初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【レース感想】イル・ロンバルディア2022

モニュメントに相応しい激熱なマッチアップ!!

モニュメントの一つ、「クライマーズ・クラシック」ことイル・ロンバルディア

前年と違いベルガモをスタートしてコモ湖へとフィニッシュするレイアウト…なんだけれども、今までのコモ湖フィニッシュと決定的に違うのは、超激坂である「ムール・ディ・ソルマーノ」を通らないという事。

その代わりに終盤が周回コースになり、「サンフェルモ・デッラ・バッターリア」→「チヴィリオ」→「サンフェルモ・デッラ・バッターリア」と、仕掛け所となり得る登りが3連続で登場する格好に。

そして総獲得標高は…なんと4,852m

やはりどう考えてもクライマーの争いになるしかないこのレース、主な有力選手は大体こんな感じ。

  • 昨年の覇者、最強のオールラウンダーとして君臨するタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ
  • ツール・ド・フランスでポガチャルを破ったヨナス・ヴィンゲゴー(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位、そして前哨戦ではポガチャルに勝ったエンリク・マス(モビスター・チーム)
  • 2019年の覇者、機を窺ったアタックに定評のあるバウケ・モレマ(トレック・セガフレード
  • 昨年3位、強力なチームメイトを率いるアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ
  • 一昨年に見事なアシストをしながら3位に入ったアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)

有力選手が多くて目移りする中、自分の予想がこちら。

登坂力は当然必須、そしてフィニッシュが平坦な事を考えると、やはりポガチャルが中心かな。

 

アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)にヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタン・チーム)という、2人の偉大な選手の現役最終出走となる今大会。

バルベルデは過去に2位が3回、ニバリは優勝が2回と、2人ともロンバルディアとの相性は抜群だっただけに、最後にまた活躍する姿を期待してしまう。

 

この日の逃げは10人、メイン集団とのタイム差は最大で5分半ほど。

ただ、メイン集団はマドンナ・デル・ギザッロ手前の平坦区間でグングンとペースを上げて、先頭集団との差を一気に縮めてくる。

結局、マドンナ・デル・ギザッロの登り口…残り71kmで逃げは吸収されて、レースは一旦振出しに戻る事に。

登坂の序盤ではイネオスやユンボが積極的な牽引を見せたけれども、残り62kmを過ぎるとUAEがキレイな隊列を組んで集団の先頭へ出てくる。

生き残っている6人全員を先頭に並べるUAE、先頭を固定で牽くのはペース走の達人ジョアン・アルメイダ。

グランツール総合上位常連のアルメイダによる絞り込みはやはり強烈で、ギザッロ教会の鐘の音が響く中、メイン集団から多くの選手が脱落していく…!

アルメイダの他に、まだラファウ・マイカダヴィデ・フォルモロ、マルク・ヒルシ、ディエゴ・ウリッシと強力なアシストを残すUAE、ポガチャルのために盤石のレース運びだ。

 

残り41km辺りでアルメイダが仕事を終えて後退すると、幅が広い車線でボーラ、ユンボ、イネオス、モビスター、チームDSMといったチームもUAEと共に並ぶような格好に。

サンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りに向けてそこからまた道幅が細くなる中、どのチームも主導権を握ろうと早くもバチバチと火花が散っている。

細かいアップダウンの連続、そしてテクニカルなコーナーが続いたことでメイン集団は少し千切れ気味という状況で、いよいよサンフェルモ・デッラ・バッターリアに突入。

登りで集団先頭を牽くのはまたしてもUAE、フォルモロ、ヒルシ、マイカ、ウリッシと未だ強力なアシスト陣が健在、そしてその後ろには当然ポガチャルが鎮座している。

 

UAEが主導権を握ったまま1度目のサンフェルモ・デッラ・バッターリアを通過、そして直後に始まるのはこの日最大の勝負所と目されるチヴィリオの登り。

ボーラが一旦先頭に出てペースメイクしたり、ニバリが集団から遅れたりといった出来事もあったけれども、仕掛けてきたのはやはりUAE

イカのペースアップで集団をバラバラに千切ると、残り19.1kmからポガチャルが満を持してアタックを繰り出す!!

この動きに反応できたのは…マスのみ!

有力な対抗馬と目されていたヴィンゲゴーは少し厳しそうだ…!

先頭に飛び出した2人のペースが少し緩むと、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)が一旦追いつくけれども、マスとポガチャルがアタック合戦を繰り広げるとランダはまた離されてしまう。

ポガチャルとマス、明らかにこの2人の力が飛び抜けている!

 

先頭は2人のままチヴィリオの頂上を通過、その後の下りでランダが再度合流。

追走集団はロマン・バルデ(DSM)、セルヒオ・イギータ(ボーラ)、ヴィンゲゴー、アダム・イェーツ、モレマ、そしてバルベルデ(!)などの有力選手が集まっているけれども、ちょっと追いつける雰囲気ではなさそう。

スプリント力で明らかに優位に立つポガチャルに対して、マスとランダは最後のサンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りでアタックが必須な状況だ。

 

サンフェルモ・デッラ・バッターリアの登りで仕掛けたのは…やはりマスだ!

もの凄いキレの…恐らく自分が今まで見てきたマスのアタックで最高のものと言える、素晴らしい勢いのアタックを繰り出す!!

しかし、ポガチャルは難なく張り付いている…!

一呼吸おいて、マスが再びアタックを繰り出すけれども、やはりポガチャルは離れない。

そして逆に、頂上付近でポガチャルがカウンターアタックを見舞う!

ただ、マスもこの動きにしっかりと対応!

結局、ポガチャルとマスは離れないまま、2人でフィニッシュへと向かっていく。

 

先頭の2人は後ろのランダを気にしながら、あまり牽制状態には陥らずに残り1kmのゲートを通過。

ここからマスはポガチャルの「付き位置」を選択、頑なに前に出ようとしない。

ポガチャルもそれは織り込み済みか、ランダとの距離に気を配りつつ、落ち着いた様子でマスの動きを待つ。

残り200m、マスがスプリントを開始!

ポガチャルも合わせて加速、一旦2人はほぼ横並びに!!

残り50m、マスが少し横に「逸れる」ような動きを見せてしまい、しっかり直進していたポガチャルが少しだけ前へ!

改めてマスもしっかり踏み直す、しかしポガチャルも勢いはそのまま!

ポガチャルは残り10mで勝利を確信…!!

Embed from Getty Images

盤石のレース運びで、ポガチャルが堂々のモニュメント2連覇!!

今シーズンも最高の結果でシーズンを締めくくる!!

先に言及した方がいいかな、はっきり言ってマスはかなり強かった。

サンフェルモ・デッラ・バッターリアでのアタックも、最後のスプリントも、ポガチャル以外の相手なら十分すぎるぐらい、相当に強力なものだったと思う。

苦手だったスプリントでも明確に成長の跡が見える、本当に素晴らしいものだった。

その上で、ポガチャルのこの強さ!

その圧倒的な登坂力、そして総合系選手としては破格のスプリント力は、やはり「世界最強」と称されるのに相応しい。

今シーズンはツールで敗れたとはいえ、やはりこの偉大な王者はちょっと別格の存在だ。

そして、そのポガチャルを見事にサポートしたアシスト陣の働きも、この日は本当にパーフェクトだったと評していいと思う。

ライバルチームにほとんど主導権を譲らせず、最後はポガチャルのアタックをこれ以上ない形でお膳立てしてみせた。

数年前までは「チーム力に不安がある」なんて声が強かったけれども、今や明確な最強チームの一つだ。

 

3位ランダ、4位イギータ、5位カルロス・ロドリゲス(イネオス)がフィニッシュした後、5人の小集団がフィニッシュに近づいてくる。

先頭でスプリントをしているのは…バルベルデ

スプリントで格の違いを見せつけつつ、最後は観客に手を振る余裕を見せながらフィニッシュ!

引退レースで集団の先頭を獲って6位とは…最後の最後まで本当に凄すぎる。

そして、同じくこの日を最後に引退するニバリも、24位でフィニッシュ。

この日のハードな展開を、チヴィリオまではメイン集団でこなしたのだから、こちらもまた素晴らしい走りでの現役引退だ。

 

これにて、今シーズンはほぼ終了!

このイル・ロンバルディアで、今シーズンのワールドツアーは全日程を終了。

プロシリーズも10/9のパリ~トゥール、10/11~10/18のツール・ド・ランカウィ、そして10/16のジャパン・カップの3つのみで、あとは各コンチネンタルのレースが僅かながら残っているだけだ。

そんな状況下で、未だに最終結果が下っていないワールドチーム残留争い。

来年以上に「本気モード」のチームが参戦する事になるジャパン・カップ、とんでもないことになりそうだ。

 

何はともあれ、主要レースはひとまず終了。

最後の最後まで熱いレースが続いて、今シーズンも本当に面白かったと言っていいと思う。

残りのレースもしっかり堪能しつつ、そして来シーズンへと思いを馳せながら、オフシーズンも「楽しんで」いきたい。

 

それでは、また!

Embed from Getty Images