画面越しにも伝わってくる「熱」
日本唯一のUCIプロシリーズレース、ジャパンカップが3年振りの開催!
現地観戦をしてみたい気持ちもあったけれども、スケジュールの都合(釧路から行くのはなかなか大変…)で今回は残念ながら断念する事に(11月の「さいたまクリテリウム」は行く予定)。
で、今回の記事は、レース展開をガッツリ追いかける「レースレポート的」な普段のレース感想記事とは、方向性を変えてみようと思う。
画面越しに見ていて感じた事や、色々と考えた事なんかを書いていこうかなと。
纏まりのない、何が言いたいのかよく分からない内容になってしまうかもしれないけれども、是非お付き合い頂ければ。
10/15(土):ジャパンカップ・クリテリウム
まず10/15は、宇都宮市街地の中心部で開催される「前座」、ジャパンカップ・クリテリウム。
それに先立って行われる「前座の前座」、高校生による「ホープフル・クリテリウム」や、ガールズケイリンの選手による「ガールズケイリン・スペシャルレース」の段階で、選手から「本気」の熱量が感じられて、短いながらも見ごたえのあるレースが繰り広げられている。
沿道いっぱいに並んでいるお客さんたちも、既に結構な熱量だ。
「場を温める」催しとして、理想的な物だったと思う。
そして、この日のメインイベントであるジャパンカップ・クリテリウム…の前に、昨年限りで現役引退をした偉大なレジェンド、別府史之さんの引退セレモニーが。
昨年は新型コロナウィルスの影響でジャパンカップが開催されなかったけれども、「ジャパンカップで現役を終えたかった、日本に帰ってきて自転車選手を辞めたかった」と…。
1年越しとは言え、こうやってファンに挨拶する場が出来た事は、別府さんにもファンにも素晴らしい事だったと思う。
別府さん、改めてお疲れさまでした。
さて、改めてこの日のメインイベント、ジャパンカップ・クリテリウムがスタート。
序盤から、バーレーン・ヴィクトリアス、トレック・セガフレード、ロット・スーダル、EFエデュケーション・イージーポストといったワールドチームが、いい意味で積極的すぎるぞ…。
結果として、とても前座のクリテリウムとは思えないほど、ハイスピードでハイテンションな、アタックが多発する落ち着かないレースに。
最終周回でティム・ウェレンス(ロット)のアタックをニールソン・パウレス(EF)が追いかけるシーンなんかは、現地解説の栗村さんが「なんだこれは…ツール・ド・フランスか!」と興奮気味に言うぐらい、本当に凄いシーンだった。
そして最後は結局スプリント、前回(2019年)大会覇者のエドワード・トゥーンス(トレック)とアクセル・ザングル(コフィディス)の勝負は…トゥーンスが貫禄勝ち!
エドワード・トゥーンス(TFS)がみごと2連覇🏆🏆
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) October 15, 2022
🥈アクセル・ザングル(COF)
🥉岡篤志選手(EFE)
Cycle*2022 ジャパンカップ クリテリウム
【宇都宮市大通り周回コース】33.75km
〜J SPORTSオンデマンドでLIVE配信中〜https://t.co/sXXbhHNGhd#JCUtsunomiya #jspocycle pic.twitter.com/M45FqC5jK7
流石…と言うか、直前のパリ~トゥールで2位に入った選手がガチでスプリントをしたら、当然の結果ではある。
落ち着かないレースをしっかりコントロールしたトレック、そしてしっかり「本物」のスプリントを見せてくれたトゥーンス。
そして他のワールドチームも含めて、クリテリウムの時点でこれだけガチなレースをやってくれたのは、本当に素晴らしすぎやしないか。
「ただの前座」以上の価値が、間違いなくあったと思う。
10/16(日)ジャパンカップ
宇都宮市森林公園を中心としたコースで行われる、日本で唯一のUCIプロシリーズレースであり、アジア最大のワンデーレースとしても名高いジャパンカップ。
1周10.3kmの周回コースを14周、合計距離は144.2km、そして総獲得標高は2,590m。
「150km以下と短い距離の割に、結構登る」というのが率直な印象で…、その要因となっているのが、古賀志林道の登坂。
古賀志林道頂上の手前1kmで大体100mの高さを駆け上がる…要するに平均勾配10%ほどの区間が1km続く(手前の緩斜面区間と合わせると登坂距離1.4km・平均勾配6.8%)という、なかなかの厳しさだ。
当然、勝利を狙えるのは登坂力を有するクライマーや、登りでのアタック力に優れたパンチャー系の選手。
前日のクリテリウムでも元気だったウェレンスやパウレスを筆頭に、他にもジュリオ・チッコーネ(トレック)にギヨーム・マルタン(コフィディス)といった世界トップクラスの選手が参戦している今回は、激熱の展開が期待されていた。
そんな期待通り…いや、期待をはるかに上回るレースが繰り広げられる。
序盤からトレックが集団を高速牽引し、対抗して他のチームも積極的にアタックを繰り出す。
落ち着かない展開のまま終盤に差し掛かり、前述のウェレンス、パウレス、チッコーネ、マルタンや、シモン・ゲシュケ(コフィディス)、アントンワン・トールク(トレック)、ハーマン・ペルンシュタイナー(バーレーン・ヴィクトリアス)、アンドレア・ピッコロ(EF)といった精鋭のみが生き残り、そこから更に激戦を繰り広げる。
登坂強者のみが生き残る中、平坦区間でアタックの間隙を縫って、単独での飛び出しに成功したのはパウレス。
そのまま14km独走する強さを見せつけての勝利!
単独先頭のニールソン・パウレス(EFE)、追走から抜け出したアンドレア・ピッコロ(EFE)、ダイボール(UKO)の順でフィニッシュ
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) October 16, 2022
Cycle*2022 ジャパンカップ サイクルロードレース
【宇都宮市森林公園周回】
〜J SPORTSオンデマンドでLIVE配信中〜https://t.co/45rQ0wu8cq#JCUtsunomiya #jspocycle pic.twitter.com/1OS0RiUQGn
流石は前年のドノストア・サンセバスティアン・クラシコア勝者、登坂力と勝負勘、そして独走力と、勝つための要素をバランスよく備えていた。
そして、2位には同じくEFからピッコロ、3位はベンジャミン・ダイボール(チーム右京)となり、EFは見事ワンツーフィニッシュを飾る事に。
今回のEFは、予定されていたリゴベルト・ウラン、ルーベン・ゲレイロ、ジェファーソン・セペダが不出場となったけれども、代わりに下部組織に所属している岡篤志選手と門田祐輔選手が出場する事になり、中根英登選手も含めて3人の日本人選手が出場していた。
岡選手と門田選手は中盤以降に集団を牽引する役割を担い、中根選手はメカトラで遅れたピッコロの集団復帰をアシストと、それぞれがしっかりと仕事をこなしていたらしい。
その結果として、EFのワンツーフィニッシュである。
EFというトップカテゴリーのチームが、日本ロードレース界を支えてきたNIPPOとタッグを組んで下部組織を構成し、そこに所属する日本人が今回のような機会をしっかりと活かして、チームの勝利に貢献する。
現状の日本ロードレース界にとって、およそ考え得る最高の流れだったと、個人的には思う。
日本人という括りで言えば、新城選手と増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)も素晴らしかった。
新城選手は「古賀志林道の登りは厳しすぎて自分向きではない」と事前に語りながら、終わってみればアジア人トップとなる11位でのフィニッシュと、やはり格が違う。
そして、前日のクリテリウム終了後に移籍が発表された増田選手は、途中で抜け出したシーンを作り、山岳賞を獲得。
地元宇都宮ブリッツェンに11年所属した偉大なエースは、独走中に観客に笑顔で手を振る姿も。
「日本国籍チーム初のツール・ド・フランス出場を目指す」として新設されるJCL TEAM UKYOでも、また頑張って欲しい。
素晴らしかったとしか言いようがない
ジャパンカップ2022、本当に最高だった。
まずなによりも純粋に、レースが内容が素晴らしかった事。
序盤から高速で厳しい展開、そして終盤のエースによるアタックの打ち合いと、プロシリーズのレースとして、十分すぎる内容だったと思う。
更に、その中で日本人が活躍を見せてくれた事も、日本でプロシリーズのレースが開催された意義を、しっかり果たしてくれたと評したい。
そしてある意味で最も大きなウェイトを占める部分だと思うのが、観客がもの凄い盛り上がりを見せていたという事。
日本ではロードレースがマイナースポーツ(少なくとも観戦においては)だというのは間違いないと思うけれども…この日の盛り上がり。
画面越しにも伝わってくる観客の熱量は、完全に自分の想像を超えていた。
もちろん、プロシリーズというカテゴリーの高いレースで、更には出場選手も豪華だったからこその盛り上がりだという面も、事実だとは思う
それでも、これだけの盛り上がりを見せるだけのポテンシャルが日本のロードレース観戦層にあるというのも、間違いなくポジティブな事実だ。
こういった大きな大会やイベントをきっかけに、日本のロードレース界がさらに盛り上がってくれる事を願いたい。
という事で…ではないけれども、11/6の「さいたまクリテリウム」は参戦するぞ~!
「自分も日本のロードレース熱の高まりに貢献するのだ~!」は流石に後付けの理由で、ただ純粋に楽しみに行く訳だけれども、まあ結果的にそれはそういった部分に繋がってくるはず。
あまり細かい事は考えすぎず、全力で楽しんでいくぞ~!
それでは、また!!