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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第11ステージ

伏兵による閃光のような一撃!!

これぞ「ド平坦」のお手本と言うべき、起伏が一切登場しない潔いレイアウト。

 

逃げ切りはまず間違いなく不可能な上に、山岳ポイントも存在しないので逃げるメリットが少ないという事で、アクチュアルスタート直後に飛び出したのはルーカ・ラステッリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)とフィリッポ・タリアーニ(ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)の2人のみ。

メイン集団はこの2人に最大でも5分ほどしかタイム差を与えない…だけでなく、横風分断を警戒した事で早い段階からペースアップを開始すると、逃げる2人を残り92kmで吸収してしまう。

そしてその直後、やはりと言っていいのか分からないけれども、残り89km辺りからメイン集団は分断、この日の優勝候補の1人であるカレブ・ユアン(ロット・スーダル)が遅れる姿も。

ただ、そこから決定的な破壊には至らずに、しばらくすると遅れていた選手も集団への復帰に成功する。

 

「こうなると、このまま何も起こらないでスプリントに突入するのかな~」なんて考えながら見ていると、残り58kmで意外な動きが。

メイン集団が穏やかな雰囲気になった隙をついて、ドリース・デボンド(アルペシン・フェニックス)が単独で抜け出す事に成功。

デボンドは追い風を上手く利用して、メイン集団から最大で1分30秒ほどのタイム差を作り出す。

ただ、やはり数で勝るメイン集団のコントロールには敵わず、残り30kmで40秒、残り20kmで20秒と、もはや捕まるのは時間の問題…に見えた。

しかし、残り17km辺りから何故かデボンドとメイン集団のタイム差がじわじわと広がっていく…?

残り15kmで30秒???

この不思議な動き、デボントはレース後に「スプリンターチームを混乱させるためにできる限り引きつけてから加速した」とコメント。

なんとデボンドによる攪乱作戦だったとは…!!

残り10km、デボンドのリードは14秒。

残り7km、22秒差。

残り5km、17秒差…、思ったより減り方が鈍いぞ…?

残り3kmで12秒差、流石に逃げ切りは厳しいか?

残り2kmで5秒差、デボンドは歯を食いしばりながら粘り続ける!

そして残り1.3km、遂にデボンドが吸収される。

元ベルギー王者のデボンド、クレバーさと強さが見事に融合した、素晴らしいチャレンジだった。

 

もうフィニッシュ地点まであと僅か、スプリントに向けていい態勢を築けているのは集団前方でアシストを3枚残せているアルノー・デマール(グルパマFDJ)か。

その後ろにはユアンが単騎で張り付き、そしてユアンと並走するような格好でクイックステップ・アルファヴィニルの選手が3人の隊列を組む。

残り400mの緩いコーナー、クイックステップのトレインがインコースのグルパマの前に上手く被せて、グルパマは少し苦しい格好に。

コーナーの立ち上がりで飛び出したのはマクシミリアーノ・リケーゼ(UAEチームエミレーツ)、ただ肝心のフェルナンド・ガビリアがいない…。

そして、このリケーゼの動きを見てデマールが発射、しかし残り距離はまだ300m近く、少し早くないか…!?

そのデマールの動きを上手く利用して飛び出したのは、リケーゼとはぐれながらも立て直したガビリア!!

失速するデマールを尻目にガビリアが先頭で良い伸びを見せる!!

このままガビリアの完勝かと思ったら、残り100mを切ってからチームDSMの黒いジャージがもの凄い勢いで位置を上げて来ている!?

そのまま黒い閃光がガビリアを躱して先頭でフィニッシュ…!!

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あれは…アルベルト・ダイネーゼだ!!

ワールドツアー未勝利だった24歳、ジロという大舞台で大金星!!

残り300mでは10番手ぐらいと決していい位置ではなかったのに、残り200m辺りからスルスルっと位置を上げていき、そして残り100mからはとんでもないスピードでフィニッシュまで突き抜けた!!

いや~、もの凄い伸びだった…!!

いいリードアウトがあった訳でもなく、位置取りが上手かった訳でもない。

ただ純粋に、スピードだけで並み居るトップ選手を捻じ伏せるとは…!

若手の有望株だとは認識していたけれども、ここまでのポテンシャルを秘めていると思っていなかったというのが正直なところ。

この勝利をきっかけに大きく飛躍しても何ら不思議ではない、そう思わせてくれる素晴らしい走りだった!