1級に始まり1級に終わる、厳しすぎる展開…
スタート直後にいきなり1級山岳が登場し、更にそこから3級・2級・2級・3級と超えていき、最後は激坂を含む1級山岳でのフィニッシュとなる、今大会初の本格的な山岳ステージである第7ステージ。
スタート直後という嫌がらせのような位置にある1級山岳で、やはりメイン集団から脱落していく選手がかなり多くて、メイン集団はいきなりかなり絞られていく格好に。
そしてその遅れていく選手の中には、前日も厳しそうな様子を見せていたヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)の姿が…。
そのまま遅れていったカーシーは、ほどなくしてリタイアを選択。
昨年のブエルタ総合3位、今年もジロ・デ・イタリアで総合8位と結果を残していて、結構期待していただけに残念だ…。
いきなりの厳しい展開になかなか逃げが決まり切らず、やっと6人の安定した逃げができたのは1級山岳後の下りを過ぎてから。
そしてそこに23人の追走が追いつき、合計29人という大所帯の逃げ集団が形成される。
セップ・クス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアーズ)、アレックス・アランブル(アスタナ・プレミアテック)、ゴルカ・イサギレ(アスタナ)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)、カルロス・ベローナ(モビスター)、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)、この辺りの選手は「前待ち」も狙いそう。
そして、チームDSMはロマン・バルデ、クリス・ハミルトン、マイケル・ストーラー、マーティン・トゥスフェルト、ティメン・アレンスマンと、なんと5人も逃げに投入!
バルデが落車でタイムを失い総合が厳しくなった事で、かなり大胆な手を打ってきたな…。
あとは、総合タイムが悪くないヤン・ポランツ(UAEチームエミレーツ、1分42秒遅れ)やフェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグローエ、2分9秒遅れ)は、展開次第ではマイヨロホを狙うかも?
最初の3級山岳で動きを見せたのは、逃げに5人も送り込んだDSMのバルデ。
ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)がバルデを追いかけるけれども抜くことはかなわず、バルデ、エリッソンドの順で山頂を通過。
続いての2級山岳ではポランツが抜け出して先頭通過し、2番手にバルデ、3番手がエリッソンドの順。
エリッソンドはこれで山岳ポイントでトップタイに浮上する。
2つ目の2級山岳に入ると、逃げ集団からもチラホラと脱落する選手が出てくる。
その中には、先ほどまで山岳賞に向けて意欲的に走っていたエリッソンドの姿も…。
そしてここの登坂で少し抜け出したのは、バルデ、シヴァコフ、ローソン・クラドック(EF)の3人。
そのままバルデが先頭で山頂を通過して、山岳賞の暫定首位に立つ事に。
先頭から4分ほど後方のメイン集団も、この2つ目の2級山岳で動きが出てくる。
総合4位のアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がホセ・ロハスのアシストを受けながらアタックを仕掛けると、イネオスからリチャル・カラパスとアダム・イェーツという強力な2名、そして他のチームからもダヴィ・デラクルス(UAE)、マーク・パデュン(バーレーン)という有力選手が反応して、一緒に抜け出す事に。
このかなり強力なメンバーによる抜け出しに対して、総合リーダーのログリッチは静観の構え。
「バルベルデが躍動している、と言うかモビスターのトリプルエースが初めてまともに機能している…!」とちょっとテンションが上がりつつ、この先の展開に期待が高まってきた状況で…、悲劇は突然訪れた。
なんと、バルベルデがコーナーでコントロールを失い(小さな段差を踏んだ?)、転倒しながらコースアウトしてしまう…!?
崖沿いのコースだったので相当危ないシーンだったけれども、バルベルデはなんとか崖からの転落は回避したようで、全く持って「大丈夫」ではないけれども…とりあえず最悪の事態にはならなくて、少し安心。
バルベルデはしばらくしてから再スタートを切ったけれども、どうやら鎖骨を折っていたようで、少しだけ走ると自ら自転車を降り、無念のリタイアとなってしまった…。
このバルベルデの落車が影響したかどうかは何とも言えないところだけれども、しばらくするとメイン集団はバルベルデがいたグループのキャッチに成功する。
先頭では、2級山岳直後の長い下りを利用してクラドックが抜け出すと、ここにシヴァコフとストーラーが合流し、3人で新たな先頭を形成。
そして、その45秒程後方を走る事となった追走集団の中で最も総合タイムの良かったポランツが脱落し、次にタイムの良いグロスチャートナーがバーチャルリーダーに。
残り30kmを切り、先頭とメイン集団のタイム差は約4分30秒。
ステージ争いは逃げ切りの可能性がかなり高まってきたけれども、マイヨロホはまだ何とも分からないような状況か。
この日5つ目のカテゴリー山岳となる3級山岳で、先頭からクラドックが脱落。
そして残り8.4kmから、この日のメインディッシュである1級山岳にいよいよ突入すると、追走からカルロス・ベローナとアンドレアス・クロン(ロット・スーダル)が合流して、先頭はストーラー、シヴァコフ、ベローナ、クロンの4人に。
残り4kmでベローナがアタックを仕掛けると、ストーラーとシヴァコフは何とか追いつくけれども、クロンはここで脱落。
残り3.2km、今度はストーラーがアタック!
シヴァコフはかなり限界に近い様子で、逆にベローナはシヴァコフの様子を窺う余裕を見せながら、少しストーラーからは離れたまま2人で追走の形に。
残り2km、シヴァコフが力尽きたのでベローナは一人で追走、しかしストーラーは20秒程前に行ってしまっている。
先頭のストーラーはかなりの急勾配区間に突入し、顔を歪めながらも最後の力を振り絞って登っていく!
ベローナのペースも悪くないように見えるけれども、その差は縮まらない!
ストーラーは最後まで力を失わずに踏み続け、そのままフィニッシュ地点へ!
1級山岳で圧倒的な強さを見せたストーラー、見事な逃げ切り勝利!
7月のツール・ド・ランで総合優勝という好成績を残していたストーラー、このまま好調をキープできれば残りのステージも楽しみだ!
そして逃げに5人の選手を送り込んだDSMとしては、大成功の結果に!
バルデの落車で総合と言う最大の目標を失いながら、やはりこのチームの抜け目のなさは素晴らしい!
バルデもストーラーもこの日だけで山岳ポイントを結構稼いだので、今後はそっちに舵を切るのも面白そうだ。
ステージ2位・3位は、そのままベローナ、シヴァコフの順でフィニッシュ。
シヴァコフは山岳ポイントを4pt加算した事で、山岳賞トップに躍り出る事に。
そして総合争いが注目のメイン集団は、残り2km辺りからアダム・イェーツが前を牽き、かなりのペースアップを敢行!
急勾配区間で、一気に人数が絞り込まれていく!
このアダム・イェーツの軽やかなダンシングで、アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ)、ミケル・ランダ(バーレーン)、ジュリオ・チッコーネ(トレック)、ファビオ・アル(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)と言ったライバルが少し遅れる事に…!
ストーラーから3分33秒後、アダム・イェーツ率いるメイン集団がフィニッシュ。
アダム・イェーツと同タイムフィニッシュとなったメンバーは、エガン・ベルナル(イネオス)、ログリッチ、エンリク・マス(モビスター)、ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター)、デラクルス、ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)と、僅か7人のみ。
そこ(総合リーダーのログリッチ基準)からウラソフが13秒、そしてチッコーネ、アル、ランダ、カラパスの4人が30秒のタイムを失う結果に。
そして、逃げに乗ってログリッチよりも2分1秒早くフィニッシュしていたグロスチャートナーは、惜しくも8秒届かず総合2位に。
1週目から盛り上がってきた総合争い、次の舞台は第9ステージ。
今大会最高峰(1958m)の1級山岳アルト・コラード・ベンタ・ルイーザを通過し、今大会初の超級山岳であるアルト・デ・ベレフィケにフィニッシュする、かなりの難易度を誇るレイアウト…!
今から楽しみだ!