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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第5ステージ

フィリプセン、そしてアルペシンの力

前日に続き、と言うかそれ以上にオールフラットな第5ステージ。

ただし、この日も横風への警戒が必要な地域と言う事で、もしかしたら波乱もあるかもしれない。

 

この日の逃げも「アルペシン・フェニックス以外のプロチームから1人ずつ」という構成で、オイエル・ラスカノ(カハルラル・セグロスRGA)、シャビエル・アスパレン(エウスカルテル・エウスカディ)、ペラヨ・サンチェス(ブルゴスBH)の3人がファーストアタックからそのまま逃げる流れ。

メイン集団を牽引するのは総合リーダーのレイン・タラマエを抱えるアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ、そしてスプリントでの勝利を狙うドゥクーニンク・クイックステップやアルペシン・フェニックスやグルパマFDJといったチームで、逃げの3人に最大で7分以上のタイム差を与える。

 

横風が警戒される区間で、イネオス・グレナディアーズやドゥクーニンクがメイン集団の分断を図るような素振りを少し見せたりはしたけれども、他のチームの警戒度が高かった事もあってか、これは上手く決まらない。

逆に逃げ集団は、横風の影響と逃げのメンバー間に明確な力の差があった事が重なり、「アタックを仕掛けた訳では無いのに後方の選手が平地で千切れる」という珍しい現象が起こる。

まずは残り35km付近で、サンチェスが脱落。

離れていく直前に見せた、心が折れる瞬間の表情は何とも切なかった…。

続いて、残り22km辺りでアスパレンも脱落。

そして明らかに1人だけ強かったラスカノは、残り15kmぐらいまで単独で逃げてからメイン集団に吸収された。

 

スプリントに向けてメイン集団のスピードが上がり緊張感も高まる中、残り11.7kmで大規模な落車が発生してしまう…!

規模の割には選手へのダメージが少なそうな落車だったけれども、多くの選手が足止めを食ってしまい、集団は完全に分裂。

難を逃れて先行する形になった35人程の選手たちは、流石にペースを落として後続の合流を待つ形に。

第2集団がなんとか先行グループに合流して100人弱の新たな先頭集団を形成するけれども、そこから更に後ろの選手は合流が難しそうな展開になる。

そして何と、その後方集団にはマイヨロホを着用するタラマエの姿が…!

タラマエは前日に続いて落車、そしてこの日は残念ながらタイムを失う事になりそうと、マイヨロホ獲得後は受難が続く…。

タラマエのグループより更に後方には、総合争いに加わっていたロマン・バルデ(チームDSM)の姿も…。

最終的にバルデは12分以上のタイムを失ってしまい、残念ながら総合争いからは脱落する事になってしまった。

 

メイン集団は残り3kmを切り、完全にスプリント体勢に突入。

先頭で隊列を整えているのはプロチームのアルペシン。

その後方にはドゥクーニンクやUAEチームエミレーツのトレインが並び、グルパマは上手く隊列が組めない苦しい展開。

残り2km辺りでUAEが最前線に位置を押し上げてきて、グルパマもそれに付いていく形で何とかポジションを上げようと試みている。

ラウンドアバウトと緩いコーナーが続き、各チームのトレインが崩れたり千切れたりする中で、アルペシンは相変わらずいい態勢をキープしている!

残り900mの鋭角な最終コーナーを抜けて先頭はやはりアルペシンのトレイン、アシストは残り2枚と充分!

チーム・バイクエクスチェンジがポジションを上げてきた一方で、マイヨプントス着用のファビオ・ヤコブセンを抱えるドゥクーニンクはトレインが崩壊し、ヤコブセンは孤立している!

グルパマも位置を上げてくるけれども、肝心のアルノー・デマールがはぐれているぞ…。

サッシャ・モドロのリードアウトを受けて、残り200mという絶好の位置からアルペシンのエースであるジャスパー・フィリプセンがスプリントを開始!

その背中にアルベルト・ダイネーゼ(DSM)が必死で食らいつくけれども、ついていくので精一杯だ!

そして横からはトレインを失ったヤコブセンが単騎で猛然と駆け上がってくるけれども、流石にこれは間に合わない!

真っ先にスプリントを仕掛けたフィリプセンは最後まで勢いを失わない!!

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フィリプセン、完璧な仕掛けからの圧勝!!

最初に飛び出した事で一番長い時間先頭で空気抵抗を受けたはずなのに、最後まで誰も寄せ付けないその強さ!

そのフィリプセンの純粋な強さと、残り3kmから発射の瞬間までレースを支配し続けたアルペシンのチーム力が噛み合った、完璧すぎる勝ち方だった!

アルペシンはこの強さでプロチームとは…。

本当に恐ろしすぎる。

そしてフィリプセンは、1pt差でポイント賞ジャージを奪還!

ポイント賞争いも激しくなってきて、面白いぞこれは!

 

一方、マイヨロホを着ているタラマエは2分21秒遅れてのフィニッシュとなり、残念ながらリーダージャージを手放す事に。

新たに総合リーダーとなったのは、第3ステージで3位に入っていたケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)。

エリッソンドは「こんな形でマイヨロホを獲得するのは本望ではないけど、着用すること自体は素晴らしい」と、少し複雑な心境ながらもポジティブなコメント。

そしてタラマエも「このような形でジャージを失うのは残念だけど、それほど落ち込んでもいない。第3ステージでの勝利と、この2日マイヨロホを着用していた事を振り返ると、自然と笑顔になれるから」とかなり前向きなコメントを残してくれた。

見ている側としては、もちろん落車は見たくないし、トラブルによって結果が左右されてしまうのは避けて欲しい部分ではあるけれども、選手のこういったポジティブな姿勢は本当に素晴らしくて、見ていて何だか嬉しくなってくるね!

タラマエもエリッソンドも、そしてもちろん他の選手達も、残りのステージを是非楽しみながら走って欲しいと、そんな当たり前の事を改めて願うばかりだ。