初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【レース感想】ツール・ド・フランス2021 第21ステージ

シャンゼリゼの祝福を浴びるのは

遂に、レースは最終目的地であるシャンゼリゼ通りへ向かう。

思い返せば、ここまで様々な出来事があった。

波乱の幕開け、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)の「怪物」っぷり、有力選手の相次ぐ離脱、マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ)の復活と快進撃、そしてタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の総合独走…。

ここには書き切れなぐらい本当に色々な瞬間に、興奮して、驚いて、感動して、時には悲しんで…、とにかく感情を揺さぶられる日々が続いていたけれども、それもここで一旦終わってしまう。

もちろん、終わりがあるからこそ次があり、終わりがあるからこそ素晴らしいものになるのは理解しているけれども、それでもこのツール最終日というのは…何とも表現が難しい喪失感に襲われてしまう。

 

そんな自分の感傷的な独り言は置いておくとして…、何はともあれツール・ド・フランス2021最終ステージ、シャンゼリゼを目指した「パレード」がスタート!!

 

まずは、総合優勝を果たしたポガチャルとUAEチームエミレーツの選手達が歓喜ウィニングランと記念撮影!

開幕前は「チーム力が不安」なんて言われていた(自分もちらっと予想で触れていた…)UAEは、ライバルチームが落車などの影響で大きく力を失っていたとは言え、実績も経験も豊富なラファウ・マイカを中心にしっかりとポガチャルをサポート。

最後まで8人全員が残った事、そしてその中でそれぞれが自分の仕事をしっかり全うできたからこそのポガチャルの総合優勝だったのは、揺ぎ無い事実だと思う。

 

続いて、ポガチャルを中心にスロベニア出身のマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)とルカ・メスゲッツ(チーム・バイクエクスチェンジ)が前方へ。

そして、落車でリタイアしたプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)のゼッケンをカメラに向かって掲げる。

人口200万人の小国ながら強豪国であるスロベニアの絆、そしてログリッチへの多大なリスペクト。

これは本当にいいシーンだ…。

 

長い旅路が終わりに近づいていると感じさせてくれる美しいパレード走行を経て、シャンゼリゼの周回コースに入るといよいよレースが動き出す!

果敢に逃げるのはハリー・スウィーニー(ロット・スーダル)、シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO)、カスパー・ピーダスン(チームDSM)という、今大会勝利を上げられていないチームの若手3人。

ドゥクーニンク・クイックステップ以外のスプリンターチームはかなり力を失っているから、シャンゼリゼの逃げがどうコントロールされるか気になっていたけれども、タイム差はしっかり30秒以内にキープされている。

 

中間スプリントポイントでは、最終日ながらメイン集団で先着争いが発生。

相変わらずミケル・モルコフ(ドゥクーニンク)の素晴らしいリードアウトに導かれたカヴェンディッシュが集団の先頭で通過に成功!

カヴェンディッシュはマイヨヴェール獲得はほぼ確実な状況、あとはスプリントで「エディ・メルクス越え」の35勝目を飾れるか!

 

一旦逃げが吸収されて、そこからまた数人がパラパラと飛び出すけれども、やはりあまりタイム差は許してもらえない。

最終周回に入ると逃げはすべて捕まえられて、いよいよ最後の集団スプリントに向かっていく!

 

ドゥクーニンクを中心としたスプリントチームが主導権を握ろうと必死になる中、既にスプリンターのいないボーラ・ハンスグローエが牽引を見せるなど割と混乱した展開が続く。

それでも残り5kmを切ると、アルペシンが集団を牽引、そしてドゥクーニンクがジュリアン・アラフィリップを先頭に猛然と前に出てきて体制を整える。

途中までは集団の中ほどへ位置を下げていたカヴェンディッシュも、モルコフに牽き上げられてドゥクーニンクのトレインとしっかり連結!

さぁ、準備は整った!

 

残り3kmを切ると、ドゥクーニンクの前にはマイク・テウニッセンとワウト・ファンアールトというユンボの2人が被せてきて、更には逆サイドからコフィディスやバイクエクスチェンジやEFの選手が位置を上げてくるという、なかなかカオスな展開に!

トンネルを抜けてジャンヌダルク像の前を通過、カヴェンディッシュは少し位置を落としている!

それでもモルコフはしっかりカヴェンディッシュを引き連れて、再度前方へ上げてくるぞ!

ただ、最終コーナー付近でカヴェンディッシュは上手くトレインと連結できていない。

どうするのかと思ったら、なんとファンアールトの背中に張り付く事を選択!

そしてその横にはアルペシンのジャスパー・フィリプセンもいる!

 

残り200m、テウニッセンの全開リードアウトからファンアールトが発射!

その後方からカヴェンディッシュとフィリプセンが飛び出そうとするけれども、カヴェンディッシュはフェンス際から前に出るだけのスペースがなく、飛び出せない!!

ファンアールトを差そうとフィリプセンが猛然と加速を見せるけれども、ファンアールトの踏みも全く衰えない!!

Embed from Getty Images

ファンアールトが前日の個人TTに続いて、シャンゼリゼのスプリントを制した!!

マジでやりやがった!!

ファンアールトはベルナール・イノー以来42年振りとなる「同一ツールでの山岳ステージ・個人TTステージ・スプリントステージ制覇」という、とんでもない記録を達成!!

「脚質ファンアールト」ここに極まれり。

凄い、凄すぎるぞファンアールト!!

 

そして、ポガチャルもアシストと共に無事にフィニッシュして、総合2連覇が決定!!

Embed from Getty Images

最後の最後まで本当に強かった!!

おめでとう、ポガチャル!!

 

凄いものを見た

3週間の長きにわたる戦いもこれで終了!

という事で、改めて最終成績の確認を。

 

総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

総合2位:ヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

総合3位:リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ

ポイント賞:マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ

山岳賞:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

ヤングライダー賞:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

総合敢闘賞:フランク・ボナムール(B&Bホテルス p/b KTM

チーム総合賞:バーレーン・ヴィクトリアス

 

ポガチャルが圧巻の2年連続3冠を達成!!

ポガチャルは一分の隙も無い、まさに他を圧倒する完璧な走りを披露。

なんと、総合争いのライバルに真っ向からタイムを奪われたのは第20ステージの個人TTのみ、総合優勝が実質確定してリスクを回避しながら走った個人TTのみという恐ろしさ。

ずば抜けた登坂力、TTスペシャリストを打ち負かす独走力、最後まで崩れないタフな心身、そして貪欲にタイム差と勝利を狙う強者のメンタルと、この若き絶対王者は全てを兼ね備えている。

そして、今大会で早い段階からマイヨジョーヌをキープし続けた経験値は、ポガチャルとチームにとって更なる力になったはず。

しばらくの間はポガチャルを中心に総合争いが行われると、断言してもいいぐらいだ。

 

総合2位に入ったヴィンゲゴーは、当初はログリッチのアシストとしての出場ながら、まさかまさかの表彰台入り!

見ていた人には十分伝わっているだろうから今更言及する事ではないかもしれないけれども、その登坂力とTT能力はもちろんフロックではない!

まだプロ入り3年目の24歳、これからのさらなる成長が楽しみだ!

 

総合3位のカラパスは、これで2019年ジロ総合優勝、2020年ブエルタ総合2位に続いて3年連続のグランツール表彰台。

決して納得のいく内容では無かったかもしれないけれども、流石の実力と安定感と言ったところか。

というか、これで全グランツールの総合表彰台か。

現役選手だと…クリス・フルームイスラエル・スタートアップネーション)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)、ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)、プリモシュ・ログリッチユンボ)に続いて、6人目かな?

地味に…いや、派手に凄いな、これは。

 

ポイント賞は、復活のカヴェンディッシュ!!

10年ぶりとなるポイント賞獲得だけではなく、ステージ4勝を上げてエディ・メルクスのツール歴代最多記録の34勝に並ぶという偉業を達成!

現役生活の終着駅が近づいていると見られていた「マン島の超特急」は、35勝目という新たな目的地に向かってきっと走り出してくれる!

 

総合敢闘賞は地元フランスのプロチームであるB&Bのボナムールが受賞。

確かに「やたらアタックして逃げに乗っているな」と思っていたけれども、なんとツール全行程における逃げの約20%に乗っていたという、驚愕のデータが!

いやいや、これは普通にすごいな…。

 

チーム総合賞はバーレーン・ヴィクトリアス

総合エースのジャック・ヘイグを落車で失いながら、各選手が積極的に逃げ、更にはステージ3勝を上げる活躍を見せた結果の受賞。

今シーズンはジロでも大活躍を見せていたので、これはブエルタも期待したいところ!

 

いや~、終わってしまった。

3週間の物語が幕を閉じてしまった。

今年のツールは総合争いもポイント賞争いも、複数の有力候補が落車の影響などで早々にリタイアしてしまった影響もあって、「争い」という観点ではイマイチ盛り上がりに欠けるものだったのは正直なところ否めないとは思う。

ただ、だからといって「つまらない」ツールだったかと言うと、それは違うと断言したい。

「怪物」ファンデルプールの破壊的な走り、ドゥクーニンクの完璧なトレインと完全復活したカヴェンディッシュの爆発力、ファンアールトの異次元の万能性、そしてポガチャルの圧倒的な王者としての走り。

そのどれもが見る価値のある凄いものであり、心を揺さぶる素晴らしいものだったと、強く言いたい。

私たちは他では味わえない凄いものを見たのだ。

素晴らしい走りを見せてくれた選手達、そしてレースに携わるすべての人たちに、感謝したい。

困難な状況の中でも素晴らしいレースを届けてくれてありがとうと、感謝したい。

そして、この情熱と感動のスポーツに巡り合えた事に、本当に感謝したい。

Embed from Getty Images

 

ありがとう、ロードレース。

ポガチャルの言葉を借りれば、ロードレースは私たちを本当に「スーパーハッピー」にしてくれる素晴らしいものだと思う。

選手達が情熱の物語を紡ぎ続ける限り、この素晴らしいスポーツを応援し続けたい。