初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【レース感想】ジロ・デ・イタリア2023 第18ステージ

ドロミテ3連戦、開幕

ドロミテ山塊3連戦の初日となる第18ステージは、1級・4級・1級・2級・2級と5つのカテゴリー山岳が登場するレイアウト。

フィニッシュまで残り25.8kmに登場する1級山岳チビアーナ峠は、登坂距離9.6km・平均勾配7.8%という全体プロフィール以上に、ラスト5kmの平均勾配が9%越え、そして最大勾配15%という、かなりの難易度。

そしてフィニッシュ手前の2連続2級山岳、特に1つ目のコイ峠は、フィニッシュまで10kmを切った位置に最大勾配19%の激坂区間が登場する、「仕掛け所」としては絶好のレイアウト。

逆転を目指す動き、そして勝負を決定づけるような動きが起こる可能性は、充分にある。

 

逃げ切り勝利もあり得るレイアウトという事で、序盤から激しいアタック合戦が起こった結果、逆にスタートから30kmほど続く平坦区間では逃げが決まらない展開に。

この日最初のカテゴリー山岳である1級山岳デッラ・クロセッタに突入すると、改めて登坂力のある選手が飛び出そうと試みるけれども、ユンボ・ヴィスマがメイン集団を高速牽引しているため、なかなか逃げが決まり切らない。

そんな中、なんとか飛び出したのはイスラエル・プレミアテックの2人、デレク・ジーとマルコ・フリーゴ。

そこにティボー・ピノ(グルパマFDJ)、オレリアン・パレパントル(AG2Rシトロエン)、フィリッポ・ザナ(チーム・ジェイコ・アルウラー)が合流して、ひとまず先頭集団を形成。

そこから更に、長い追走を経てワジム・プロンスキー(アスタナ・カザクスタンチーム)とワレン・バルギル(アルケア・サムシック)も合流して、先頭集団は7人に。

一方のメイン集団は、ユンボが一旦牽引を止め、総合リーダーのゲラント・トーマスを擁するイネオス・グレナディアーズがコントロール

イネオスは既に3人の選手がリタイアしている事もあり、この牽引の責任は地味にダメージとなるか。

 

イネオスがあまりタイム差を詰めないコントロールを見せる中、先頭集団ではピノが1級・4級・1級と山岳を先頭通過して、山岳賞ランキング首位に浮上。

1級チビアーナ峠では、逃げ切り勝利を狙う快調なペーシングにプロンスキーが先頭から脱落していく一方、メイン集団は先頭に6分以上のタイムを許容。

ただ、ローレンス・デプルス(イネオス)による牽引ペースは決して遅い訳では無く、メイン集団も人数を20人ほどにまで減らしてチビアーナ峠を越えて行く。

 

2級山岳コイ峠に入ると、先頭集団でザナが加速。

ザナのペースに反応できたのはピノのみで、そしてピノはザナを突き放そうと更なるペースアップを敢行する。

ただ、ザナは離れる事なく、そのまま2人でフィニッシュまでの距離を縮めていく。

一方のメイン集団では、セップ・クス(ユンボ)が先頭に立ってペースアップを開始。

このクスによる攻撃は強烈で、付いていけるのは…ユンボのエースであるログリッチの他には、トーマスとエディ・ダンバー(チーム・ジェイコ・アルウラー)のみ…!?

なんと、総合2位のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)が離されている…!!

そして、ログリッチがアタックを仕掛けると、トーマスは難なく反応した一方で、ダンバーは脱落。

アルメイダはジェイ・ヴァインの助けを借りて何とか追いかけているけれども、クスに引っ張られたログリッチとトーマスは、その差を徐々に広げていく!!

 

後方で激しい総合争いが繰り広げられているのと対照的に、先頭の2人は淡々と最後の2級山岳バル・ディ・ゾルドを登っていき、気が付けばフィニッシュまで1kmを切っている。

あまり牽制せずにピノの先頭固定でそのまま進んでいき…、残り200mでピノがスプリントを開始!!

歯を食いしばりながら全力で踏み込むピノ、そしてザナはその背中で冷静に溜めてから、残り100mで飛び出す!!

横並びでフィニッシュラインに迫る2人、ガッツポーズを見せたのは…ザナ!!

Embed from Getty Images

イタリアチャンピオンジャージを着ての山岳逃げ切り!!

登坂力と冷静さを見せたザナ、会心のガッツポーズを見せてのグランツール初勝利!!

ザナは今大会ここまで、マイケル・マシューズのステージ勝利のお膳立てや、ダンバーのための牽引、そして積極的な逃げでかなり目立つ存在ではあった。

そして見せた、この日の強さ。

昨年までワールドチームではなくプロチーム所属だった24歳、その才能は相当大きそうだ!

 

惜しくも敗れたピノは、第13ステージに続いての2位という結果に。

「今大会はステージ勝利を狙う」と明言しているだけあって、気負いがあったのか、正直なところスプリントを仕掛けるのが早すぎたとは思う。

それでも、そのまっすぐで積極的な走りは、見ていてとても気持ちのいいものだった。

そして、ステージを狙い続けた副産物として、またしても山岳賞ランキングのトップに。

この調子なら、このままマリア・アッズーラを守り切れる可能性は充分にありそうだ。

 

そして後方の総合争いは…ログリッチとトーマスを引っ張ていたクス、アルメイダをなんとか引っ張り上げようとアシストしていたヴァインが剥がれ、残すはエースの地力での勝負に。

ダンバーと合流したアルメイダが必死の粘りを見せる一方、ログリッチとトーマスもしっかりと協調してペースを緩めない。

総合2位のアルメイダからタイム差を奪うという共通の目的を持ったログリッチとトーマスは、そのまま最後まで協調体制を崩さず、争わずに静かにフィニッシュ。

苦悶の表情を浮かべながらフィニッシュに辿り着いたアルメイダは…ログリッチとトーマスから21秒遅れでのフィニッシュ。

アルメイダは同行していたダンバーを振り切る驚異の粘りを見せたけれども、ログリッチに逆転されて総合3位に転落。

ただ、総合首位トーマス、総合2位ログリッチ(+29秒)、総合3位アルメイダ(+39秒)と、未だにかなりの僅差。

残す総合争いの舞台は2つ、そしてそのどちらも1分以上の差が付いてもおかしくない、かなりの難易度。

最後の最後まで目が離せない、かなり白熱した展開になってきた。