「脱落」した者の戦い
中盤以降は2級山岳スペルガ峠(登坂距離5.1km・平均勾配8.2%)とマッダレーナ峠(登坂距離3.6km・平均勾配7.3%)を含む周回コースを2周する、147kmと短いながらも過酷なレイアウト。
スペルガ峠は最大勾配14%、マッダレーナ峠は最大勾配20%と、急勾配区間が存在するかなりの難所。
果たして、どのような展開が待ち受けているのか…。
逃げ切り向けなレイアウトという事もあって、この日もスタート後のアタック合戦は激化して、なかなか逃げが決まり切らない流れに。
残り104km地点の3級山岳では、山岳賞争いで首位に立つディエゴ・ローザ(エオーロ・コメタ)が先頭通過してポイントを稼ぐことに成功。
そしてそこからのダウンヒル区間で、やっと11人の逃げが形成される事に。
メイン集団を動かしてきたのは、ボーラ・ハンスグローエ。
残り85km辺りからメイン集団の牽引を始めると、1回目のスペルガ峠でウィルコ・ケルデルマンがそのペースを一気に上げる!!
総合12位(2分51秒遅れ)のケルデルマンを、総合4位のジャイ・ヒンドレーと総合8位のエマヌエル・ブッフマンのためにアシストとして使ってくる、もの凄い積極策だ!!
この強烈な攻撃に逃げは吸収され、ギヨーム・マルタン(コフィディス)、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)など、総合上位勢もドロップしていく…!
ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)も、何度か離されそうになるけれども…、結局はいつも通りペース走で戻ってくる。
1周回目を終えて、先頭に生き残ったのは…わずか12人!?
- ケルデルマン
- ヒンドレー
- ブッフマン
- リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)
- ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタン・チーム)
- アルメイダ
- ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
- ヤン・ヒルト(アンテルマルシェ)
- ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
- ペッリョ・ビルバオ(バーレーン)
- フアン・ロペス(トレック・セガフレード)
- サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
2020年にジロ総合3位という実績を持つ選手が本気で牽引すると、こんなことになるのか…。
ケルデルマンはこのまま32km辺り、2回目のスペルガ峠の入り口まで牽引を続行。
既に総合タイムを失っていたからこそ見せたその走り、素晴らしかった…!
2回目のスペルガ峠に入ると、メイン集団では幾度かのアタックが掛かり、バラバラになったり吸収されたりを繰り返す展開に。
そんな中、残り28.6kmで決定的なアタックを見せたのは…カラパス!!
猛烈な勢いで飛び出すと、ライバルは誰も反応しない!!
追走集団はペースで追いかけるけれども、果たしてそれで大丈夫なのか…?
そして、遂にここでロペスが集団から脱落。
10日間着用したマリア・ローザとはここでお別れになりそうだけれども、ここまでの素晴らしい走りは称賛に値すると思う。
カラパスは追走集団に25秒ほどのタイム差を付けて、2回目のマッダレーナ峠に突入。
マッダレーナ峠に入ってすぐ、追走集団から抜け出したのはニバリとヒンドレー、そしてサイモン・イェーツも少し遅れて追いかける展開に。
3人はじわじわとカラパスとの差を縮めていき、ヒンドレー、ニバリ、最後にサイモン・イェーツの順番でカラパスへの合流に成功。
後続のアルメイダやポッツォヴィーヴォは15秒ほど後方、勝負権は先頭の4人に絞られたか。
残り4.6km、頂上にスプリントポイント(ボーナスタイム)が設定された起伏でアタックを仕掛けたのはサイモン・イェーツ!!
総合争いから既に脱落しているサイモン・イェーツを、他の3人は追わない!!
サイモン・イェーツはそのままフィニッシュまで快調に独走!!
サイモン・イェーツ、第2ステージに続いての今大会2勝目!!
落車の影響もあって総合争いからは脱落してしまったけれども、改めて見せつけるその強さ!!
正直言って、第9ステージで大きく遅れた後にリタイアする選択肢もあった気はする。
それでも、走り続けたからこそ掴み取ったジロ通算6勝目。
今年も望むものには届かなかったかもしれないけれども、その走りを称賛、そして祝福したい。
サイモン・イェーツのフィニッシュから15秒後、ヒンドレー、カラパス、ニバリの3人は、ボーナスタイムのために全力でスプリント!!
ヒンドレーが先着して6秒、そしてカラパスが4秒獲得に成功!
これで、カラパスが総合首位に!!
大きくシャッフルの掛かった総合上位陣のタイム差は以下の通り。
- 総合首位:カラパス
- 2位:ヒンドレー(+7秒)
- 3位:アルメイダ(+30秒)
- 4位:ランダ(+59秒)
- 5位:ポッツォヴィーヴォ(+1分1秒)
- 6位:ビルバオ(+1分52秒)
- 7位:ブッフマン(+1分58秒)
- 8位:ニバリ(+2分58秒)
- 9位:ロペス(+4分4秒)
- 10位:バルベルデ(+9分6秒)
まず、今日のかなり厳しい展開を経て、ロペスがまだこの位置に生き残っている事が一番の驚きかもしれない。
ボーラはヒンドレーが2位に浮上と、積極的な戦略を採った甲斐があったと言っていいはず。
そして、ボーラの攻撃でアシストを失いながらも総合首位に立ったカラパス。
ここからは、イネオスが自慢のアシスト陣をフル稼働させて、マリア・ローザを守りる事に全力を尽くす。
しかし、未だに1分差以内にヒンドレー、アルメイダ、ランダが残っているという、全く油断のできない状況でもある。
難関山岳ステージが続く3週目、総合争いが本当に楽しみだ。