フランスの灯を繋いだのは…
第19ステージは4級山岳が2つだけと、集団スプリント待ったなしなレイアウト。
ただ、ここ数年のグランツールでは、最終盤に登場する平坦ステージで逃げ切りになるパターンも散見されている。
ここまで集団スプリントが極端に少ない今大会だけれども、疲弊したスプリントチームは逃げを捕まえる事が出来るのか。
この日の逃げは、クイン・シモンズ(トレック・セガフレード)、ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)、ミケルフレーリク・ホノレ(クイックステップ・アルファヴィニル)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)、タコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)の5人。
大きく逃がすとかなり厄介な事になりそうな実力者のみの逃げに対して、メイン集団は最大でも1分30秒ほどのリードしか与えない。
更に、横風分断の危険を避ける為に多くのチームが集団前方をキープしようとしたため、メイン集団はとんでもないペースで巡行して、残り125km辺りでは逃げまで約5秒という位置にまで急接近してしまう。
このタイミングで、ポリッツはメイン集団に戻る事を選択。
ポリッツという牽引力に長けた「危険分子」が欠けた事で、逃げる4人は逆にまた1分弱のタイム差を許される展開に。
残り55km辺りから始まる1つ目の4級山岳では、シモンズとモホリッチが先頭からの抜け出しに成功。
40秒ほど後方のメイン集団も、なんとここで集団が真っ二つに割れた模様。
この日ステージ優勝を狙っているであろう、ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ)やマッズ・ピーダスン(トレック)と言った選手が後方の集団に取り残されてしまっている。
ただ、残り37kmから始まる2つ目の4級山岳を越えると、シモンズは吸収される。
一旦振出しの戻った事で散発的なアタックが掛かる状態になり、なんとそこにはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の姿が!?
流石にこのアタックをは許される訳もなく、ワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)がしっかりと潰しに行く。
最終的に、フレッド・ライト(バーレーン)、ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック)、アレクシー・グジャール(B&Bホテルス KTM)という、新たな先頭集団が形成される格好に。
その後、遅れていた集団もなんとかメイン集団へと復帰。
一応、先頭集団とスプリントを狙うメイン集団という、スプリントステージらしい展開で最終盤へと突入していく。
最大で30秒ほどのリードを貰っていた逃げ集団だったけれども、残り10kmになるとメイン集団とのタイム差は10秒強に。
さて、どこで捕まえるかと思って見ていたら、ここからなかなかタイム差が縮まらない。
メイン集団を牽くのはクイックステップやユンボのアシスト選手。
…ユンボはファンアールトに牽引させるという事は、もしかしてクリストフ・ラポルトで勝負…?
残り3km、メイン集団を牽くのはロット・スーダルとアルペシン・ドゥクーニンク。
ただ、先頭とのタイム差は依然10秒のまま…。
先頭の3人を視界に捉えてはいるけれども、これは…追いつくのか?
残り2km、トタルエネルジーも牽引に加わった事でタイム差は4秒に。
それでも、先頭はライトが未だに脚を残していて、ここからまだ粘る…!!
残り1.5km、なんとここでメイン集団からラポルトがまさかの早駆け!!
ラポルトは一気に先頭の3人にジョイン、メイン集団はまだ微妙にギャップがあるぞ…!
残り1km、先頭集団を牽き続けていたライトが、そのままアタックする強さを見せる!!
グジャールは脱落してストゥイヴェンが追走、ラポルトはその背中に上手く乗っている。
緩い登り勾配の中、残り500mでストゥイヴェンがライトを捕まえると、その瞬間にラポルトがロングスプリントを開始!!
ライトとストゥイヴェンを一気に引きちぎるラポルト!!
メイン集団もまだ少し後方、追いつける気配は…無いぞ!!
ラポルトは残り50mで後方を振り返り、勝利を確信!!
この展開に本人も驚きを隠せず、頭を抱える仕草を見せながらのフィニッシュ!!
意表を突いた早駆けからの、鮮やかな飛び出し!!
ラポルトが今大会フランス人初となるステージ勝利!!
ここしかないという絶妙なタイミングで抜け出して先頭にジョイン、そしてライトとストゥイヴェンの動きを巧みに利用しての飛び出し!!
いや~、こんな展開は予想していなかった!
今シーズンからユンボに加入して、春先から明らかに一皮むけた走りを見せていたラポルト。
今大会も、アシストとしてヨナス・ヴィンゲゴーとファンアールトの為に献身的に働き続け、そしてその働きが報われるかのように、自身初となるグランツールでの勝利をこんな劇的な形で飾るとは…!
ラポルトにとっても、ユンボにとっても、本当に大成功の移籍だった。
そして、これで1999年以来となる「ツールでのフランス人未勝利」という事態は回避と、開催地フランスとしても胸をなでおろす勝利に。
期待されていた集団スプリントとはならなかったかもしれないけれども、色々と激熱の展開が見られたから、個人的にはとても満足だ。