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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第10ステージ

ビニヤム・ギルマイ、その価値の証明

2週目の幕開けとなる第10ステージは、中盤まではフルフラット、中盤以降は絶え間ないアップダウンという、メリハリのあるレイアウト。

 

この日の逃げはローレンス・ナーセン(AG2Rシトロエン)、アレッサンドロ・デマルキ(イスラエル・プレミアテック)、マッテア・バイス(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)の3人。

メイン集団を牽引するのは総合リーダーのフアン・ロペス擁するトレック・セガフレード…ではなく、ステージ勝利を狙うアルペシン・フェニックスやアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオの選手たち。

序盤の平坦区間では逃げに最大で6分ほどのタイム差を与えつつ、アップダウン区間に入ってからは逃げを確実に射程圏に捉えていく。

 

残り32.1km、逃げとメイン集団のタイム差が1分ほどに縮まってくる中、先頭からデマルキが単独で抜け出す事に成功。

ただ、やはりメイン集団のペースアップが顕著で、デマルキは残り21km辺りで吸収され、レースは振出しに戻る。

ここから、ここまで落ち着いていたレースの様相は一変して、まるでワンデーレースのような激しい打ち合いが始まる事になる。

 

まずは残り12km、トビアス・フォス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)がヨス・ファンエムデンのアシストを受けてアタック。

この動きは1kmほどで吸収されてしまうけれども、昨年ジロ総合9位ながら今大会は既に大幅にタイムを失っているフォス、力はあるので(そして個人的に結構好きな選手なので)こうやって積極的に動くのは見ていて期待感がある。

残り10km辺りから、集団先頭ではイネオス・グレナディアーズのパヴェル・シヴァコフが牽引、そしてその背中にはリチャル・カラパス。

…まさか、隙あらばこのステージで秒差を取りに来るのか?

このシヴァコフの強力な牽引で、メイン集団は破壊されるとまではいかなかったけれども、縦に長く引き伸ばされている。

そんな「危険」な状況下で、残り9.3kmからアタックを仕掛けたのはアレッサンドロ・コーヴィ(UAEチームエミレーツ)。

この動きを潰したのはアンテルマルシェの選手…総合8位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォだ。

ポッツォヴィーヴォが先頭付近にいる、それは逆に言えば登れる選手しか残れないような状況になっている訳で…、当然ながらこの辺りでアルノー・デマール(グルパマFDJ)などのスプリンターは全滅。

残り6.5km、アンテルマルシェの選手がコースを間違えかけた事で集団が混沌とする中、飛び出したのはなんとサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)!

この動きに反応したのはダヴィデ・フォルモロ(UAE)、マチュー・ファンデルプール(アルペシン)、ジュリオ・チッコーネ(トレック)の3人。

こうして出来上がった新たな先頭集団から抜け出したのは…ファンデルプール!

残り4.8kmでアタックを仕掛けると、追い縋るフォルモロを引き離してそのまま独走を開始!!

これは…そのまま行きかねないぞ!?

しかし、そうはさせまいと集団を引っ張ったのは、ファンデルプールと並ぶこの日の優勝候補であるビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ)!!

ギルマイはためらわずにしっかりと踏んでファンデルプールを吸収。

こうしてまた一つになったメイン集団では、ライバルを突き放そうとアタックが続く…!!

ただ、どのチームも既にアシストをほとんど失っているような激しい展開が続いたためか、カラパスやマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)のアタックも決定的にはならず、そのまま30人ほどの集団でフィニッシュに雪崩れ込む事に。

 

ここまでの展開が激しすぎた影響か、大集団スプリントのようなハイペースではなく、お互いに牽制し合ったようなペースで残り1kmを通過。

残り400m、先頭を牽くのはポッツォヴィーヴォ、その背中にはしっかりとギルマイが付いている。

残り300m、ギルマイがそのまま早めのスプリントを敢行!!

反応するのはもちろんこの男、ファンデルプール!!

じわじわとギルマイの横に並んでくるファンデルプール、しかしギルマイもそこから勢いを失わない!!

残り30mほど、ファンデルプールが諦めて踏みを止めた…!!

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エリトリア超新星ギルマイ、グランツール初出場でのステージ勝利を達成!!

残り300mからという早めの仕掛けにも関わらず最後まで失速せず、あのファンデルプールが諦めて賛辞のサムズアップを送るという、とんでもない強さ!!

(※ファンデルプールのサムズアップ、J SPORTSツイート内の埋め込み動画、25秒辺りからの正面映像が分かりやすいかな)

いや~、いいものを見られた!!

そしてギルマイのこの勝利は、グランツール初のアフリカ出身黒人選手によるステージ勝利と言う、歴史的快挙!!

おめでとうギルマイ!!

 

ただ、表彰台でアクシデントが…。

なんと、祝福のシャンパンを開ける際に、勢いよく飛び出たコルクがギルマイの左眼を直撃…。

幸い大きなケガにはならなかっみたいだけれども、ギルマイは大事を取って第11ステージ出走前にリタイアを選択する事に。

う~ん、まず、アクシデントによるリタイアは率直に悲しい。

ただ、以前からアンテルマルシェはまだ若いギルマイを大事に扱っている(石畳初挑戦となった今シーズンの春のクラシック、ヘント~ウェヴェルヘム優勝後も無理させずに1ヶ月ほどレース間隔を空けたりしている)ので、その一貫した判断は評価に値すると思う。

既にもの凄い輝きを放っているギルマイだけれども、アンテルマルシェの長期的な視点が実を結び、その特大の才能がこれから一層の活躍を見せてくれる事を期待したい。