文字通り「頭一つ抜けた」強さ
オランダ開催最終日は、前日以上にフラットな超平坦ステージ。
一応4級山岳が1つあるけれども、登坂距離330m・平均勾配3.7%の「起伏」を4級山岳と言い張るその姿勢…嫌いじゃないよ。
アクチュアルスタート直後に飛び出した選手の中には、なんと「逃げ王」トーマス・デヘント(ロット・スーダル)の姿が。
レース後に「逃げる予定では無かったけど」と語ったデヘントや、山岳賞ジャージを着用するユリウス・ファンデンベルフ(EFエデュケーション・イージーポスト)を含んだ7人の逃げは、そのまますんなりと集団に容認される格好に。
メイン集団の牽引は、アルペシン・ドゥクーニンクのみが積極的だった前日とは違い、ボーラ・ハンスグローエやトレック・セガフレードというスプリントチームがしっかり加わり、逃げ集団とのタイム差を3分前後でコントロール。
ただ、平穏で「何もない」ステージとはいかず、この日も複数の落車が発生。
イスラエル・プレミアテックのエースと目されていたマイケル・ウッズも落車に巻き込まれ、一旦再走してけれども、脳震盪のためにリタイアとなってしまった。
残り56km地点の4級山岳はデヘントが先頭、続いてファンデンベルフの順で通過。
デヘントが2pt、ファンデンベルフが1ptの山岳ポイントを獲得して、前日も2ptを獲得していたファンデンベルフが山岳賞ジャージを守る事に成功。
残り23kmの中間スプリントポイントもデヘントが先着して、デヘントはこれで脚を緩めてメイン集団に吸収される。
他の6人も残り11.3kmでメイン集団に捕まり、レースは集団スプリントへと向かっていく。
残り2km、集団前方で隊列を組んでいるのはボーラ、アルペシン、トレック、チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ、UAEチームエミレーツ、チームDSMといった辺り。
残り1km、先頭はアルペシンのアシスト選手が牽いているけれども、その背中にはUAEやボーラの選手が連なっている。
残り700m、UAEとボーラのアシストが1枚ずつ剥がれて、先頭はファン・モラノとパスカル・アッカーマンというUAEのコンビ。
ただ、この距離で最終発射台モラノの全力牽きは、前日と同様に少し早すぎる…。
残り300m、やはりアッカーマンは早すぎるタイミングでのスプリント開始、その背中にはアシストの守られたティム・メルリール(アルペシン)、しかしメルリールはここでメカトラか、痛恨の失速…。
ダニエル・マクレイ(アルケア・サムシック)、ブライアン・コカール(コフィディス)が先頭のアッカーマンを捉えようとするその瞬間、逆サイドからダニー・ファンポッペル(ボーラ)の超絶リードアウトを受けたサム・ベネットが一気に先頭へ!
残り200mという絶好の位置からスプリントを仕掛けたベネットは、そのままフィニッシュラインまで駆け抜ける!!
最高のリードアウトから、盤石のスプリント!!
2日連続でベネットとファンポッペルのホットラインが炸裂!!
完全に調子を取り戻したベネットを誰も止められない!
そしてこの日も特筆すべきは、ファンポッペルの素晴らしいリードアウト!
残り300mの時点では6~7番手の位置にいたはずなのに、前方に誰もいないラインを選んでベネットを引き上げたその判断と加速力は、まさに勝利の立役者と評していいと思う。
ベネットとのコンビ、これは簡単には崩せないかも…?
と言いつつ、この日いい意味で気になったのはマッズ・ピーダスン(トレック)の走り。
ベネットの背後という選択をして、さあベネットを右から抜きに掛かろうとしたその瞬間、ベネットとマクレイとの間のスペースが埋まった事で、一旦減速してしまっていた。
しかし凄いのはここからで、ベネットを左から抜こうと方向転換して、ベネットには届かなかったけれどもマクレイを抜いての2位フィニッシュになっている。
「たられば」を言っても仕方がないけれども、減速していなかったらステージ勝利もあり得たのでは…?
ベネットを破る有力候補として、注目していきたい。