ファンデルプールのワンマンチームではない
3つの3級山岳が絶妙な位置にあるため、逃げ切り、終盤での抜け出し、小集団でのスプリントと、様々な可能性が考えられるレイアウト(流石に大集団スプリントは難しそう…?)。
アクチュアルスタート後、逃げを試みる選手による激しいアタック合戦が勃発。
1時間以上もアタック合戦を繰り返した事により、なんと最初の1時間の平均速度は55.3km/hという、とても登り基調とは思えないとんでもないスピードに…。
スタートから55.9kmの位置にある中間スプリントポイントの時点でまだ逃げが決まっていなかったおかげで、マリア・チクラミーノを着用するアルノー・デマール(グルパマFDJ)が先頭で通過してポイントを獲得、ライバルとの差をさらに広げる事に成功する。
そんな展開を経て、やっと出来上がった逃げ集団は25人という超大所帯。
アルペシン・フェニックスがマチュー・ファンデルプールを含む3人を送り込み、他にもバーレーン・ヴィクトリアス、アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ、チーム・ユンボ・ヴィスマ、チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ、バルディアーニCSF・ファイザネが複数人を乗せ、そして総合争いから脱落したウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)がメンバーに入っているこの先頭集団に対して、メイン集団は早々に大きなタイム差を与えて逃げ切りを完全に容認。
アルペシンが意外にもファンデルプールに牽引させている先頭集団で大きな動きがあったのは、残り55.8km。
この日2つ目の3級山岳の登坂でロレンツィオ・ロータ(アンテルマルシェ)がアタックして抜け出すと、ステファノ・オルダーニ(アルペシン)とハイス・リームライゼ(ユンボ)が追いかけて合流、先頭は3人に。
そして山頂を越えてから意外な動きを見せたのが、第2集団にいるファンデルプール。
なんと、先頭への合流を目指してアタックを繰り出す…?
え、先頭にチームメイトのオルダーニがいるのに?
そりゃ、単独で合流出来たら理想的かもしれないけれども…。
逆にライバルにチャンスを与える事にも繋がりかねない訳で、とんでもなくリスクのある作戦な気がする…。
最大限のマークを受けるファンデルプールのアタックはやはり決まらないまま、この日最後の3級山岳に突入。
ここで第2集団から抜け出したのは、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン)、バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、ルーカス・ハミルトン(バイクエクスチェンジ)、そしてケルデルマン。
そしてファンデルプールは、この登りで遅れていってしまった。
ケルデルマンを筆頭に強力なメンバーが揃った新たな第2集団だったけれども、先頭の3人とのタイム差は残り30kmで40秒、残り20kmでも約40秒、そして残り10kmでも依然40秒と、思うように縮まらない。
勝負権は先頭の3人に絞られた。
残り2kmを切ると、ここまで協調してきた先頭の3人も牽制モードに突入。
ここで面白い動きを見せたのは、スプリントでは不利と判断したのであろうリームライゼ。
残り1kmを切った直後の直角コーナーで故意に大きく膨らんで2人の背後を取ると、死角から早めのアタックを敢行!!
リームライゼの目論見は上手く嵌り、少しギャップを作る事に成功している!!
これを追いかけるのはスプリント力のあるオルダーニ、脚を使いながらもリームライゼとの差をじわじわと削っていく!
残り600m、3人はまたひと塊になって牽制モードに。
3人横並び…いや、リームライゼは後ろの入られるのを嫌がって、1人だけコースの逆サイドを走行したりしている。
さきほどからなんとか勝利を目指して工夫するリームライゼ、本当に面白い。
リームライゼは一旦2人と同サイドに戻って最後方にポジションを取ると、残り300mからスプリントを開始!
オルダーニとロータも当然反応!
慌てずにリームライゼの後方で力を溜めたオルダーニは、残り100mから飛び出して一気にリームライゼを躱す!!
最後まで力を温存していたロータが猛追を仕掛けるけれども、オルダーニが強い!!
オルダーニ、ジロという大舞台で嬉しいプロ初勝利!!
リームライゼの「奇策」にしっかりと対応し、更には力を温存し続けていたロータも寄せ付けないという、上手さと強さを見せつけた!!
地元イタリア最大のレースでプロ初勝利とは、ちょっとエモーショナルすぎるぞ…!
アルペシンはファンデルプールという「エース一本鎗」ではない、なんならそのファンデルプールに積極的にアシストをさせるのが、本当に凄い事だと思う。
来シーズンからワールドチームに昇格という話も出ているけれども、正直言ってちょっと遅すぎたぐらいだよね…。
ファンデルプールが中心にいながらファンデルプールのみではない、完全にワールドチーム級のその力。
ジロの残りのステージでも、まだまだ暴れ回りそうだ。