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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2023 第14ステージ

ワンデーレースのようなステージ勝利争い

第14ステージは、序盤に1級山岳が登場するけれども、それ以外は平坦基調なレイアウト。

可能性が高いのは集団スプリントだと思っていたけれども…?

 

レースがスタートすると、逃げ切りの可能性を見出す選手たちが激しいアタック合戦を展開。

一度出来上がった20人弱の先頭集団に、更に追走集団も合流して、逃げの人数は最終的に29人に膨れ上がる。

今大会積極的に逃げているトムス・スクインシュ(トレック・セガフレード)やデレク・ジーイスラエル・プレミアテック)、山岳賞ランキングで2位につけるダヴィデ・バイス(エオーロ・コメタ)など「逃げっぽい」メンバーに混じって、スプリンターのフェルナンド・ガビリア(モビスター・チーム)がアシストと共に乗っているのがなかなか興味深い所。

メイン集団をコントロールするイネオス・グレナディアーズは、逃げの中で最も総合タイムが良いのがブルーノ・アルミライル(グルパマFDJ、+18分37秒)な事もあり、スローペースを選択。

そしてスプリントチームも集団牽引の意志を見せず、1級山岳に突入する前からなんだか逃げ切り確定っぽい雰囲気に…。

1級山岳の頂上は、ヴァイスが先頭通過に成功し、山岳賞ランキングトップに再浮上。

そしてやはり、メイン集団は登りでもペースを上げず、ダウンヒルも安全に下る事を選択したため、平坦区間に入る頃には先頭集団とのタイム差は12分以上に拡大。

この日もまた、ステージ勝利は逃げ集団で争われる事に。

 

残り63km、仕掛け所の少ない平坦基調で真っ先に動いたのは、逃げ集団でも指折りの実力者であるアルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)。

ピュアスプリンターのガビリアがいるから早めの仕掛けが必須とは言え、この距離からの攻撃は意外と言うか…ある意味ではベッティオールの自信の表れか(恐らく、一発で逃げ切るつもりはないだろうけれども)。

流石に他の選手はこの動きを見逃す訳にはいかず、コースプロフィールでは読み取れないような細かいアップダウンが続く中、ベッティオールは残り58km辺りで一旦吸収される。

その直後、カウンターでローレンス・レックス(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)とステファノ・オルダーニ(アルペシン・ドゥクーニンク)が飛び出しに成功。

更にダヴィデ・バッレリーニ(スーダル・クイックステップ)とスクインシュも合流し、4人で新たな先頭集団を形成する流れに。

4人は綺麗に強調し、逆に残された追走集団は若干牽制気味でペースが上がり切らず、タイム差はあっという間に30秒程に。

そこから、残り30kmで40秒差、残り25kmでは50秒差と、タイム差は少しずつながら拡大傾向だ。

 

残り17km、このままでは先頭4人の逃げ切りを許してしまうという事で、追走集団ではまずジーがペースアップを敢行。

更にはベッティオール、マリウス・マイヤーホーファー(チームDSM)、ニコ・デンツ(ボーラ・ハンスグローエ)などが積極的に牽引に加わり、脱落者を出しながら先頭集団との距離を縮めていく。

残り11kmで先頭からはレックスが脱落、そして気が付けばタイム差は20秒前後にまで縮小。

ライバルを意識しながら追いかける追走も大変だけれども、先頭集団も3人とも結構ギリギリな雰囲気だ…。

そして追走集団からは、やはりここまで積極的な動きを見せていたマイヤーホーファー、ベッティオール、デンツ、ジーの4人が抜け出す格好に。

4人は先頭からこぼれたレックスを飲み込み、5人で残された力を振り絞って先頭を追いかける。

 

残り3km、先頭と追走のタイム差は14秒と、逃げ切れるのか捕まるのかどちらとも判断が付かない絶妙な塩梅に。

そこから残り2kmでもタイム差はほぼ動かず…と思いきや、残り1kmのゲートを通過すると、気が付けば追走集団は数秒差にまで迫っている!!

慌ててオルダーニが早掛けを見せるけれども、残り800mを切った辺りからのロングスプリントはいくらなんでも早すぎて、オルダーニはあえなく失速。

残り300mに差し掛かろうとする辺り、追走が先頭に合流…とほぼ同時に、皆が腰を上げスプリントを開始…!!

真っ先に先頭に出たのはベッティオール、しかし勢いが続かない…!

そしてベッティオールの背後を捉えていたデンツが力強く踏み込む!!

デンツを追いかけるのはジー、残り50mを切ってデンツの横に並んでくる!!

しかしデンツも粘る…!!

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勝利の雄叫びを上げたのは…デンツ!!

見事な粘り強さとスプリントで、第12ステージに続いて今大会2勝目!!

第12ステージもそうだったけれども、デンツは本当に粘り強い…!

まるでワンデーレースのような追走劇、そして誰もが限界状態でのスプリントを制するのは、体力なのか精神力なのかは分からないけれども、とにかくタフなのは間違いない。

これでジロ開幕まではプロ通算3勝だったのだから…ロードレースは本当に何があるか分からなくて面白い。

 

そして面白いと言えば…、総合リーダージャージ、マリア・ローザの行方。

総合リーダーのゲラント・トーマスを抱えるイネオスが、レース中盤以降もペースを全く上げなかった結果、メイン集団は先頭から21分11秒遅れのフィニッシュに。

そして、スタート前は総合18分37秒遅れだったアルミライルが、先頭から53秒遅れでフィニッシュしたので…なんとアルミライルが総合リーダーに!

驚き…と言うか、イネオスは狙ったな、これ。

まあなんにしても、アルミライルにとっては嬉しいサプライズ!

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アルミライルは間違いなくチームに不可欠な優秀な選手ながら、これまでプロでの勝利はフランス国内選手権個人タイムトライアルでの1勝のみと生粋のアシスト選手なので、ポディウムに慣れていない感じがなんとも微笑ましかった。

この先に登場する本格的な山岳ステージで間違いなくジャージを失う事にはなるだろうけれども、マリア・ローザを着用して走るレースを、存分に楽しんで欲しい。