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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第15ステージ

「イタリア希望の星」と呼ばれて

2週目の最終日は、コース後半に1級・1級・2級と3つのカテゴリー山岳が登場する山岳ステージ。

ただ、フィニッシュ地点となる最後の2級山岳は、頂上に近づくにつれて勾配が緩くなっていくので、あまり総合争いの舞台とはならないかも…?

 

「総合争いの舞台にならない=逃げ切りのチャンスが充分にある」という事で、ステージ勝利を狙う選手によるアタック合戦が激化して、なかなか逃げが決まり切らない展開に。

やっと逃げが安定した形に落ち着いたのは、最初の1級山岳に入る直前。

山岳賞争いで2位のクーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)を筆頭に、ダヴィ・デラクルス(アスタナ・カザクスタン・チーム)、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)、イバン・ソーサ(モビスター・チーム)、ティメン・アレンスマン(チームDSM)、バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)など、これはまた豪華なメンバーを含んだ25人。

一方のメイン集団は、総合リーダーのリチャル・カラパスを擁するイネオス・グレナディアーズがコントロール

先頭集団は4分強のタイム差を与えてもらって、1つ目の1級山岳に突入していく。

 

残り76.5km、先頭集団から飛び出したのはボウマン。

1級山岳の山岳ポイントが欲しいボウマンに対して、他の選手はその後も続く厳しいレイアウトを意識してか、無理には追いかけない。

ボウマンはそのまま1分ものリードを築いて山頂を先頭で通過して、山岳賞争いのトップに立つことに成功。

この日1つ目の目的を果たしたボウマンにダウンヒル区間で追いついたのは、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)とマーティン・トゥースフェルト(チームDSM)。

可能なら次の1級山岳でもポイントを稼ぎたいボウマンとしては、この形は願ったりな展開か。

 

先頭のオランダ人3人は、追走集団に1分30秒もの差がある状態で2つ目の1級山岳へと突入。

メイン集団は追走集団から4分遅れと、あまりタイム差を削る意志は見えてこない。

先頭集団が黙々とペースを刻む一方、追走集団はかなりのペースアップをして絞り込みが掛かっている。

残り50km、そんな追走集団からアタックを仕掛けたのはチッコーネ。

この動きに反応できたのはブイトラゴとアントニオ・ペドレロ(モビスター)の2人、少し遅れてカーシーとルイ・コスタUAEチームエミレーツ)が追いかけるような格好に。

チッコーネの集団がもの凄いペースで先頭に迫り、もう追いつく直前というタイミングで先頭から脱落したのは…なんとボウマン。

そして、チッコーネが引っ張る集団は先頭に合流すると、脚を休めることなくペースを維持。

この登坂速度にファンデルプールはたまらず脱落して、先頭はチッコーネ、ブイトラゴ、ペドレロ、トゥースフェルトの4人に。

その後、トゥースフェルトは一旦脱落、山頂手前でカーシーが先頭に追い付き、更にその後のダウンヒルでトゥースフェルトとコスタも先頭に追い付く事に成功する。

これで、先頭はチッコーネ、ブイトラゴ、ペドレロ、カーシー、トゥースフェルト、コスタの6人に。

メイン集団は6分近く後方、そこから飛び出したギヨーム・マルタンコフィディス)も先頭に追い付くようなペースではない。

勝負権は先頭の6人に絞られた形で、最後の2級山岳に突入していく。

 

登り口が急勾配で、フィニッシュに近づくほど傾斜が緩くなるレイアウトの2級山岳、残り21.4kmという早い段階から仕掛けたのはチッコーネ!

ダンシングで猛烈な加速を見せると、反応できたのはブイトラゴとカーシーのみ!

チッコーネは残り20km辺りからもペースアップを見せ、カーシーはそのペースに食らいつこうともがき、ブイトラゴは対照的にペースで追いかけようと試みる。

そして残り18.8km、チッコーネがまたしてもアタックを仕掛けて独走を開始!!

チッコーネは快調に飛ばし、残り15km地点で後続の2人に50秒ものタイム差を付ける!!

その後もチッコーネが快走を続ける中、残り13kmでカーシーが脱落。

カーシーはやはりチッコーネのアタックに反応しようとしたのが仇となったのか、その後ペドレロにも抜かれてしまい、4位でフィニッシュする事に…。

一方、ブイトラゴは表情を変えることなく淡々とチッコーネを追走。

残り13kmで1分差、展開次第では普通に追いつく可能性もありそうなギャップだけれども…この日はチッコーネが強かった。

まず、前提としてブイトラゴも相当強かった。

最後の最後まで踏みは衰えず、ペドレロと48秒ものタイム差でフィニッシュしているのだから、相当強かった。

それでも、この日の最強はチッコーネだった。

決して悪くないはずであるブイトラゴ以上のペースを維持し続ける!!

1分30秒ものリードを保ったまま残り1kmのゲートを通過すると、早くもガッツポーズを見せる!!

最後は恒例となったサングラス投げのパフォーマンスを見せながらのフィニッシュ!!

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苦しい時期を乗り越えたチッコーネ、その力を改めて証明する見事な独走勝利!!

落車や体調不良で結果が出ないここ数年の苦しみから解放されたチッコーネは、フィニッシュ後には涙を抑えきれない。

そんな「イタリア希望の星」を、地元イタリアのファンによる「ジュリオ!!」コールが包み込む。

1級山岳でも2級山岳でもレースを動かすアタックを繰り出し、そして最後はライバルを寄せ付けない圧巻の独走。

やはり、その才能は特大だ。

今シーズンで28歳と、もう決して「期待の若手」ではないかもしれない。

それでも、この素晴らしい才能の持ち主の今後に、大いに期待したい。

 

7分以上遅れてフィニッシュ地点にやってきたメイン集団では、やはり総合争いは巻き起こらず、勝負は3週目へと持ち越しに。

1分差以内に4人がひしめく大混戦、過酷なレイアウトが設定された最後の6日間で一体どのような勝負が繰り広げられるのか、本当に楽しみだ。