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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2023 第12ステージ

さあ、みんなで逃げようぜ!

第12ステージは、終盤に「ピュアスプリンターお断り」といった感じの厳しさの2級山岳が登場する、逃げ向きステージ。

件の2級山岳コッレ・ブライダのプロフィールは、登坂距離10.7km・平均勾配5.9%と「そこそこ」と見せかけて、ラスト5kmの平均勾配は8%越えと、乗り越えるには登坂力が必須。

逃げ切りとは別に、総合勢が動く可能性も…?

 

逃げ切り向けという事でやはり活発なアタック合戦を経て、出来上がった先頭集団は30人の超大所帯!

リタイアが続出していて全体の人数が150人を切っているから…20%以上の選手が乗った計算に。

トレック・セガフレードがマッズ・ピーダスンを筆頭に4人、アスタナ・カザクスタンチームがサムエーレ・バティステッラを含む3人、プロチームのイスラエル・プレミアテックが若手のみで3人、同じくプロチームのグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネも3人と、人数を多めに送り込んだのはこの4チーム。

他に有力選手としては、マイケル・マシューズ(チーム・ジェイコ・アルウラー)、イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ)、アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)、セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)と言った辺りか。

一方のメイン集団をコントロールするのは、総合リーダーのゲラント・トーマスを擁するイネオス・グレナディアーズ

 逃げ切りをガッツリ容認するかと思いきや、逃げとのタイム差は3分前後で推移。

このままだと、逃げ切りではなくメイン集団からステージ勝者が出る可能性も…?

 

残り92kmで、先頭集団からバティステッラ、ニコ・デンツ(ボーラ・ハンスグローエ)、トムス・スクインシュ(トレック)、アレッサンドロ・トネッリ(グリーンプロジェクト)、セバスティアン・バーウィック(イスラエル)の5人が飛び出しを敢行。

ただ、バティステッラは4kmほど走ると脱落して、追走集団に吸収されてしまう。

追走集団はイマイチ協調が取れず、残り82km辺りで4人の先頭集団との差は1分を越え、更にそこから拡大傾向に。

その頃、メイン集団では落車が発生し、その影響もあってかこちらもペースが上がらない。

先頭の4人が追走集団にもメイン集団にも差を付けていく、逃げ切りの可能性が高まっている状況だ。

 

終盤の2級山岳コッレ・ブライダ突入の時点で、先頭集団と追走集団のタイム差は2分30秒。

先頭の4人は全員が充分な登坂力を備えているので、この時点で実質逃げ切りが確定。

ここまでしっかり協調してきた4人だったけれども、登りの序盤でまずトネッリが脱落。

その後、勾配が厳しい区間に入ると、スプリント力も有するデンツを振り落とすために、スクインシュとバーウィックが更にペースアップを敢行。

ただ、デンツも必死の表情で食らいつく…!

結局、3人はひと塊のまま山頂を通過。

残り12kmでのデンツによる意表を突いたアタックも決まらず、最後は3人でのフィニッシュスプリントだ。

 

残り1kmのゲートを、デンツ、スクインシュ、バーウィックの並び順で通過。

直角なコーナーを抜けて、最後の仕掛け所となる短い8%の登り勾配では…意外にも誰も仕掛けない。

過度な牽制にはなっていないけれども、3人は静かにフィニッシュまでの距離を縮めていく。

残り300m、最後尾のバーウィックが腰を上げて踏み込むけれども、それに合わせてデンツとスクインシュも加速して、バーウィックは前に出られない。

バーウィックは早々に諦めて、デンツとスクインシュによる一騎打ち!

先頭を維持してきたデンツ、その踏みは力強く、先頭を譲らない!

そのまま最後まで踏み切る!!

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白熱のステージ勝利争いを制したのはデンツ!!

デンツはこれが嬉しいグランツール初勝利!!

いや~、フィニッシュスプリントでは格が違った!

最後の2級山岳を耐え抜いた時点で勝利が決まったと言っていいぐらい、スクインシュすらも寄せない素晴らしいスプリントを見せてくれた!

そしてフィニッシュ直後には、待ち受けていたチームスタッフと熱い抱擁を交わしながら、喜びを爆発させる!

ジロ開幕前はプロ通算3勝、ワールドツアーでの勝利は昨年のツール・ド・スイスのステージ優勝のみと、決してエース級の選手ではないデンツが掴んだ、キャリア最大のビッグウィン。

こういった瞬間もまたロードレースの大きな魅力だと思える、素晴らしいシーンだった。