大器の証明
コース終盤に4級・2級・4級と3つの山岳が登場する、逃げ向きのステージ。
また、2度登場する4級山岳は登坂距離2.8kmと短いながら、平均勾配7.9%・最大勾配19%と、なかなかの破壊力。
特に2回目は、フィニッシュまで残り10kmを切っているから、総合勢が動く可能性も…。
逃げ向きのステージという事で、多くの選手が逃げに乗ろうと試みた結果、アタック合戦が続いてなかなか逃げが決まり切らない展開に。
最初に出来上がった4人の先頭集団に後から追いつく追走集団があり、最終的に先頭集団は13人とそれなりの人数に。
今シーズン春のクラシックレースで一気に名を売ったベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)を筆頭に、ワレン・バルギル(アルケアサムシック)、カルロス・ベローナ(モビスター・チーム)、フィリッポ・ザナ(チーム・ジェイコ・アルウラー)など、なかなかのメンバーだ。
メイン集団をコントロールするのは、総合リーダーのアンドレアス・レックネスンを擁するチームDSM。
先頭集団で最も総合タイムが良いのがバルギル(6分39秒遅れ)なので、4分30秒ほどのリードを与えた状態で終盤のカテゴリー山岳3連発へと突入していく。
先頭集団で真っ先に仕掛けたのは、今大会のニューヒーロー候補とも言われていたヒーリー!
1度目の4級山岳頂上付近の急勾配区間、アタック一発でライバルを置き去りにして、そのまま独走を開始!!
ヒーリーはその後のダウンヒル区間もかっ飛ばし、あっと言う間にリードを1分以上に拡大!!
このまま50km独走する気だ…!!
アタック一発、しかも猛烈に加速する感じではなく、割と余裕の感じでペースを上げた結果ライバルを千切るとは…これは相当強い抜け出し方だぞ。
ヒーリーが順調に追走とのタイム差を拡大してステージ勝利を確定的な物にする一方、メイン集団では2度目の4級山岳で動きが発生。
急勾配区間で仕掛けたのは、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)!
ログリッチはアタックに即座に反応したレックネスンとアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)が背中に張り付く事を気にせず踏み続け、2人を千切る…!
少し遅れてレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)が追いかけるけれども、なかなか距離が縮まない。
そして、激坂で苦しむエヴェネプールをイネオス・グレナディアーズのゲラント・トーマスとテイオ・ゲイガンハートが抜き去り、イネオスコンビは頂上付近でログリッチに追いつく事に成功。
「実質総合勢の首位に立つエヴェネプールからタイムを奪う」という共通の目的を持つ3人は、何故かログリッチが中心となって牽引する動きになりつつ、ペースを維持。
エヴェネプールはジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)やダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)などと合流しながら、ログリッチ達を追いかける展開に。
時をほぼ同じくして、先頭のヒーリーがフィニッシュ地点へやってくる!
観客の声援に応える余裕を見せながら、堂々のフィニッシュ!!
鮮烈な50km独走勝利!!
アイルランドの新星ヒーリー、その才能の大きさをジロという大舞台で改めて証明して見せた!
余力を残したような余裕のアタックでライバルを突き放す登坂力、そのままあっと言う間にリードを1分以上に広げる判断と積極性、そして50km独走を完遂させる独走力…!
いやはや、これは凄い!
もう「期待の若手」ではなく、完全に一線級の選手ではないか…!
今大会、残りのステージの走りも楽しみだ!
そして、ヒーリーから4分34秒遅れて、ログリッチ、トーマス、ゲイガンハートがフィニッシュ。
エヴェネプールのグループは…そこからさらに14秒遅れてのフィニッシュに。
エヴェネプールに3日前の落車のダメージが残っていたのかは分からないけれども、今大会初めて見せた綻び。
ログリッチ、トーマス、ゲイガンハートという強力なライバルが少し差を詰めてきたのは、正直言って結構怖い展開だと思う。
まだまだ僅差のタイム差が続く総合争い、ここから更に面白くなりそうだ。