早くも「指定席」へ
第6ステージは、小刻みなアップダウンが連続する、少し展開が読みにくいレイアウト。
特に、フィニッシュ手前の3級山岳、そして登り勾配のフィニッシュがややこしい…。
逃げ向きな気もするし、パンチャーが狙いそうな気もするし、更に言えばタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を筆頭に総合勢でも仕掛けたがる選手がいるかもしれない。
アクチュアルスタートの後、やはり逃げに適したレイアウトという事で、今大会初めてとも言えるアタック合戦の様相に。
と言うか、なんだこのカオスな状況は。
おいおい、総合1位のワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)が逃げに乗りたがっているぞ…。
更に、ポガチャル(…!?)まで飛び出そうとしているし…。
1時間以上のアタック合戦を経て、出来上がったのは以下の3人による強力な先頭集団。
結局、マイヨジョーヌを着たファンアールトが逃げてる…!
そう言えば、昨年のツールでもマイヨジョーヌを着たマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が逃げていたな…。
シクロクロス勢は動き続けないと気が済まないのか、それともこの2人がちょっと「おかしい」のか…。
序盤はそんな「荒れた」感じだったけれども、逃げが決まってからはある程度落ち着いた展開に。
ただ、ペースがもの凄く速い。
先頭では実力者3人がガンガン回してペースを維持、そしてメイン集団も流石にファンアールトに大きなタイム差を与える訳にはいかないので、あまりペースを緩めずに追走する流れに。
残り66km、フルサンが先頭から脱落(メカトラかと思ったら、トイレタイムだったっぽい…)。
残り31km、なんてことはない緩やかな丘で、今度はシモンズが脱落。
かなりの実力者であるシモンズがこの離され方をするという事は、ファンアールトのペースがとんでもなく速いのか…。
ただ、メイン集団は最大で4分ほどあったタイム差を、しっかりと1分強にまで縮めてきている。
終盤のアップダウンが険しくなる区間に入ると、ファンアールトとメイン集団のタイム差は一気に縮まっていき、残り11km辺りで遂にファンアールトも吸収される。
ここまでのペースアップの影響で、メイン集団は結構小さくなっているぞ…。
残り9km、コーナーの出口で落車が発生。
あぁ、総合上位につけているアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)が巻き込まれてしまった…!
ウラソフはチームメイトの助けを借りて、タイム差を取り戻そうと必死の追走を仕掛けるけれども、メイン集団のペースも上がっている状況。
最終的に、ウラソフは1位から5秒遅れとほぼタイムを失わないでのフィニッシュには一応成功するけれども、もしメイン集団に残れていたらステージ上位(上手くいけばボーナスタイム獲得)を狙える可能性もあっただけに残念だ…。
残り6km辺りから始まる3級山岳に入ると、チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコやユンボの牽引で更なる絞り込みが掛かる中、アレクシー・ヴィエルモ(トタルエネルジー)がアタック。
ただ、メイン集団はUAEが中心となって落ち着いて追走をして、残り1.6kmから始まるフィニッシュへ向けた登りに入った直後にヴィエルモを吸収する。
集団を牽引するのはUAEの隊列、先頭からラファウ・マイカ、ブランドン・マクナルティ、そしてエースのポガチャルという万全の並び。
ポガチャルの背後には、マイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジ)やトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)が張り付いている。
残り1km、勾配が上がった区間でマイカが仕事を終えて脱落し、残すは緩めの登り勾配。
残り400m、マクナルティも仕事を終えて「さあ、ポガチャルが発射か」というタイミングで仕掛けたのは、なんと前日の落車で肩を脱臼したはずのプリモシュ・ログリッチ(ユンボ)!!
しかし、その背中にはピッタリとポガチャルがくっついていく!
残り200m、ポガチャルが加速!!
ログリッチは軽々と追い抜かれ、そして少し後方からマシューズが猛追をするけれども、これは少し遠すぎる…!
最後は振り返る余裕を見せてのフィニッシュ!!
これぞ王者の貫禄、王者の実力!!
圧巻の登りスプリントでポガチャルが今大会初勝利!!
そして、ポガチャルは早くも総合首位の座へ…!!
強い。
強すぎる。
(少し位置が悪かったとは言え)マシューズが追いつけないとなると、ちょっと登りスプリントでは誰も(少なくとも総合勢は)手が出せない気が…。
早くも鎮座した総合首位という「指定席」、昨年のようにこのまま隙を見せずに危なげなく守り抜くのか。
それとも、ライバル達の反撃がポガチャルに届くのか。
総合争い、本格開戦は第7ステージのラ・「シュペール」・プランシュ・デ・ベルフィーユからだ。