初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【レース感想】UAEツアー2022

これが王者の強さ

今シーズン最初のワールドツアー、UAEツアーが開幕!

f:id:kiwa2408:20210221115644j:plain

ワールドツアー開幕という事で、今年もかなり豪華なメンバーが出場する事に!

※注目選手紹介記事はこちら

www.kiwaroadrace.com

総合勢も凄いけど、スプリンターの面子が凄すぎる…。

とりあえず、自分の総合成績予想はこんな感じ。

王者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がコロナ明けで、コンディションが分からないんだよなぁ…。

それでもポガチャルを本命に据えつつ、自分の一押しはアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)だったりする。

 

何はともあれ、砂の国での激戦がスタート!!

 

第1ステージ

砂漠を突っ切って折り返してくる、集団スプリントが予想される平坦ステージ。

 

この日の逃げは5人。

横風分断の懸念がある事が影響したのか、メイン集団は逃げにあまり大きなリードを与えず、概ね2分~3分ほどのタイム差でコントロール

結局、風はレースに大きな影響は与えず、特に何も起こらないまま残り20kmで逃げがメイン集団に吸収されて、レースはスプリントの展開に。

 

フィニッシュまでひたすら直線で、なおかつかなり幅が広い幹線道路という事で、集団は縦ではなく横に広がり、主導権を握ってペースを上げるようなチームがいないまま残り10kmを通過。

とりあえずこの時点で前に位置取りしているのは、ドゥクーニンク・クイックステップバーレーン・ヴィクトリアス、イネオス・グレナディアーズ辺り。

そして、この日の優勝候補であるサム・ベネットを抱えるボーラ・ハンスグローエの選手が…前方には見当たらない。

ボーラの位置は、なんと集団最後尾。

サウジ・ツアーをコンディション不良でスキップしていたサム・ベネット、まだ調子が上がっていないのか…?

 

残り5kmを切ると、各チームの隊列が道幅目一杯に展開され、クイックステップ、イネオス、バーレーン、チーム・ユンボ・ヴィスマ、EFエデュケーション・イージーポスト、イスラエル・プレミアテック、トレック・セガフレード、モビスター・チーム、UAEと、なんと9つものトレインが並列に走るという珍しい状態に。

流石にこの辺りから集団のペースは一気に上がり、スプリントに向けて緊張感が高まってくる。

残り3km、先頭はアレハンドロ・オソリオ(バーレーン)が牽いているけれども、その後ろは複数のチームが入り乱れる乱戦模様。

残り2.5km、外側からイスラエルとチーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコが上がってくる。

残り2kmを切ると、各チームのラインが行き場を求めてか左右に大きな移動が見られ、結果的により混戦模様になっていく…。

残り1km、そんな中で先頭を奪いいい形勢に持ち込んだのはバイクエクスチェンジ!

そして、画面後方からはボーラのトレインもやっと姿を現し始める。

残り700m、盤石に見えたバイクエクスチェンジだったけれども、エースのディラン・フルーネウェーヘンは、最終発射台のルカ・メスゲッツの後方という最良の位置をエリア・ヴィヴィアーニ(イネオス)に奪われてしまう!

残り500m、フェンス際から一気に位置を上げてきたのはUAEのトレイン、発射台のマクシミリアーノ・リケーゼがパスカル・アッカーマンを引き上げる。

そこからアッカーマンはリケーゼの背中ではなく、ミケル・モルコフ(クイックステップ)の背中に飛び乗る事を選択、クイックステップはエースのマーク・カヴェンディッシュとモルコフが分断されてしまった!

UAEクイックステップによるやり合いの横から、アルペシン・フェニックスのトレインもグングン伸びてくる!

その逆サイドでは、後方にいたはずのボーラが一気に前方へ!!

サム・ベネットを引っ張り上げるダニー・ファンポッペル、とんでもない勢いだ!!

その動きとほぼ同じタイミングで、アッカーマンが少し早めにスプリントを開始!

ただ、アシストを失い丸裸だったアッカーマンは失速、対照的にファンポッペルのリードアウトをギリギリまで受けたベネットは伸びる!

ベネットの動きにカヴェンディッシュが進路を失う一方、フェンス際からはベネットとほぼ同時にジャスパー・フィリプセン(アルペシン)もスプリントを開始!

ベネットの後ろではヴィヴィアーニ、フィリプセンの後ろではフルーネウェーヘンが機を窺っていたけれども、フルーネウェーヘンはフィリプセンとフェンスに挟まれるような格好となり加速できない…!

フィリプセン、ベネット、そしてその後ろから飛び出そうとするヴィヴィアーニ!

Embed from Getty Images

大混戦となったスプリント、制したのはフィリプセン!!

絶好の位置から抜群のタイミングで飛び出して、最高の伸びを見せた!

進路を塞がれる格好になったフルーネウェーヘンは抗議の声を上げていたけれども、特に審議も無くそのままフィリプセンの勝利で確定。

昨シーズン最も安定していたスプリンターと言えるフィリプセン、今年も「高値安定」で行きそうだ!

 

ちなみに、この日の自分の予想はこんな感じ。

フルーネウェーヘン、途中まで悪くなかったけれども…。

 

第2ステージ

2日連続の平坦ステージだけれども、この日のフィニッシュ付近は市街地を通るレイアウト。

コーナーや中央分離帯も多く、特にフィニッシュ手前1.2kmの鋭角コーナーは重要なポイントになりそう。

 

この日の逃げは3人、なんと全員がガスプロム・ルスヴェロの選手という、なかなか珍しい状態に。

ディミトリ・ストラコフは前日に続いて中間ポイントを先頭通過した事で、中間スプリント賞ジャージをよりガッチリとキープ。

ただ、強い向かい風の平坦ステージという事でそれ以上の爪痕は残せず、逃げは残り36kmでメイン集団に吸収される。

というか、向かい風が強すぎ!

一時はフィリプセンが自転車から脚を下ろして歩く(!)余裕があるぐらい、ペースが下がったりも…。

 

そのままレースは市街地へと突入して、スプリントの展開へ。

海風の影響もあってなかなかペースが上がらなかったけれども、残り4km辺りからスピードが本格化。

残り2.5km、バイクエクスチェンジが7人全員という驚きの態勢で集団前方へ上がってくる。

その後ろにはボーラのトレイン、そして逆サイドからはイスラエルも上がってくる。

残り2km、せっかく前に人数を集めたバイクエクスチェンジは、ボーラやユンボに割って入られてしまい、早くもトレインが千切れていく。

残り1.2kmの鋭角コーナー、道幅が狭い!

先頭で突っ込んだのはイスラエルだけれども、立ち上がりで良い態勢になったのはボーラ。

ボーラの横にはクイックステップ、そしてグルパマも上げてきている!

残り500m、先頭はグルパマ!

しかしボーラがすぐさま先頭を奪い、前日に続いてファンポッペルが素晴らしいリードアウトを見せる!

最終コーナー、今まさにサム・ベネットが発射しようかというタイミングで、ボーラの横に出てきたのはカヴェンディッシュ、更にその外にはフィリプセンもいる!

サム・ベネットは行き場が無くなり失速してしまう!

残り300m弱、カヴェンディッシュとフィリプセンの一騎打ちだ!!

両者譲らず、横並びでのフィニッシュ!!

Embed from Getty Images

昨年ツールでも激突した2人によるスプリント、制したのはカヴェンディッシュ!!

少し早めの仕掛けにも関わらず、最後まで勢いを失わなかった!!

昨年「奇跡の復活」を果たしたカヴェンディッシュ、その勢いは今シーズンも止まらない!

 

そして、この日の自分の予想がこちら。

ボーラのトレインとファンポッペルのリードアウトは、予想通りかなり強かったけれども…結果には繋がらず。

難しい。

 

第3ステージ

今大会唯一の個人タイムトライアルは、高低差がほぼ無い9kmの短距離タイムトライアル。

平坦なタイムトライアルという事で、自分の予想は…。

まあ、ガンナ一択だよね。

短距離だとパンチ力のあるシュテファン・ビッセガー(EF)も気になるところだけれども、ガンナが好調っぽいし。

 

この日まず良いタイムを出したのは、8番出走のミッケル・ビヨーグ(UAE)。

流石は3年連続U23個人タイムトライアル世界王者。

期待している選手だからこれは嬉しい。

 

その直後、今大会総合争いで注目、そして個人的にかなり期待しているウラソフが出走。

ウラソフのタイムは暫定首位のビヨーグから僅か1秒遅れと、かなりの好タイム!

昨シーズンからタイムトライアル能力が向上した感があったけれども、しっかりそれを継続できているようで、これはもはや地力が高まったと言ってよさそうだ。

 

そして、ウラソフから間を開けずに出走したのは、昨年このレースの個人タイムトライアルで2位に入ったビッセガー。

追い風の前半区間、その平均速度はなんと60km/h!

折り返して向かい風になる後半もハイペースを継続して、ビヨーグを24秒上回る9分43秒という圧倒的なタイムでフィニッシュ!!

Embed from Getty Images

このタイムは凄いぞ…。

 

ビッセガーが長時間ホットシートに鎮座する状況が続き、そしていよいよこの日最大の優勝候補であるガンナが出走。

前半区間はビッセガーから1秒遅れと、やはりガンナも強い!

しかし、向かい風基調の後半でガンナはややタイムを落としてしまい、ビッセガーから7秒遅れのタイムでフィニッシュ。

その巨躯は向かい風には不利だったのか、それとも…?

いずれにしても、ガンナが更新できなかったビッセガーのタイムを更新できる選手など、その後現れるはずも無かった。

ビッセガー、ガンナを破ってのステージ勝利!!

更には総合首位の座も獲得!!

(そして自分は「置きにいった予想を外す」というなかなか恥ずかしい結果に…)

 

残す注目ポイントは、総合勢のタイム。

ジョアン・アルメイダ(UAE)がビッセガーから22秒遅れと期待通りの好走を披露。

コロナの影響が心配されたポガチャルはアルメイダを4秒上回り、不安の声を一掃。

アダム・イェーツ(イネオス)はビッセガーから29秒遅れのステージ12位と、まずまず許容範囲…というか、上出来のタイム。

そして、完全復活に向けて仕上がりが注目されていたトム・デュムラン(ユンボ)は、ビッセガーから14秒遅れのステージ3位と、ポガチャルを4秒上回ってみせた!

ちなみに、序盤に出走していたウラソフはビッセガーから25秒遅れのステージ8位と、やはり最終的に悪くない結果に。

 

これで、実質的な総合争いでトップに立ったのはデュムラン。

そしてその下には前評判の高かった役者がずらりと並ぶ格好に。

  • デュムラン
  • ポガチャル(+4秒)
  • アルメイダ(+8秒)
  • ウラソフ(+11秒)
  • アダム・イェーツ(+15秒)

これは面白くなってきた。

 

第4ステージ

長い登りが特徴のジュベル・ジャイスへとフィニッシュする、今大会(そして今年のワールドツアー)最初の山頂フィニッシュ。

登坂距離21.2km・平均勾配5.4%というその特徴的なレイアウトで、一体どのような争いが繰り広げられるか。

 

この日の逃げは2人、メイン集団とのタイム差は最大で7分ほど。

メイン集団は総合リーダーのビッセガーを抱えるEFが担い、残り17kmというジュベル・ジャイス突入直後のタイミングで逃げを吸収する。

 

真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、王者を抱える地元チームとして勝利が義務付けられたUAE

残り15kmからビヨーグ、残り12kmからはジョージ・ベネットが牽引してペースを上げ、集団は縦に引き伸ばされてどんどん選手がこぼれ落ちていく…。

残り8.5km、ジョージ・ベネットが仕事を終えて下がると、UAEはすぐさま次の手を繰り出す。

なんと、ラファウ・マイカによるアタック!

この動きはすぐさまジェイ・ヒンドレー(ボーラ)が反応して引き戻すけれども、これで一気にレースは活性化。

残り7.8kmではポガチャルが様子見のようなアタックを繰り出し、ウラソフとアダム・イェーツが反応と、早くもエース同士がやり合う様子も見られる。

そんな中、集団後方ではデュムランが脱落…。

まだ本調子ではないという事か、それとも…?

その直後、総合リーダーのビッセガーもメイン集団から脱落。

まあビッセガーに関しては、ネガティブな意味での脱落というより、ここまでよく粘った感はある。

そして意外にも集団に残っているのがガンナ。

果たして、どこまで残れるか。

 

残り7km、一瞬緩んだ集団から飛び出したのはレイン・タラマエ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)。

この動きをきっかけに新しく形成された先頭集団は、タラマエ、マイカ、クリス・ハーパー(ユンボ)、ルーベン・ゲレイロ(EF)、アンドレアス・レックネスン(DSM)、ジーノ・メーダー(バーレーン)の6人。

メイン集団を牽くのは、イネオス期待の新人ルーク・プラップ。

プラップの牽きは堅調で、残り4.3km地点で先頭の6人を捕まえる事に成功。

次世代を担う大器であろうプラップ、その才能の片鱗をしっかりと見せてくれている。

残り2.9km、タラマエのアシストを受けたヤン・ヒルトがアタック!

この動きに反応したのは、ポガチャル、アダム・イェーツ、ウラソフ、ロマン・バルデ(DSM)、ペッリョ・ビルバオバーレーン)、プラップ…プラップここに入るのか!

ただ、精鋭揃いのこの集団も残り1.3kmで吸収されて、集団はまた1つに。

そして驚く事に、ガンナがまだ集団にいる…!

もしタイム差なしでフィニッシュできば、総合リーダーになれるけれど…?

 

残り1km、集団の先頭はアルメイダ、その後ろにはマイカにポガチャルと、UAEが鉄壁の構え。

残り600m、ここで驚きの飛び出しを見せたのがプラップ!!

牽引して、精鋭のアタックに追随して、そしてまだアタックする余力があるのか!!

いやはや、末恐ろしすぎる…。

このプラップの動きを捕まえる事に力を使ったアルメイダはここで脱落。

プラップ、UAEの強力すぎるダブルエース体制に穴を開ける大仕事をやってのけた。

 

プラップが捕まりマイカの牽引に変わった集団は、ここまでの動きで結構バラバラに…。

残り300m、真っ先に飛び出したのはゲレイロ!

しかし、ポガチャル、アダム・イェーツ、ウラソフの「3強」がそれを許す訳もない!

残り100m、やはりポガチャルのスプリント力が頭一つ抜けている!!

最後は余裕を見せてのフィニッシュ!!

Embed from Getty Images

圧倒的王者による山岳制圧!!

ポガチャル、そしてUAEが隙の無い強さを見せつけて、ステージと総合首位を獲得!!

ビヨーグ、ジョージ・ベネット、マイカ、アルメイダという豪華アシスト陣の見事な働き、そしてポガチャルの相変わらずなハイパフォーマンス。

勝つべくして勝ったという、強者の戦い方だった。

 

これで、総合首位ポガチャル、総合2位ガンナ(!?+2秒)、総合3位ウラソフ(+13秒)、総合4位アダム・イェーツ(+15秒)、総合5位ニールソン・ポーレス(EF、+23秒)という順位に。

プラップの働きでタイムを失ったアルメイダは、28秒遅れの総合6位。

アルメイダは、もし遅れていなかったら総合17秒遅れでアダム・イェーツとほぼ同じタイムになっていた(もしかしたらボーナスタイムを稼いでアダム・イェーツより良いタイムになっていた)と予想されるので、プラップの果たした役割は相当大きい。

最終ステージの山頂フィニッシュ、またどのようなドラマが生まれるか楽しみだ。

 

ちなみに、この日の予想はこんな感じ。

まあ、そりゃ当たるよね。

 

第5ステージ

今大会3回目のスプリンター向けステージは、フィニッシュ手前2.7km地点に180度の折り返しがある、ややトリッキーなレイアウト。

 

この日最初の逃げは、ガスプロムからストラコフ、パヴェル・コチェトコフ、ミヒャエル・ククルレという今大会ではお馴染みの3人に、アレッサンドロ・トネッリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)を加えた4人。

ただ、メイン集団は横風分断が発生した事でペースが上がり、分断した第1集団が中間スプリントポイント(残り131km)の手前で逃げを吸収してしまう。

中間スプリントポイントを先頭通過したのはフィリプセン、2番手がポガチャル、3番手にはウラソフ。

フィリプセンはポイント賞ジャージをより強固なものに、そしてポガチャルとウラソフはそれぞれ2秒と1秒のボーナスタイムの獲得に成功。

その後、横風で遅れていた集団がメイン集団に復帰すると、新たな4人の逃げが発生。

しかし、この2度目の逃げも残り60kmで吸収されるという、やや意外な展開に。

 

残り31km辺り、この日最初の逃げに乗っていたククルレが単独で飛び出す。

メイン集団は単独のククルレに対して、残り20kmで2分30秒と結構大きめのリードを容認。

そこから、意外にもタイム差がなかなか縮まらなかたけれども(メイン集団が意図して縮めなかった?)、残り15kmで2分10秒、残り10kmで1分10秒と、問題なく捕まえるペースで推移していく。

残り7km、ククルレとメイン集団の差は45秒ほど、ここからスプリントに向けて加速していくというタイミングで、なんと総合リーダーのポガチャルがパンクに見舞われる!

ただ、当然ミッケル・ビヨーグが牽引役として降りて来て、ポガチャルは無事に集団に復帰。

こんなつまらない事でタイムを失わなくて、とりあえず一安心だ。

 

メイン集団は粘りに粘ったククルレを残り3kmで吸収して、そのまま180度の折り返しへ進入。

折り返しを先頭で抜けたのはバイクエクスチェンジだけれども、エースのフルーネウェーヘンがはぐれてしまっている…。

その隙に緩いカーブが続くレイアウトの内側から先頭に躍り出たのはイスラエルのトレイン、中央ではグルパマ、外側ではアルペシンも悪くない格好だ。

残り1.5km、先頭はそのままイスラエル、アルペシンに締め出される格好でグルパマは位置を落とし、そしてボーラのトレインが上がってくる。

残り1km、イスラエルのトレインが依然先頭、他のチームはトレインが入り乱れて混沌とした状況に!

残り700m辺り、後方からバイクエクスチェンジが隊列を整えて後れを取り戻そうとするけれども、これは流石に遠すぎる。

残り500mを切り、先頭を奪ったのはボーラのファンポッペル!

ここまでのステージでも猛烈な牽きを見せている今大会最強のリードアウターは、この日も絶好調だ!!

背中にはしっかりとエースのサム・ベネットが控え、その後方にはポイント賞ジャージのフィリプセン、そしてユンボ期待の若手オラフ・クーイが続く!

直前まで良い形だったイスラエルは、ルディ・バルビエがフィリプセンの横辺りにいる!

残り200m、ファンポッペルの背中からサム・ベネットが飛び出してスプリントを開始!

フィリプセンも負けじと加速、コースを塞がれるような格好になったコーイは回り込んだ事でロスを余儀なくされる!

残り100m、混戦の中から伸びてきたのは…フィリプセン!!

Embed from Getty Images

見事な伸びを見せたフィリプセン、今大会2勝目!

サム・ベネットの伸びが物足りない感はあったかもしれないけれども、毎ステージ安定して最前線でスプリントをして、そして強さを見せつけるフィリプセン。

昨年は惜しくも届かなかったツールでの勝利も、充分射程圏内ではないか。

 

そしてステージ2位は、何とサム・ベネットではなくクーイ!

遠回りせざるを得なかったのに、鋭い加速でサム・ベネットを差していたとは…。

第1ステージ8位、第2ステージ4位、そしてこの第5ステージ2位と、20歳ながら安定感もある。

第6ステージ、そしてその後のレースも楽しみだ。

 

ちなみに、この日の予想は…。

期待を込めすぎると当たらないと、何度言えば分かるのか…。

 

第6ステージ

連日のオールフラットなスプリンター向けステージ。

 

この日の逃げは、ストラコフ、コチェトコフ、マティアス・ヴァチェクのガスプロム3人衆、バルディアーニからトネッリとジョナタン・カニャベラルの2人、そしてポール・ラペラ(AG2Rシトロエン・チーム)を加えた6人。

中継開始時、残り67kmで逃げとメイン集団のタイム差は1分15秒。

割とタイム差が少ないので、「早めに吸収したりするのかな」と、この時点では考えていた。

道中は平坦ステージらしく、特に何も起こらないままレースは平穏に進行。

逃げとメイン集団のタイム差も1分台のまま推移していく。

 

残り30km、タイム差は1分15秒。

まあこんなもんか、そろそろ集団が加速するかな。

残り20km、タイム差は変わらず。

まあ、まだ間に合うか。

残り15km、…ん?

タイム差が変わっていないね…?

残り10km、…え?

1分23秒!?

広がっている…、大丈夫か?

と言うか、メイン集団はこの状況でファウスト・マスナダ(クイックステップ)やクーン・ボウマン(ユンボ)みたいなクライマー系に牽引させている場合じゃないでしょ…。

逃げはカニャベラルが脱落して5人になっているけれども、しっかり協調して順調にペースを刻んでいるぞ…。

メイン集団はボーラのパトリック・コンラッドが牽引に加わったけれども、残り7kmでタイム差は依然1分12秒と、やはり差はほとんど縮まっていない。

残り5km、タイム差は1分ちょうど。

この5kmで、23秒しか縮まっていない…!

恐らく、この辺りが分水嶺だったと思う。

ここから各チームが平坦での牽引自慢に全力を出させれば、ギリギリ追いつく可能性はあった気がする。

マイルズ・スコットソン(グルパマ)、ライアン・ミューレン(ボーラ)、イーサン・ヴァーノン(クイックステップ)、ヨス・ファンエムデン(ユンボ)、ビヨーグ、そしてガンナと、強力なメンバーは揃っていた(UAEとイネオスはスプリントよりも総合に注力していたから、ビヨーグとガンナは多分力を貸さないだろうけれども)。

それでも、各スプリントチームは、最終局面でトレインの枚数が削られる事を嫌い、出し惜しみをしてしまった。

ここまでのスプリントステージで、残り1kmでも枚数を残せるような圧倒的なチームがいないという、ある種各チームの力が拮抗していた事も影響していたかもしれない。

でもそんな理由づけより、明確に分かりやすい表現はこうだろう。

メイン集団はこの日の逃げを舐めていた。

この一言に尽きる。

残り2.5km辺りからやっとファンエムデンが集団の牽引をしたけれども、時すでに遅し。

勝負権は逃げの5人に絞られた!

 

残り2km、逃げの5人は未だしっかりと協調して、逃げ切りをより確実なものにしていく。

残り1kmでタイム差は37秒、もうどれだけ牽制してペースが落ちても逃げ切りは間違いない。

先頭を牽くのは、逃げに3人残せているガスプロムのコチェトコフ。

あまり牽制もなく、そしてガスプロムによる数の利を活かしたような戦術も無いまま、残り距離が無くなっていく。

残り200m、コチェトコフが牽引を終えて横並びになると、ヴァチェクとストラコフがそのまま同時に(リードアウトとかしないんだ…)スプリントを開始!

良い加速を見せたのはヴァチェク、その背中を捉えたのはラペラ!

ラペラはなんとか前に出ようともがくけれども、ヴァチェクが強い!!

Embed from Getty Images

これぞ大金星!!

弱冠19歳のヴァチェク、逃げからの小集団スプリントを制してプロ初勝利!!

連日逃げに乗せていたガスプロム、その頑張りが報われる最高の結果に!

 

いや~しかし、平坦ステージで「捕まえ損ねて」の逃げ切りは…記憶にある限りだと2019年のジロ・デ・イタリア以来かな?

まれにこういった事があるから、レースは恐ろしい…。

 

…予想?

「紛れ」どころじゃない大事件が起こったんですが…。

こんな展開で予想が当たったら、逆に恐ろしすぎるわ。

 

第7ステージ

最終日は、登坂距離10.8km・平均勾配6.6%のジュベル・ハフィートへとフィニッシュする、総合争い最大の勝負所。

 

この日の逃げは、総合争いと全く関係ないだけでなく、登坂力も少なくてステージも狙えない6人。

ジュベル・ハフィート突入直後にジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン)が単独先頭になるけれども、残り7.5kmでメイン集団に吸収される。

この時点で、総合2位のガンナは既に脱落。

残り7km辺りからジョージ・ベネットによる牽引で集団のペースアップが図られ、次々と選手がこぼれ落ちていく…。

残り4.5kmまでジョージ・ベネットの牽引は続き、デュムラン、ヒルト、マスナダ、タラマエ、ボウマン、レックネスンなどが脱落。

UAEはジョージ・ベネットに続いてマイカを投入。

イカの牽引で、ヒンドレー、ダビ・デラクルス(アスタナ・カザクスタンチーム)、ポーレス、バルデ、ハーパーと言ったトップクライマーたちも脱落。

残り4kmを切ると、集団に残っているのは以下の8人のみ。

  • ポガチャル
  • イカ
  • アルメイダ
  • アダム・イェーツ
  • プラップ
  • ビルバオ
  • ウラソフ
  • カルロス・ベローナ(モビスター・チーム)

いよいよ最終局面だ。

 

残り3.2km、総合逆転を目指すアダム・イェーツがアタック!!

このキレッキレのアタックに反応できたのはポガチャルのみ!

総合表彰台圏内のウラソフが反応できない…!

残り2.4km、遅れて追走していたビルバオとアルメイダがなんとか合流、先頭は4人に。

ポガチャルにとって、このアルメイダの存在は大きい。

先頭に追い付いたアルメイダは、なんとそのまま間髪入れずにアタック。

アダム・イェーツとしてはもちろんこの動きを無視できず、脚を使って追いかけざるを得ない。

アタックをしたアルメイダは残り1.8kmで追いつかれると、今度はそのままポガチャルのアシストとして先頭を牽引。

UAEが盤石の態勢すぎる。

残り1.1km、アダム・イェーツが再度アタック!

アルメイダはここで離脱、ビルバオも残り900mで離され、先頭はアダム・イェーツとポガチャルという、昨年と同じ2人に!

アダム・イェーツは踏み続け、そしてポガチャルは離されない。

まるで昨年の焼き写しのような展開は更に続き、フィニッシュ手前の一旦下るポイントでポガチャルが前に出て、スプリントを開始。

この日も、王者による制圧が成される事となった。

Embed from Getty Images

ポガチャルが圧倒的な力で山岳ステージ2連勝!!

そして2年連続での総合優勝達成!!

いや~、強い!

アダム・イェーツも強かったし、ベストを尽くしたと思うんだけれども、ポガチャルは完全にその上を行っていた。

「強い」以外の感想が湧いてこないというのが正直なところ。

 

そして、今大会最後の予想は…。

うむ、さすがはポガチャル様。

 

 

ワールドツアー初戦に相応しい盛り上がり

改めて、最終成績を確認。

 

  • 総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ
  • 総合2位:アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ
  • 総合3位、ペッリョ・ビルバオバーレーン・ヴィクトリアス
  • ポイント賞:ジャスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)
  • ヤングライダー賞:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ
  • 中間ポイント賞:ディミトリ・ストラコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)

 

ポガチャルがその力を存分に発揮して、総合2連覇を達成!

山岳ステージ2連勝に、個人タイムトライアルも総合勢トップクラスと、相変わらずの手の付けられなさ。

そしてチームメイトの見事な働きも光り、本当に一分の隙も無かった。

UAEはチーム力が不安」という昨年までの評価は、完全に過去のものと言っていいはずだ。

 

アダム・イェーツも、2年連続での総合2位に。

ポガチャルには届かなかったけれども、他のライバルを引きちぎるアタックは間違いなく素晴らしかった。

タイムトライアルも悪くない走りが出来たので、この調子でイネオスのエースとして頑張って欲しい。

 

総合3位に入ったのは、最終日の走りで逆転したビルバオ

普段はいぶし銀の走りを見せるアシストだけれども、昨年ジロで総合2位に輝いた同僚ダミアーノ・カルーゾのように、ビルバオにだって可能性はきっとある。

また次の機会にも期待したい。

 

ポイント賞は、ステージ2勝と今大会最強スプリンターだったヤコブセン

好調だった昨年の走りをしっかり継続できていたので、もはやトップスプリンターの1人と評しても過言では無いはず。

今年こそ、ツールでのステージ勝利だ。

 

中間ポイント賞に輝いたのは、連日逃げに乗って頑張っていたストラコフ!

ストラコフに限らずガスプロムの選手は毎ステージもの凄く目立っていたし、平坦ステージでのヴァチェクによる逃げ切りと、望外の結果も手にする事に。

こんな情勢だからこそ、ロシア籍のチームによる健闘は称賛したい。

 

素晴らしい盛り上がりを見せたUAEツアーはこれで終了。

レースは春のクラシックシーズン、そしてヨーロッパでのワールドツアーステージレースへと突入していく。

と言うか、3月忙しすぎ。

パリ~ニースとティレーノ~アドレアティコの「完全被り」とか、ちょっと観る側に厳しいよね…。

まあ、それぞれ無理のない範囲で楽しんでいきましょう!

それでは、また!

Embed from Getty Images