翼を授かった黄色いジャージ
大きな起伏は登場しないけれども、4級山岳が6つ、そしてその他にもカテゴリーのついていないアップダウンが断続的に登場する、平坦と丘陵どちらと表現するか迷うようなステージ(一応、公式には平坦扱い)。
アクチュアルスタート直後、この日もまた山岳賞ジャージを着るマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック!
コルトに追随したのはアントニー・ペレス(コフィディス)のみで、メイン集団はこの2人の逃げをあっさりと容認。
コルトとペレスはしっかりと協調体制を築き、山岳ポイントはコルト、中間スプリントポイントはペレスが獲得する流れで、スムーズに逃げ続ける。
結果としてコルトはこの日6つの山岳のうち、5つで先頭通過に成功して、この先のステージで山岳賞を守り抜くための準備を着実に進めていく。
残り45km、先頭のペレスがアタック。
コルトはもう山岳ポイントを十分に獲得したと判断したのか、全く反応しない…と言うか、直前に2人が少し話し込む様子もあったので、この流れにすると「協定」を組んでいたかも?
単独先頭になったペレスとメイン集団とのタイム差はこの時点で1分20秒ほど。
流石に逃げ切りは厳しそうだけれども、ステージ敢闘賞に向けての一人旅だ。
残り12km地点から始まるこの日最後の4級山岳(距離900m・平均勾配7.5%)、未だ逃げ続けるペレスが先頭で突入するけれども、もうメイン集団との差は10秒を切っている。
メイン集団を猛烈な勢いで牽くのはネイサン・ファンホーイドンク(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、そのまま一気にペレスを飲み込んでいく。
ペレスを吸収すると、牽引はティシュ・ベノート(ユンボ)に交代。
…ん!?
その背中に付いていけているのは、チームメイトのワウト・ファンアールト、ヨナス・ヴィンゲゴー、クリストフ・ラポルト、プリモシュ・ログリッチの他には、イネオス・グレナディアーズのアダム・イェーツ、ゲラント・トーマス、ダニエル・マルティネスだけ…!?
そして、ベノートの牽引で更に絞り込みが掛かり、ベノートが仕事を終えるとマイヨジョーヌを着るファンアールトが先頭に、続くのはアダム・イェーツとヴィンゲゴーのみという、とんでもない状況だ!
そしてここからファンアールトが更に加速!!
山頂の手前、ファンアールトが2人を千切り独走を開始!!
10秒ほどの差を付けて、ファンアールトは残り10kmの道のりを逃げ切ろうと全力で踏み続ける!!
後続集団は、総合勢はなんとかほぼひと塊になって追走しているけれども、ユンボ勢が重しとなってペースが上がらない。
そして、スプリンター勢はほぼ壊滅状態に…。
下り基調、そして追い風も味方して、ファンアールトは順調に残り距離を減らしていく!
残り2kmで追走集団との差は20秒、これはもう追いつかない!!
ここから少しづつタイム差は縮まり始めるけれども、そのペースはあまりにも緩やか。
最終コーナーを抜けて、残り100mを切ると勝利を確信!!
翼を広げるようなパフォーマンスを見せてから、渾身のガッツポーズ!!
マイヨジョーヌによる衝撃の独走劇!!
ファンアールト、「4度目の正直」となる圧巻のステージ勝利!!
いやいやいや、強すぎ!!
ここまで3連続ステージ2位、そしてこの日は全員を千切っての独走…!
確かに、我々は昨年のツールでもファンアールトの「異常さ」を見せつけられている。
とは言え、意味が分からない。
本当に意味が分からない。
スプリントポイントも170ptまで積み上がり、2位のファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・アルファヴィニル)との差は早くも61ptにまで広がっている。
一体、どこまで突き進むのか。
ファンアールトの果てしなき才能、本当に楽しみだ。