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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第7ステージ

トム・デュムランという男

3級・1級・2級・3級と4つのカテゴリー山岳が設定され、獲得標高が4,500m以上にもなる厳しい山岳ステージ。

ただ、終盤の山岳が2級と3級なので、総合勢による勝負ではなく逃げ切りの可能性が高いはず。

 

その予想通り、アクチュアルスタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられて、逆になかなか逃げが決まらない展開に。

1時間以上もバチバチやり合ってから、やっと形成された逃げのメンバーは以下の7人。

2017年のジロ覇者デュムランを筆頭に、これまたもの凄いメンバーの逃げだ…。

 

最初の3級山岳をトップ通過したのは、この逃げのきっかけを作る積極性を見せていたプールス。

プールスは続く1級山岳も狙いに行くけれども、ここはボウマンに敗れて2位通過。

これだけ積極的に動くという事はプールスの調子が良いのかと思っていたら、動きすぎたのが仇となったのか、次に控える2級山岳の手前でプールスは脱落してしまう。

逆にボウマンは調子の良さを見せて、2級山岳も先頭で通過。

そこからヴィレッラとカマルゴの2人が脱落して、残すは4人。

デュムラン、ボウマン、モレマ、フォルモロと、なかなかお目に掛かれないような実力者のみによる山岳逃げ争いに。

 

残り28.4km、3級山岳で仕掛けてきたのは数的有利を活かしたいユンボ、まずはデュムランにアタックさせる。

この動きにフォルモロとモレマが反応するけれども、何故かボウマンが付いていけない…?

後ろを振り返りボウマンが離れている事に気が付いたデュムランは、当然一旦ペースを落とす。

そしてその隙を見逃さずに、モレマがカウンターアタック

デュムランは後ろのボウマンを気にしつつ、背中にフォルモロを張り付けながら慌てずにペース走法でこの動きを吸収。

そうすると今度はフォルモロがアタック!

デュムランは先ほどと同様にペース走で、今度はモレマが背中に乗りながら(途中でモレマが牽くシーンもありながら)フォルモロを捕まえる。

これぞペース走の達人、デュムラン。

アタックを意に介さず、信じるのは己のタイムトライアル能力に起因する安定したペーシング。

第4ステージでは調子が上がらずに大きな後れを喫してしまったけれども、やはりその強さは伊達ではない。

こうなると結局ペースは上がらず、少し遅れていたボウマンが残り25.1kmで先頭に復帰。

デュムランはそのまま無理のないペースで先頭を牽引、その間にボウマンは呼吸を整えたのか、3級山岳の山頂ではスプリントを見せて先頭通過に成功。

ボウマンは山岳ポイントでレナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)を上回り、山岳賞争いのトップに躍り出る事に。

先ほどは一旦遅れてしまったけれども、ボウマンの調子は決して悪くない…?

 

全てのカテゴリー山岳を超え、残す勝負所は残り7kmにある「スプリントポイントが設定された登り」。

残り8.5km、勾配の厳しい区間でモレマがアタックを仕掛けると、ボウマンはすぐさま反応、フォルモロは少し遅れてから追随、そしてデュムランは相変わらずペース走で慌てずに合流。

デュムランはそのまま先頭でペースメイクに勤しむ。

残り7.2km、再びモレマがアタック!

またしてもボウマンは素晴らしい反応でその背中をすぐさま捉え、フォルモロが少し遅れて合流、そしてデュムランは…結構離されている、流石に厳しいか。

残り6.7km、登り返しの区間で今度はフォルモロがアタック!

しかしここでもボウマンはすぐさま反応、モレマもしっかりと付いてきている。

この一連の動きで15秒ほど離されたデュムランだったけれども、ここでも淡々とペース走で追走。

そして先頭では、モレマとフォルモロがアタックを仕掛けても、ボウマンが素晴らしい反応を見せてすぐさまキャッチして、ペースを上げさせない。

デュムランがじわじわと迫る…!

残り3km、遂にデュムランが先頭に合流!

デュムランはそのまま先頭を牽いて、モレマとフォルモロのアタックを封じに掛かる!

デュムランが先頭固定のまま、残り1kmを通過。

残り200m、若干の登り勾配で真っ先にスプリントを開始したのはボウマン!!

モレマとフォルモロが必死に追いかけるけれども、ボウマンの背中を捉える事すら出来ない…!!

最後は後ろを確認して、余裕のガッツポーズを見せながらのフィニッシュ!!

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ボウマン、嬉しいグランツール初勝利!!

山岳賞の為に積極的に動き続け、終盤はデュムランと見事な連携を見せての勝利と、まさに完璧な内容!

モレマにフォルモロという難敵を降しての勝利と言うのも素晴らしい!!

 

そして、もう一人称賛しなければいけないのがデュムラン!

復活を期してエースとして臨んだ今大会、第4ステージで大幅にタイムを失って早々に「脱落」していたので、その後に走りにちょっと注目はしていた。

そして見せてくれた、この日の走り!

ボウマンの為に献身的なペーシングを続け、遅れてもペース走で復帰して、最後の最後までアシストとして働き続けるその走り。

2017年のジロ覇者という特大の肩書を持ちながら見せた、その走り。

素晴らしいなんて言う言葉では足りないぐらい、とても価値があり、称賛に値する、そして観る者の心を揺さぶる走りだったと思う。

総合争いから実質脱落したユンボが、この先のステージで一体どのような目標を立てるのか。

その中で、この日輝いたボウマン(ボウマンの山岳賞キープが当面の目標?)、そしてデュムランが、一体どのような走りを見せるのか。

ユンボの「逆襲」を楽しみにしていたい。

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