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ジロ・デ・イタリア2023 注目選手紹介

厳しいレイアウトでの総合争い…!!

グランツール(3大ステージレース)の開幕を飾る、美しくも険しいジロ・デ・イタリアの開幕が迫ってきました!

今回のジロは、その「尖った」レイアウトが結構注目を集めています。

まず、個人タイムトライアルステージが3つある事。

そして、獲得標高5,000m越えのステージが3つも登場し、全体の獲得標高がなんと50,000mを超える事。

つまり、総合争いはタイムトライアル能力が必須でありつつ、なおかつ厳しい登坂を生き残る能力も求められるという、かなり難易度の高い全体行程と言っていいでしょう。

しかも、3つある個人タイムトライアルステージのうち、最後に登場する第20ステージは登坂距離7.3km・平均勾配12.1%という恐ろしい登坂でのフィニッシュと、とんでもないレイアウトになっています。

登坂距離7.3km・平均勾配12.1%って、普通にラインレースで登場してもかなり厳しめの1級山岳ですよね。

こんなレイアウトでタイムトライアルを行うと、総合上位勢でも普通に数分の差が出そうです。

つまり…最後の最後まで総合争いの行方が分からない、かなりスリリングな展開になると予想されます。

 

そんな「厳しい」レイアウトで行われる今回のジロ、果たしてどんな選手が活躍するでしょうか。

総合系、スプリンター、その他と、3つのカテゴリーに分けて注目選手を紹介していきたいと思います。

 

総合系選手

前評判としては「2強」とその他勢力と言ったところでしょうか。

現役を代表するタイムトライアル系オールラウンダー2人による頂上決戦、本当に楽しみで仕方がありません。

 

レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ

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その独走力で世界を驚かせ続けてきたエヴェネプールは、2年振りとなるジロ出場です。

グランツール初出場となった2021年のジロは、大怪我からの復帰戦という事もあって持ち味を発揮できたとは言えず、更には3週目に落車リタイアと、不完全燃焼で終了してしまいました。

しかし、皆さんご存じのようにその後の快進撃は本当に凄まじいです。

2022年は、モニュメントの一角であるリエージュ~バストーニュ~リエージュ制覇に始まり、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝でグランツール王者になり、更には世界選手権でも優勝と、次々とビッグタイトルを獲得。

そして今シーズンも、UAEツアー総合優勝にリエージュ~バストーニュ~リエージュ連覇と、勢いは全く衰えておらず、その強さは一過性のものではなく完全に実力と評していいでしょう。

飛び抜けた独走能力を基調としたオールラウンダーとしての総合能力は、現時点で間違いなく世界トップクラスです。

また、直近のリエージュ~バストーニュ~リエージュでの走りを見ると、高地合宿を終えてコンディションはかなり良好で、優勝候補の筆頭と言っても過言ではないでしょう。

 

そんなエヴェネプールを支えるチーム編成も、ルイス・フェルヴァーケ、イラン・ファンウィルデル、ピーター・セリー、マッティア・カッタネオ、ヤン・ヒルトと、チーム内の登れる戦力を可能な限り投入したと言っていい、かなりの本気度で臨みます。

まだ登坂力を疑問視する声もあるかもしれませんが、今大会の厳しすぎる山岳設定をどのように攻略するのか、本当に楽しみです。

 

プリモシュ・ログリッチユンボ・ヴィスマ)

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失意の昨シーズンから復活を目指すログリッチは、今シーズンここまで完璧な走りを見せています。

オフシーズンの手術を経て3月からレースに復帰すると、ティレーノ~アドレアティコとボルタ・ア・カタルーニャという2つのステージレースを、完ぺきな内容で制しました。

特に、カタルーニャでのエヴェネプールと争いながらの総合優勝は、結果もそうですが内容が本当に素晴らしかったです。

フィニッシュスプリントでのパンチ力、そして総合優勝争いの経験値は、大別すれば同じタイムトライアル系オールラウンダーにカテゴライズされるエヴェネプールとの、明確な差になります。

 

チームとしても巨大戦力を活用して万全の態勢で臨む…予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で数人のメンバーチェンジがあり、どれだけ機能するのか不明瞭なのは若干の不安要素となってしまいました。

それでも、ログリッチの腹心である最強の山岳アシストのセップ・クスを筆頭に、実力と経験のあるメンバーが揃っているので、かなり強力なチームなのは間違いないでしょう。

2019年には終盤の失速で総合優勝を逃したジロ、4年越しの総合優勝の可能性は十分にあるはずです。

 

テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ

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2020年の覇者ゲイガンハートは、今シーズンここまでかなり好調な走りを見せています。

ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合3位、ボルタ・ア・アンダルシア総合6位、ティレーノ~アドレアティコ総合3位、そしてジロ前哨戦の一つツアー・オブ・ジ・アルプスで総合優勝と、その安定感は素晴らしいです。

ジロ制覇以降2年間は、怪我や病気もあってあまり良い走りを見せられませんでしたが、やはり万全な状態なら相当な強さがあるのだと思います。

 

そしてやはりと言うか、イネオスはかなり強力な戦力でジロに臨みます。

ゲラント・トーマス、パヴェル・シヴァコフ、ティメン・アレンスマンと、他チームならエース級の選手を山岳アシストとして投入できる豪華布陣は、圧巻の一言です。

その他脇を固めるメンバーも実力は十分で、チーム力は今大会で最強と言っていいでしょう。

もしかしたら、ゲイガンハートの単独エースではなく、トーマスとのダブルエース体制の可能性もあり、もしそうならそれはそれで他チームにとっては対応に苦しむことになりそうです。

総合争いの盟主たるイネオス、ゲイガンハートだけでなくチームとしての動きにも注目です。

 

ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ

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安定感の男アルメイダは、こちらもまた強力な戦力を引っ提げてのジロ参戦です。

これまでグランツールには4度挑戦して、総合4位(ジロ2020)、総合6位(ジロ2021)、新型コロナウィルス感染により途中リタイア(ジロ2022、第17ステージ終了時点で総合4位)、総合5位(ブエルタ2022)と、必ず表彰台近くの順位で走り続けています。

逆に、グランツール表彰台にはあと一歩届かない、今一つ決め手に欠けるとも言えるのかもしれませんが、まだ今シーズンで25歳とヤングライダー賞対象の選手ですから、経験値も含めてまだまだ「これから」の選手なのでしょう。

総合勢で上位に入るタイムトライアル能力、パンチャーに匹敵するようなパンチ力、そしてペース走で驚異の粘りを見せる登坂力と、ポテンシャルだけを見ればいつ総合表彰台に乗ってもおかしくないものを持っています。

 

今シーズンも、ティレーノ~アドレアティコ総合2位にボルタ・ア・カタルーニャ総合3位と、その安定感は抜群…と言うか、これまでで一番いいシーズンを送っていると言ってもいいでしょう。

そして、前述のとおり今回のチーム編成はかなり強力です。

進境著しいブランドン・マクナルティ、ジェイ・ヴァイン、アレクサンドロ・コーヴィの若手3人を、実績十分のダヴィデ・フォルモロが纏める山岳アシスト陣は、チーム力としてはイネオスとユンボに次ぐと評していいでしょう。

初のグランツール総合表彰台の可能性は、十分にあると思います。

 

アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)

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2022年はツール・ド・フランスでエースを務めたウラソフですが、今シーズンは改めてジロへの挑戦となります。

タイムトライアル能力も登坂力も水準以上のものを備えていて、随所で見せるポテンシャルだけを考えれば前述のアルメイダ同様にグランツール表彰台に登るには十分だと思いますが、2021年のジロは総合4位、2022年のツールは総合5位と、こちらもあと少しのところで届いていません。

これまでのグランツールでは、体調不良や落車の影響で調子が下降してしまう事も多く、そういった意味では思う存分力を発揮しきれていないようにも感じられて、少しもどかしい状況が続いてしまっています。

 

今シーズンは、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合5位に、ティレーノ~アドレアティコ総合9位と、昨シーズン前半と比べると若干振るわない感じですが、果たしてコンディションは上がってきているでしょうか。

チーム編成は超強力とは言えなくとも、レナード・ケムナ、パトリック・コンラッド、ジョバンニ・アレオッティなどある程度戦うには十分なメンバーが揃っているので、是非とも大会期間を通じて安定した走りを見てみたいです。

 

ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス

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2021年に総合2位の実績を残した遅咲きの苦労人カルーゾは、2年振りのジロ出場になります。

2020年までは、グランツールの総合トップ10に何度か入っていてある程度強い選手だとは認識されていましたが、ステージ勝利は挙げられず、そして総合表彰台にも届かない、いぶし銀系の選手という印象が強い選手でした。

しかし2021年のジロでは終始ハイパフォーマンスを見せて、ステージ1勝を挙げつつ総合2位と、地元イタリアでキャリア最高の結果を残すことに成功しました。

更には勢いそのままにブエルタでもステージ1勝と、2021年はカルーゾにとって間違いなくキャリアハイとなる1年でした。

しかし2022年、満を持してエースとしてツールに臨みましたが残念ながら結果は残せず、またワールドツアーでは未勝利と、まるで2020年以前のようなリザルトになってしまいました。

 

今シーズンも、地元開催のジロ・デ・シチリア最終ステージの勝負所で失速するなど不安の見える走りが続いていましたが、直近のツール・ド・ロマンディでは総合3位に入り、調子は上がってきていそうです。

チーム編成は、新型コロナウィルスの影響でジーノ・メーダーという強力な駒を失ったのが痛手ですが、それでもジャック・ヘイグにサンティアゴ・ブイトラゴという2枚のエース級山岳アシストはかなり心強いでしょう(と言うか、ヘイグとのダブルエース、下手したらそもそもヘイグがエースの可能性すらあるかもしれませんが…)。

ベテランらしい巧みなレース運びで、総合争いにどこまで食い込めるか期待しています。

 

スプリンター

正直なところ、今回のジロは少しピュアスプリンターの選手層が薄いですが、逆に「登れるスプリンター」のトップ2が揃って出場しているのが面白いところです。

また、有力なピュアスプリンターが少ないからこそニューヒーローが生まれたりする可能性もあるかもしれません。

 

マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード

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今や現役トップとも評される登れるスプリンターへと成長したピーダスンは、5年振りのジロ出場になります。

2019年の世界選手権優勝時にはまだまだ知名度も実績も少なかったですが、昨年はツールでステージ勝利、そしてブエルタではステージ3勝を挙げてのポイント賞獲得と、もはやその実力を疑う人はいないでしょう。

今シーズンも、スプリントはパリ~ニースで1勝、そして春のクラシックは6レース走ってトップ10フィニッシュが5回(ロンド・ファン・フラーンデレンでは3位入賞)と、かなり好調です。

トップピュアスプリンターが少ない今大会は、得意の登りが絡んだスプリントだけでなく平坦のスプリントでも結果を残せる可能性があって、もしかしたら「無双」するかもしれません。

 

マイケル・マシューズ(チーム・ジェイコ・アルウラー)

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長年登れるスプリンターの代名詞的存在として活躍してきたマシューズは、実に8年振りとなるジロでのステージ勝利を目指します。

前回出場した2020年は、1週目終了時点で未勝利のまま新型コロナウィルスの影響でリタイアと、かなり悔しい思いをしただけにきっと燃えるものもあるでしょう。

繰り返しになりますが、今大会はピュアスプリンターの実力者が少ないので、ピーダスンと同様に平坦スプリントでもかなりの有力候補になるはずです。

また、昨年のツールではかなりの激坂でライバルを蹴散らしてステージ勝利と、もはや「登れる」ではなく「登れすぎる(?)」とでも言いたくなる走りを見せてくれました。

果たしてどの武器で戦っていくのか、その辺りの選択をどうするのかも楽しみです。

 

フェルナンド・ガビリア(モビスター・チーム)

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今シーズンからモビスターという意外過ぎるチームに移籍したガビリアですが、これで5年連続のジロ出場になります。

ただ、2017年にはグランツール初出場となったジロでステージ4勝を挙げてポイント賞獲得と大爆発をしましたが、その後は2019年のステージ1勝のみ(しかもその1勝も先着したエリア・ヴィヴィアーニの降格処分によるもの)と、結果を残せていません。

ここ数年はジロに限らず不振に喘いでいて、そしてリードアウトとの連携が上手く取れていないシーンも散見されて、意表を突く「早駆け」で勝利を狙ったりもしていました。

そんな状況下でほぼ総合一本狙いのモビスターに移籍したのは、多くの人が驚いたはずです。

幸いにも、今大会はリードアウト役としてマックス・カンターを引き連れての出場となっていて、そこからの発射がきれいに決まれば絶対的なスピードでは恐らく最強クラスでしょう。

また、ここ数年よく見せていた「早駆け」が前哨戦のロマンディで見事に決まったのも印象的です。

実力者なのは間違いないので、鮮やかな復活に期待したいところですね。

 

カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)

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昨シーズンのブエルタグランツール初出場ながらステージ1勝を飾ったグローブスは、アルペシンに移籍してのジロ出場です。

今シーズンはここまで3勝、その内2勝がワールドツアーのボルタ・ア・カタルーニャで挙げたものなので、チームの期待に早くもしっかり応えていると言っていいでしょう。

道中の登坂がかなり厳しい今大会は、まだ登りに不安を残すグローブスにとってはなかなか辛く、ポイント賞を狙うのはかなり難しいだけでなく、正直なところ途中リタイアの可能性もあるとは思っています。

ただ、純粋にスプリントステージを狙うだけなら、チームが今大会随一のリードアウトトレインを誇る事もあり、その爆発力が上手く嵌れば、ステージ勝利の有力候補と評するには十分すぎるでしょう。

なんなら、2つ3つと勝利を重ねるかもしれないと思うぐらい、個人的には期待しています。

 

マーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタンチーム)

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アスタナに「拾われた」カヴェンディッシュですが、なかなか不思議なチーム編成でのジロ出場になりました。

明確なリードアウターは、恐らく0枚。

一応、サミュエーレ・バティステッラはある程度スピードが出せそうな気はしますが、スプリンターのスピード域についていけるのかは…正直かなり厳しいと思っています。

厳しいと言うか穿った見方をすれば、史上最多となる35勝目を目指すツールへの「試運転」な気もします。

ただ、再三になりますが今大会はトップクラスのピュアスプリンターがほとんどいません。

ベテランのテクニックと経験でいい位置取りが出来て、そのスプリント力が遺憾なく発揮されれば、勝機も見えてくるかもしれません。

 

その他注目選手

「総合系」や「スプリンター」といった枠に入らない選手にも、もちろん注目すべき選手はいます。

もちろん、我らが誇りのあの日本人選手も…。

 

新城幸也バーレーン・ヴィクトリアス

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当初はリザーブ登録だったという新城選手、新型コロナウィルス陽性となったメーダーの代役として、自身16回目のグランツール参戦となりました!!

もちろん、脚質の違うメーダーとは仕事も大きく違いますが、常に自分の仕事をしっかりこなすその走りは、チームからかなり高評価を得ていることが改めて伺えます。

なにせ、今までグランツールに15回出場して、全て完走ですからね。

平坦でかなりの仕事量をこなすことが出来て、スプリント手前の高速度域でも牽引をこなせるスピードも持ち、その気になれば逃げる力もあり、その上で離脱せずに常に計算できるとなると、そんな選手はなかなかいないです。

チームのために働くその姿、応援していきましょう!!

 

ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)

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注目度が急上昇中の期待の新鋭ヒーリー、早くもグランツールデビューとなります。

プロ2年目の22歳、昨シーズンもアイルランド国内選手権個人タイムトライアル優勝で少し注目されていましたが、その才能が今シーズン一気に開花。

3月に2勝を挙げると、4月の春のクラシックでは、ブラバンツ・ペイル2位、アムステルゴールドレース2位、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュで4位と、上位リザルトを連発して一気に注目の存在になりました。

その登坂力と積極性がグランツールでどのような適性を見せるのかは未知数ですが、もしかしたら山岳賞を狙えるぐらいの力があるのではないかと、個人的には期待しています。

 

ティボー・ピノ(グルパマFDJ)

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今シーズン限りで現役引退を表明しているピノは、フランス期待の星としてツール総合優勝を目指し続けましたが、現役最終年に意外にもジロにも出場します。

自分は特別ピノのファンと言う訳ではありませんが、これまでの活躍やストーリー…特に2019年ツールでの涙のリタイアなんかを振り返ると、やはりピノがいなくなるのは寂しいと言うのが本音です。

ジロ閉幕翌日に33歳とまだまだ年齢的にはやれるようにも思いますが、それでも本人がやり切って決めた事ですから、これが最もいい終わり方なのでしょう。

ジロで引退する訳では無いですが、その走りには注目していきたいところです。

 

今年も思いっきり楽しんでいきましょう!

いや~、やはりグランツール開幕前はテンションが上がりますね!

この記事を書いているだけでも、なんだかワクワクしてきましたよ(笑

美しくも険しいジロ・デ・イタリア、一体どんなレースが繰り広げられ、どんな結末を迎えるのか、本当に楽しみで仕方がありません。

皆さんもそれぞれのペースで、思う存分に堪能していきましょう!!