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【レース感想】ラ・フレーシュ・ワロンヌ2023

激坂でも敵無し

最大勾配27%の名物激坂「ユイの壁」を駆け上がる、アルデンヌクラシックの2戦目ラ・フレーシュ・ワロンヌ。

今回注目を集めていたのは、4日前にアムステルゴールドレースを制覇していたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)。

その登坂力が最強クラスなのは疑いようがないけれども、昨年のフレーシュ・ワロンヌでは若干失速して12位に終わっていただけに、一部では「適正がないかも」なんて声も聞こえているけれども…?

そして今回、昨年のトップ5が誰も出場していない事もあり、あまり「激坂ハンター」的な選手が出場していないのが結構意外なところ。

そうなると、ピュアクライマー系の選手が上位候補として考えられるけれども、主だった選手としては…ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)、エンリク・マス(モビスター・チーム)、ロマン・バルデ(AG2Rシトロエン)なんかの名前が挙がる感じか。

ただ、出場メンバーの質の違いがレースに影響するかと言うと、結局は最後のユイの壁登坂一発勝負な訳で…。

何にせよ、最後にものを言うのは登坂力とパンチ力だ。

 

恐らく世界で最も展開が決まり切っているこのレース、逃げ集団にダリル・インピー(イスラエル・プレミアテック)やセーアン・クラーウアナスン(アルペシン・ドゥクーニンク)といった実力者が入ったけれども、正直言ってあまりそれは大勢に影響を与えない。

先行する8人に4分弱ほどのタイム差を与えながらメイン集団を牽引するのは、やはりポガチャルを擁するUEA。

横綱相撲で、堂々と勝利を目指す構えだ。

 

中盤以降の周回コースでフィニッシュも含めて都度3回登る事になるユイの壁、やはりその斜度は強烈で、先頭集団もメイン集団も、周回を重ねる度に人数を減らしていく事に。

最終周回に入って、先頭集団に生き残れたのはクラーウアナスンとゲオルグ・ツィマーマン(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)の2人のみ。

そしてメイン集団からは、サムエーレ・バティステッラ(アスタナ・カザクスタンチーム)とルイス・フェルヴァーケ(スーダル・クイックステップ)の2人が2度目のユイの壁で飛び出し、1分を切るぐらいの距離にまで近づいていた先頭集団に合流。

ただこれは、メイン集団もその気になれば一発で追いつける位置にいる訳で…。

その後、先頭集団はフェルヴァーケのみが生き残る格好に。

そこからフェルヴァーケはかなり良い粘りを見せたけれども、最後のユイの壁に突入した直後にあえなく吸収。

さあ残すは1kmの登坂、ここからは本物の登坂強者以外は生き残れない、究極に研ぎ澄まされた空間だ。

 

ここまでメイン集団の牽引をかなり引き受けてきたUEAは、最後のアシストであるマルク・ヒルシがしっかりとポガチャルを前方へエスコートしてから離脱と、最高の働きを見せる(2020年の優勝者ヒルシがアシストとか、豪華すぎる…)。

ポガチャルは集団のかなり前方での登坂開始と最高の形、そこにイネオスのマグナス・シェフィールドが被せて先頭を奪うけれども、残念ながらチームメイトははぐれてしまっている。

並びは、前からシェフィールド、マイケル・ウッズ(イスラエル)、ポガチャル、ギヨーム・マルタンコフィディス)、トレックのジュリオ・チッコーネとマティアス・スケールモース、マス、マテイ・モホリッチ(バーレーン)…といった感じか。

シェフィールドが早々に失速すると、ランダ、バルデ、トム・ピドコック(イネオス)なんかも前方へ位置を上げて来る。

残り300mを切って、真っ先に仕掛けたのは…バルデ!!

その背中を冷静にシッティングで捉えるのはポガチャル、そしてランダ、ウッズ、スケールモース、チッコーネと続く!

残り150m、ここまでは静かに走っていたポガチャルが遂に腰を上げて加速!!

スケールモースやランダが必死に追いかけるけれども、ポガチャルとの差は確実に広がっていく…!!

ポガチャルは振り返って後方を確認する落ち着き見せながら、余裕のフィニッシュ!!

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究極の激坂ユイの壁で、余裕を見せながらの勝利!!

またしても圧倒的な違いを見せつけ、ポガチャルがアルデンヌクラシック完全制覇に王手を掛けた!!

強すぎる…と言うか、余裕ありすぎ!

残り150mまでは完全に「前方にいればOK」という構え、そして残り150mからの加速で一瞬にして大きなギャップを生み出し、最後は後方を確認するほど余力を残しているとか…。

激坂でも敵なし…と言うかそもそも、昨年のツール・ド・フランス第7ステージとか、これまでも普通に激坂でも強かったからなぁ。

何と言うか、激坂への適正云々と言うよりは、「素のスペックが強すぎて激坂でも強い」みたいな感じなのが、本当に恐ろしい所だけれども…。

 

続いて2着でフィニッシュしたのはトレックの…ん!?

チッコーネではなくスケールモース!?

デンマーク出身の22歳、相当強い期待の若手だとは思っていたけれども、ユイの壁でこの走りが出来るとなると、もはや「期待の若手」枠を飛び出しそうな…。

待望のビッグウィンは、間近かもしれない。

 

そして、3位に入ったのはランダ。

今シーズン結構調子が良いとは思っていたけれども、そのイメージ通りなかなかの好走。

今シーズンは久々にツール出場の予定、このまま好調をキープできれば、クライマー向けのコース設定は有利に働きそうなので楽しみだ。

 

さて…あと一つだ

これでポガチャルは、アルデンヌクラシック完全制覇に向けて、残すはあと一つ。

4月23日、「ラ・ドワイエンヌ」こと、リエージュ~バストーニュ~リエージュ

迎え撃つは、ディフェンディングチャンピオンのレムコ・エヴェネプール(スーダル)という、これまた特別な才能を有する選ばれし者。

最高のレースになる事を期待したい。

 

それでは、また!!

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おまけ

今日の1枚

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圧倒的な差を付けて、冷静に後方確認する余裕を見せつけるポガチャル様