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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第18ステージ

霧の超級山岳

第18ステージは、1級・1級・2級と3つのカテゴリーの先に、ブエルタ・ア・エスパーニャ初登場となる超級山岳「アルト・デル・ガモニテイラ」が待ち受ける、今大会最後の本格的な山岳ステージ。

超級山岳「アルト・デル・ガモニテイラ」のプロフィールは、登坂距離14.6㎞・平均勾配は9.8%という、とんでもなく厳しいもの。

とんでもなく厳しいと言うか、9.8%の平均勾配を有していながら14.6kmもの距離、しかも勾配が緩む区間がほぼない「休めない」登りというのは…ちょっと他に思い浮かばないレベル。

今大会の総合争いを締めくくるに相応しい最高の舞台で、一体どんな戦いが繰り広げられるのか。

 

この日は早々に32人と言うかなり大人数の逃げ集団が形成される展開に。

山岳賞を争っているマイケル・ストーラー(チームDSM)とラファウ・マイカUAEチームエミレーツ)や、総合争いをしているチームのアシストであるクーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、イマノル・エルビティ(モビスター・チーム)、サルバトーレ・プッチョ(イネオス・グレナディアーズ)、そしてステージを狙いに来た選手と、様々な意図が含まれた巨大な逃げはメイン集団から5分ほどのリードを与えられながら進んでいく。

メイン集団を牽くのはバーレーン・ヴィクトリアス新城幸也選手。

何故バーレーンが牽いているのかと思ったら、バーレーンだけが逃げに選手を送り込めなかったのか…。

新城選手はそのまま1つ目の1級山岳の前半部分で牽引を終え、そして集団先頭からは後退しながらもなんとか集団後方にしがみつこうとしている…という事は、この後も仕事をするつもりだ。

 

1つ目の1級山岳を先頭で通過したのは、山岳賞ランキングで2位につけるストーラー。

DSMはストーラーと一緒に逃げに送り込んだティメン・アレンスマンも2位で通過させ、山岳賞を争うライバルであるマイカ(3位通過)のポイント獲得を阻止していく。

そして、メイン集団の新城選手はやはり1級山岳通過後に集団の先頭に戻って再び牽引をこなして、しっかりと逃げ集団とのタイム差を3分台にまで減少させてから、2つ目の1級山岳でこの日の仕事は終了。

今大会、総合順位を争っているバーレーンの重要戦力として働きまくるその姿が何度も中継に流れていた新城選手、本当に凄すぎる。

2つ目の2級山岳を先頭通過したのは、またしても山頂手前で飛び出したストーラー。

ストーラーはこれで山岳賞ポイントが54ptとなり、山岳賞ランキング首位だったチームメイトのロマン・バルデ(51pt)を抜いて、暫定での山岳賞首位に躍り出た。

 

逃げ集団から飛び出したストーラーは、このまま独走を開始!

メイン集団に2分ほどのタイム差を付けて、そのまま3級山岳もトップ通過して山岳ポイントを更に5pt加算に成功。

そして2分のリードを保ったまま、遂に超級山岳「アルト・デル・ガモニテイラ」に突入していく。

 

メイン集団を牽くのは、第9ステージで71kmの独走勝利を見せたダミアーノ・カルーゾ(バーレーン)。

今年のジロ・デ・イタリアで総合2位という実力者のカルーゾによる牽引ならストーラーとのタイム差が縮まるかと思いきや、意外にもタイム差はほとんど動かない。

今大会既に2勝と絶好調のストーラー、確変的な好調が続いているのか、それとも完全覚醒か、いずれにしても驚愕の走りだ。

そのストーラーを追いかけようと残り13km辺りでメイン集団から飛び出したのは、ジョフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)。

その直後には、ダヴィ・デラクルス(UAE)もメイン集団から飛び出していき、デラクルスはそのままもの凄い勢いで駆け上がってブシャールを抜くと、ストーラーとのタイム差もグングンと縮めていく!

 

残り8km辺りでカルーゾがメイン集団の牽引を終えると、ヤン・ヒルト(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)が総合12位のルイス・メインチェスを引き連れて集団の先頭で牽引を開始。

インチェスの総合順位を上げるためのアンテルマルシェの攻撃に耐えきれず、総合9位のフェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグローエ)と総合5位のギヨーム・マルタンコフィディス)がメイン集団から脱落していく…!

このアンテルマルシェの動きによって集団のペースが上がった事で、先頭を走るストーラーとのタイム差は徐々に縮まり始めた。

 

残り7.2km、単独で追走を仕掛けていたデラクルスが先頭のストーラーに追いつき、そしてデラクルスは残り5.5km辺りでストーラーを突き放して独走を開始!

メイン集団で動きがあったのは残り5km辺り、前日の第17ステージで残り60km地点からのアタックという積極的性を見せていたエガン・ベルナル(イネオス)が、この日も切れのあるアタックを繰り出す!

この動きに反応できたのは、前日も反応していたプリモシュ・ログリッチユンボ)の他には、エンリク・マス(モビスター)、ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター)、セップ・クス(ユンボ)という一握りの精鋭のみ。

総合4位のジャック・ヘイグ(バーレーン)や総合7位のアダム・イェーツ(イネオス)、ジーノ・マーダー(バーレーン)、メインチェスは少し離されてしまう。

残り4km、ログリッチたちの集団からロペスがアタック!

グリッチ、ベルナル、クスはロペスを無理しては追いかけず、チームメイトのマスはもちろん集団内で待機。

ロペスはそのまま勢いよく踏み続け、残り2.7kmで先頭のデラクルスを捉えると、そのまま一気に抜き去っていく!!

ロペスが飛び出したことでログリッチたちの集団はペースが少し落ち着いてしまい、後方からヘイグたちの集団が合流したけれども、アダム・イェーツは少し遅れている苦しい状況に…。

残り2.2km辺りでクスが仕事を終えて集団から離脱すると、すぐさまログリッチがアタック!

これに反応できたのはマスとベルナルの2人のみで、ヘイグ、マーダー、メインチェスは再び離されてしまう…

 

この時点で、先頭のロペスと、ログリッチ、マス、ベルナルのグループとのタイム差は30秒強。

アタックを仕掛けたログリッチのペーシングでその差が少しだけ縮まる中、残り1.7kmでまたしてもベルナルがアタック!!

ただ、ログリッチとマスは離れない…!

先頭のロペスの踏みは相変わらず軽く、20秒強のリードを保ったまま残り1kmを通過!

後方の3人も、1km通過と同時にログリッチが静かにペースを上げるけれども…ロペスとのタイム差は変わらない!!

深い霧で視界がほぼゼロの山頂に先頭でやってきたのはロペス!!

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総合3位のロペス、表彰台確保へ貴重なタイム差を獲得するステージ勝利!!

後方でチームメイトのマスが「重し」になってくれていたとは言え、1発で決め切ったアタック、そしてそのままペースを最後まで保ち続けたその走りは素晴らしかった!

ロペスは3年ぶりのグランツール総合表彰台が、そしてモビスターとしては総合2位のマスと共に表彰台の2枠確保が、いよいよ目前まで迫ってきた!

 

ロペスの14秒後にフィニッシュしたログリッチは、残り100mからの加速でマスから6秒、ベルナルから8秒のタイムを奪う事に成功。

これで総合2位のマスとは2分30秒差、総合3位のロペスとは2分53秒差。

最終日はログリッチが得意な個人TTである事を考えると、何かログリッチにトラブルが無い限り総合優勝は間違いないと言っていいはずだ。

ブエルタ3連覇という史上3人目の快挙に向けて、残すは3ステージのみ。

王者ログリッチは、玉座に向けたパレードを開始している。

 

ステージ4位でフィニッシュしたベルナルは、総合5位に浮上。

総合4位のヘイグがベルナルから36秒遅れてのフィニッシュとなったため、2人の総合タイム差は僅か8秒に。

この差は…最後までどうなるか分からないぞ!

最後の最後まで、ブエルタは面白くなりそうだ!