に来る可能性も高い山岳賞の予想は、昨年も言いましたがかなり難しいです…。

それでも、難しい事に挑むからこそ面白いという事で(?)、もちろんしっかり予想していきます。

 

本命:サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)

対抗:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

穴:ピエール・ラトゥール(チーム・トタルエナジーズ)

大穴:ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン

 

全く当てにならない予想の根拠を、一応書いていきますよ。

 

本命:サイモンは何を狙うのか

先月のジロで総合3位に入賞したサイモン・イエーツですが、今回のツールでは総合を狙わない事を明言しています。

ステージ狙いに絞れば、2019年のツールでも2勝をしたようにその爆発力は遺憾なく発揮されるでしょうし、その結果として山岳ポイントを稼ぐ可能性はかなりあると思います。

一つ大きな懸念は、東京オリンピックのイギリス代表メンバーに選ばれた事により、展開次第では途中リタイアの可能性もありそうな点ですが…。

もし山岳賞ジャージを着用した状態ならさすがにリタイアはしないと思うので、山岳賞に狙いを絞ればかなりの確率で獲れるであろうサイモン・イェーツを本命とします。

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対抗:ポガチャルはどこまで積極的に動くか

昨年総合優勝をしたポガチャルは、ステージ3勝を挙げる積極的な走りを見せた結果、山岳賞も獲得しました。

今年も同様に山岳ステージで攻めの走りを見せた場合、山頂を先頭で通過して山岳ポイントを大量に稼ぐ可能性は充分あるでしょう。

 

もちろん、厳しくマークされる中でそう易々と先頭で通過できるかは疑問もありますが、総合上位勢で最も積極的な走りを見せそうなのは誰かと問われたら、やはりポガチャルな気がします。

圧倒的な能力の高さ、そして積極性と昨年の実績を評価して、ポガチャルを対抗に推します。

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穴:ラトゥールはプロチームへの移籍がどう出るか

昨年まではAG2Rでロマン・バルデ(現チームDSM)に次ぐ総合エース候補だったラトゥールは、今シーズンからプロチームのトタルに所属しています。

過去にはブエルタ・ア・エスパーニャの超級山岳フィニッシュで勝利を飾ったり、ツールでもヤングライダー賞に輝くなど、その登坂力はかなりのものです。

 

ただ、総合上位陣に割って入れるかと言うと、チーム力の問題もあってかなり微妙な気もしますので、途中から狙いを山岳賞へと切り替える可能性は充分にあると思います。

また、地元フランスのチームとしては何かしらの大きなリザルトが欲しいところでしょう。

チーム状況と本人のポテンシャルを考慮して、ラトゥールを穴枠で選出します。

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大穴:オコーナー…というかAG2Rは何を狙ってくるか

昨年まではツール総合を狙う絶対的なエースであるロマン・バルデがいたAG2Rですが、今年は絶対的なエースと呼べる存在がいないメンバーでツールに臨みます。

ただ、それでも期待感のあるメンバーと言うか、逃げてのステージ勝利狙いでひと暴れできそうな、面白い選手選考だと感じています。

 

そんな中で、「積極的に逃げて山岳ポイントを稼ぎそうな選手」として、ベン・オコーナーとオレリアン・パレパントルが挙げられると思います。

2人とも期待のクライマーなのでどちらを候補にするかはかなり迷いましたが、ツール・ド・ロマンディクリテリウム・デュ・ドーフィネと連続で総合トップ10に入ったオコーナーを大穴として選びます。

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その他有力候補

山岳賞は候補を挙げようと思えばいくらでも挙げられる気もしますが…「4枠」以外で個人的に気になる選手を挙げていきます。

 

・オマール・フライレ(アスタナ・プレミアテック)

今回は総合を狙わない予定のアスタナから、エース格のヤコブ・フルサン…と最初は考えたのですが、フルサンの今シーズンの最大の目標は東京オリンピックなので、途中でリタイアをする可能性がありそうです。

フルサンの他にもフライレ、ヨン・イサギレ、アレクセイ・ルツェンコと良いメンバーを揃えているアスタナですが純粋な登坂力、そしてスペイン国内選手権を制した勢いを買って、フライレを候補として挙げてみます。

 

・ピエール・ローラン(B&Bホテルズ P/B KTM

2011年のツールでヤングラダー賞、2013年には山岳賞ランキング3位に入ったローランは、昨年のツールでも山岳ステージで積極的な逃げを見せていました。

直近のクリテリウム・デュ・ドーフィネでもやはり山岳ステージで逃げていて、今年のツールも逃げてのステージ勝利を狙ってくることが予想されるので、山岳賞ポイントも自然と積み重ねる可能性は高いでしょう。

 

・ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター・チーム)

どう考えてもチームの目標は総合争いですが、長く平坦な個人TTがあるために総合上位進出がどうしても厳しくなるロペスは、チャンスがあれば山岳賞を狙って欲しい選手の1人です。

ただ、エース(もしくは山岳アシスト筆頭)のロペスが山岳賞を狙うという事は、「チームとして総合争いを諦めた」というシチュエーションではあるため、あまり可能性はない気もしますが、期待も込めてという事で…。

 

ヤングライダー賞争い ~揺るがない本命~

え~と、今回のツールでヤングライダー賞争いの予想をやる必要って、正直言ってあまり無いですよね…。

まぁでも、一応4枠予想はこんな感じです。

 

本命:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

対抗:ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)

穴:ルーカス・ハミルトン(チーム・バイクエクスチェンジ)

大穴:セルヒオ・イギータ(EFエデユケーション・NIPPO

 

何というか、既にポガチャルについて書く内容があまり残っていないんですが…。

 

本命:ほぼ100%ポガチャルで決まり

自分以外の方も思っているでしょうから、率直に書きます。

落車でリタイアなどをしない限り、間違いなくポガチャルがヤングライダー賞を獲得するでしょう。

あまり「間違いなく」とか「100%」と言い切るのは好きでは無いのですが、今回ばかりはこう書かざるを得ません。

何せ、ディフェンディングチャンピオンであり、もちろん総合争いの大本命の1人な訳で…。

万全の状態のエガン・ベルナル(イネオス)が出場していたらポガチャルと競い合えるとは思いますが(ただ、今回のツールのプロフィールではベルナルはかなり厳しいですが…)、「総合優勝を本気で狙える25歳以下の選手」なんて、そうそういないですよ。

という訳で、揺るぎようのない大本命としてポガチャル以外の選択肢はありません。

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対抗:「新たなフランスの星」であるゴデュはどこまで頑張れるか

2016年のツール・ド・ラブニール総合優勝者であるゴデュは、初めて総合エースとしてツールを走ります。

昨年のブエルタでステージ2勝を挙げて総合8位に入ったように、その登坂力が一級品であることは既に証明済みです。

今シーズンも、イツリア・バスクカントリーでステージ1勝、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュで3位入賞と、やはりよく登れています。

 

チームはデマールでのスプリントに力を注ぐ体制なので山岳アシストにはあまり期待できませんが、あまりプレッシャーが掛からなそうなのはポジティブな要素かもしれません。

登坂力と実績、そして自由に走れるチーム体制から、ゴデュを対抗として選出します。

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穴:ハミルトンの実力は如何ほどか

バイクエクスチェンジにはサイモン・イェーツという実績十分の総合エース格の選手がいますが、前述の通りサイモン・イェーツは直後に控える東京オリンピックへの調整のために、今回のツールでは総合を狙わない予定です。

そこで、チームとしては次世代のエース候補であるハミルトンにある程度の自由を与えるプランがあるようです。

 

これまでグランツール出場歴はジロに2回(2019・2020)のみですが、2019年にはサイモン・イェーツのアシストをしながら自身も総合25位と、悪くない走りを見せていました。

そして、今シーズンのハミルトンは、パリ~ニース総合4位、イツリア・バスクカントリー総合10位、ツール・ド・ロマンディ総合8位と、ワールドツアーのステージレースで好成績を残し続けています。

この好調を維持したままツールを走り続ける事ができれば、総合トップ10入りも決して不可能ではないでしょう。

そのポテンシャルと好調っぷりに期待して、ハミルトンを穴に推します。

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大穴:イギータは殻を破れるか

ウランのアシストを務めるイギータは、まだ23歳ながらかなりの実力と実績を誇る選手です。

ブエルタでステージ1勝、ツアー・オブ・カリフォルニア総合2位、パリ~ニース総合3位、ツール・ド・ポローニュ総合4位と、既に総合系選手としてかなりの力があると言っていいでしょう。

 

これまでグランツールで総合エースを務める機会は無く、今回もウランのアシストが「第一任務」だとは思いますが、もしエースとして走ったら普通に総合トップ10に入る可能性は充分にあると思います。

ウランと共に総合上位をキープできたりしたら、レースをかき回す「台風の目」となれるだけのポテンシャルがあるはずです。

アシストとして早々にタイムを失う可能性も高いですが、展開次第では上位を窺える存在としてイギータを大穴としてチョイスします。

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その他有力候補

ポガチャルがいるせいで、「ヤングライダー賞候補」と言うよりは「注目の若手総合系選手」を列挙する感じになりますね…。

 

・ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ

アメリカから現れた、期待のTT型オールラウンダーのマクナルティ。

まだ登坂力に少し不安がある事と、ポガチャルのアシストとして働く事で総合順位にはあまり期待できないかもしれませんが、山岳でどれだけ働けるかはかなり注目です。

 

・ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン

山岳賞でも大穴に挙げたオコーナーは、そこでも触れたようにツール・ド・ロマンディで総合6位に、クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合8位に入っています。

3週間のグランツールでどのように戦うかは分かりませんが、総合成績を狙いに来る可能性もそれなりにありそうです。

 

・ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

総合優勝を狙うログリッチのアシストとして、まず間違いなく自身の総合成績は狙いに行きませんが、ヴィンゲゴーのポテンシャルはかなりのものです。

イツリア・バスクカントリーではログリッチのアシストをこなしながら総合2位というまさかの結果を残しましたが、ツールの厳しい山岳でどこまで残って仕事ができるか、総合争いを占う上でも大注目の存在です。

 

3週間の激闘に期待!

さあ、いよいよツールが開幕します!

今年のジロは選手の「物語」が際立つような濃厚な展開でしたが、果たしてツールではどのようなレースが繰り広げられるのか、期待感に早くもテンションが上がってきました!

ポガチャル、ログリッチ、イネオス勢による三つ巴の総合争いも、サム・ベネット不在によってレース前から混沌としているポイント賞争いも、本当に目が離せません!

燃え盛るような真夏の3週間の激闘を、思いっきり楽しんでいきましょう!!

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・おまけと言うか、書き上げたけどボツになってしまった文章の供養

サム・ベネットが出場する前提で書き進めていた「本命:サム・ベネットの文章を、そのまま消してしまうのは悲しいので載せておきます。

 

本命:ベネットの安定感

昨年のポイント賞を獲得したベネットは、やはりその安定感では頭一つ抜けた存在です。

本人の様々な局面に適応する能力もそうですが、ドゥクーニンクのチーム力、特にミケル・モルコフのリードアウト能力のおかげで、スプリントステージではまず間違いなく優勝争いに絡んできます。

また、そのチーム力は中間スプリントポイント稼ぎの際にも遺憾なく発揮され、昨年のツールではベネット→モルコフ→サガンの順番で中間スプリントを通過するケースが多々ありました。

そうやって常にポイントを稼ぐ安定感だけでなく、昨年のツールでステージ2勝したように、モルコフによる抜群のリードアウトからスプリントで勝ち切る力もあります。

 

今シーズンもここまで、UAEツアーとパリ~ニースでそれぞれステージ2勝、オキシクリーンクラシック・ブルッヘ~デ・パンネで優勝と、大事なレースでしっかりと勝ってきています。

その後少し膝を痛めたようですが、ツールまでにしっかり回復させてきたようで、コンディションも問題ないでしょう。

安定感と勝ち切る力を併せ持ったディフェンディングチャンピオンとして、ベネットを本命とします。