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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第9ステージ

超級山岳、はっきり分かれた明暗

1週目の最終日となる第9ステージは、2級・1級・3級と山岳を超えて、最後は今大会初登場となる超級山岳へとフィニッシュする、獲得標高4500m超えの難関ステージ。

 

レースは序盤から落ち着かずに、なかなか逃げが決まり切らない展開が続いていく。

最初の2級山岳を超えてもまだ決まらず、2級山岳を下り切って、続く1級山岳の手前辺りでやっと11人の逃げが確定する。

残り71km、1級山岳で逃げ集団から抜け出したのは、ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)とロマン・バルデ(チームDSM)の2人。

そして残り63.8km、カルーゾがバルデを突き放して独走を開始!

カルーゾはそのままハイペースで踏み続け、バルデを含む追走から1分近くリードを保ったまま1級山岳を通過していく。

まさか、このまま逃げ切るつもりなのか…?

 

一方のメイン集団は、途中まではイネオス・グレナディアーズがまずまずのハイペースで牽引していたけれども、1級山岳を超えてからは総合リーダーのプリモシュ・ログリッチを抱えるチーム・ユンボ・ヴィスマが牽引を行う。

このユンボの牽引はイネオスよりも緩く、逃げるカルーゾとのタイム差はじわじわと広がっていく。

 

3級山岳を超え、レースはいよいよ今大会初の超級山岳アルト・デ・ベレフィケ(登坂距離13.2㎞・平均勾配6.4%)へ。

先頭を走るカルーゾはメイン集団との差を5分以上にまで広げている!

そしてカルーゾはまだまだ余力もありそうな様子で、しっかり自分のペースを保ちながら走っているように見える。

これは…カルーゾの逃げ切りが濃厚か。

 

メイン集団は、再びイネオスが牽引を開始。

パヴェル・シヴァコフやディラン・ファンバーレがまたしてもハイペースで集団を引っ張ると、ボロボロと集団から選手が零れ落ちていく…。

まだ超級山岳の登坂に入ってから序盤、総合勢にも脱落する選手が出てきてしまう。

第7ステージでも少しタイムを失っていたミケル・ランダ(バーレーン)が、この日も早々に遅れ始めているではないか…。

ワウト・プールスやマーク・パデュンがなんとか引っ張り上げようとするけれども、ランダ自身の踏みが明らかに弱く、もうどうにもならないような状態だ…。

 

集団を縦に引き伸ばしたイネオスは、急勾配区間でアダム・イェーツがアタック!

ここにはミゲルアンヘル・ロペス(モビスター・チーム)とエンリク・マス(ユンボ)が反応して、マイヨロホを着用するログリッチは動かない。

グリッチは勾配が少し緩むとアダム・イェーツたちにしっかりと追いつき、ここにはエンリク・マス(モビスター)やエガン・ベルナル(イネオス)がくっついて行く。

そこから更に勾配が緩んだことで一旦ペースが落ち着き、リチャル・カラパス(イネオス)などの遅れていた選手も少し戻ってくる展開に。

ただ、戻ってきたカラパスによる最後の力を振り絞ったアタックはあまり効果的では無く、カラパスはまたズルズルと沈んでいってしまう…。

 

また少し勾配が厳しくなってくると、アダム・イェーツが再びアタック!

この動きに反応したのは、ロペス、ログリッチ、マスの3人。

ベルナルは…動かない。

…と言うか、ベルナルのこの様子は多分…残念ながら「動けない」が正しいように見える。

なんとか自分のペースで粘って傷口を最小限に抑える事ができるか、ここが正念場だぞベルナル…!

 

アダム・イェーツを追いかけるロペス、ログリッチ、マスのグループから、ロペスは早々に脱落。

グリッチとマス、今大会ここまで好調の2人はやはりこの日も快調な走りを見せ、あっという間にアダム・イェーツを捉え、そして軽やかに抜き去っていく!!
しかし、残り4kmで先頭のカルーゾとログリッチたちのタイム差はまだ2分30秒、これはもう逃げ切りで決まったっぽいぞ!

グリッチたちの20秒ほど後方では、ベルナルがアダム・イェーツ、ロペス、ジャック・ヘイグ(バーレーン)のグループに合流してなんとかログリッチとマスを追いかけていたけれども、しばらくするとこの追走集団からも遅れていってしまう…。

いや、マジか…。

正直、開幕から状態が良くはないとは思っていたけれども…。

ただ、それでもベルナルはペース走法で粘り続け、全てを失うような大失速はしていない…!

なんとか、なんとか最後まで粘ってくれ…!

 

先頭をひた走るカルーゾの踏みは最後まで衰えず、最後は余裕を見せながらフィニッシュ地点へやってくる!!

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カルーゾ、衝撃の71km逃げ切り勝利!!

今年のジロ・デ・イタリアで総合2位に輝いたその実力は、やはり凄かった!

元来の実力に加え、ジロで得た自信がカルーゾを更に強くしたのかもしれない。

そしてバーレーンとしても、これで今年のグランツール全てでステージ勝利と、チームの好調ぶりが如実に表れる結果に!

ただ、本来このブエルタでエースの筈だったランダがこの日だけで約5分も失い「実質終戦」になってしまったのは、非常に残念なところではある。

それでも、総合4位にヘイグが位置付けている事を考えると、チームとしてはまだ総合が「終わった」訳ではないのが凄いところ。

2週目以降、一体どのような走りを見せてくれるか注目したい。

 

ステージ2位のログリッチはカルーゾから1分5秒遅れてフィニッシュ、そしてマスはログリッチに1秒のタイム差を付けられてしまってのフィニッシュ。

そして遅れていたライバル達は、総合リーダーのログリッチを基準に見て、ロペスやアダム・イェーツは39秒、そしてベルナルは1分5秒のタイムを失う結果に。

 

現状、総合争いの力関係としては…総合首位のログリッチの力が頭一つ抜けているのは間違いなくて、アシストの調子に若干の不安はありつつもそれが問題にならない可能性もありそう。

マス(総合2位、28秒遅れ)とロペス(総合3位、1分21秒)を擁するモビスターがかなりの好連携を見せて対抗していて、ここからどれだけユンボを揺さぶれるか注目かな。

イネオスはトリプルエースの調子が軒並み上がらず、ベルナル(総合5位、1分52秒遅れ)とアダム・イェーツ(総合6位、2分7秒遅れ)は辛うじて食らいついているけれども、カラパス(総合21位、10分57秒遅れ)はアシストに回らざるを得ない状況に。

ただ、逆にその方がチームとしては上手く機能する気もするし、そもそものチーム力は明らかに高いから、ここからのチームマネージメントとエースの復調次第ではまだまだ戦えるはず。

バーレーンはランダ(総合16位、5分47秒遅れ)が厳しくなったのでヘイグ(総合4位、1分42秒遅れ)で勝負、ジロに続いてエース交代から結果を残す可能性も充分ありそう。

ざっくりだけど、大体こんな感じかな。

ジロ、ツールと違って、エース級選手のリタイアが殆ど無いのは嬉しい事だね!

2週目、3週目と、ここから更に熱いレースに期待したい!