激戦のチーマ・コッピ!!
ドロミテ3連戦の2日目は、2級・1級・1級・2級とカテゴリー山岳を越え、最後は今大会の最高到達点である超級山岳トレ・チーメ・ラヴァレードにフィニッシュし、獲得標高が5,400mになる今大会のクイーンステージ。
残り40kmを切った辺りで登場する1級山岳ジャウ峠は、登坂距離9.9km・平均勾配9.3%と、10%前後の勾配がひたすら続く、過酷なレイアウト。
そして、フィニッシュ地点に設定されたトレ・チーメ・ラヴァレードは、ラスト3kmの平均勾配が12%を越え、フィニッシュ地点の標高が2,304mに達する、これまたとんでもない難易度。
39秒以内に3人がひしめく大接戦の総合争い、果たしてどのような展開になるのか。
実質最後の逃げ切り勝利のチャンスという事で、スタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられる中、山岳賞ランキングで2位につけるベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)も逃げに乗ろうと積極的な動きを披露。
ただ、ヒーリーに対しては山岳賞ランキングトップのティボー・ピノ(グルパマFDJ)が当然ながら厳しいチェックをして、ヒーリーを逃げに乗らせない。
結局、山岳賞争いをする選手は含まれない、15人の先頭集団が形成される事に。
メイン集団を牽引するイネオス・グレナディアーズは、総合争いに影響しない選手ばかりの先頭集団に早くも5分以上のタイムを与えて、逃げ切り容認の構えを見せる。
このまま落ち着いた展開で進むのかと思いきや、カテゴリーの付いていない長く緩い登坂で、なんとヒーリーが突如アタック!?
もの凄い勢いで飛び出したヒーリー、まさかここから先頭に追い付くつもりか…!
もちろんこの動きをピノが容認する訳はなく、ピノもメイン集団を飛び出して、易々とヒーリーをキャッチ。
流石にこうなるとヒーリーも無理はせず、ピノと握手を交わした後にペースを緩め、メイン集団に戻っていく。
かなり難しいと分かっていてもトライしたヒーリー、この積極的な姿勢は本当に面白く、そして素晴らしい…。
なんて思っていたら、直後にヒーリーがまさかの再アタック…!?!?
この動きも当然すぐ捕まったけれども…ヒーリー、面白すぎるキャラクターだなぁ。
1級山岳ジャウ峠に突入すると、やはりその厳しい登坂で先頭集団は分裂。
サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)、カルロス・ベローナ(モビスター・チーム)、マイケル・ヘップバーン(チーム・ジェイコ・アルウラー)、デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)、マグナス・コルト(EF)の5人が飛び出す格好に。
山頂通過後に、登坂で遅れていたワジム・プロンスキー(アスタナ・カザクスタンチーム)とニコラス・プロドム(AG2Rシトロエン)が合流、更に遅れてパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ)、ステファノ・オルダーニ(アルペシン・ドゥクーニンク)、ローレンス・ワーバス(AG2R)、ダヴィデ・ガッブロ(グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)の4人も追いついてきて、11人でダウンヒルをこなしていく。
一方のメイン集団は、イネオスが完全に逃げ切り容認のペーシングを行ったため、先頭集団から6分45秒程遅れてジャウ峠の山頂を通過。
もちろんスプリンターなどの「登れない」選手は脱落しているけれども、あまり厳しい絞り込みは掛からないまま、終盤に突入していく事に。
メイン集団に6分30秒程のタイム差をつけて2級山岳トレ・クローチに突入した逃げ集団は、ワーバスのアタックをきっかけに活性化。
引き戻されたワーバスがズルズルと遅ていく一方で、ブイトラゴ、コルト、ジー、ヘップバーンの4人が新たな先頭集団を形成すると、そのまま4人でトレ・クローチを攻略。
メイン集団とのタイム差は未だ5分弱と、やはり逃げ切り勝利の可能性が高まってきたか。
間をおかずに登場する超級山岳トレ・チーメ・ラヴァレードに突入すると、ペースを上げて抜け出したのはジー。
シッティングで静かにペースを刻むジーをブイトラゴがこれまた黙々と追走する一方で、コルトとヘップバーンは脱落。
ステージ勝利は、ジーとブイトラゴの2人に絞られたか。
メイン集団は、2級山岳トレ・クローチで牽引をしていたイネオスのローレンス・デプルスが、超級山岳トレ・チーメ・ラヴァレードでも仕事を継続。
デプルスのペースングは、ライバルチームのアシストを削ると同時に、アタックも防ぐまさに絶妙なもの。
デプルスは「メイン集団に生き残っているのはほぼ各チームのエースのみ」という状況に持ち込んでから仕事を終えただけでなく、短い下り区間を利用してメイン集団に戻ってくると、なんとそこから再度牽引を開始。
テイオ・ゲイガンハートやパヴェル・シヴァコフを失いつつこのチーム力とは、やはりイネオスは恐ろしい強さだ。
先頭のジーをずっと5秒強のタイム差で追走していたブイトラゴは、残り3kmを切って急勾配区間に入ると、徐々にその差を詰めていく。
そして、残り1.6kmで遂にジーを捕まえる!!
ブイトラゴはそこから間を空けず、強烈なアタックを繰り出す!!
一気にジーを突き放し、そのままフィニッシュに向かっていく!!
最後はジャージのジッパーを閉める余裕も見せつつ、堂々のフィニッシュ!!
今大会最難関ステージを制したのはブイトラゴ!!
逃げ切りからの強烈な登坂力で、改めてその強さを証明して見せた!!
抜け出しを図ったジーを慌てて追わず、ペースングでの追走により「いつでも捕まえられる」距離を保ち、そして急勾配区間に入るとその身軽さに由来する登坂力を活かして難なくジーを吸収。
そしてアタック一発で決め切るその鮮やかさよ!
クライマー大国コロンビア出身の23歳、ここからの更なる成長が本当に楽しみだ。
メイン集団は、デプルスが今度こそ仕事を終えて下がると、集団を牽いてペースを作るのはこれまたイネオスのティメン・アレンスマン。
生き残っているのは、ゲラント・トーマス(イネオス)、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)、ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、エディ・ダンバー(ジェイコ)、ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)、エイネルアウグスト・ルビオ(モビスター)、アンドレアス・レックネスン(チームDSM)という各チームのエースの他には、ユンボのセップ・クスのみ。
アレンスマンがレックネスンとダンバーを脱落させてから仕事を終えると、メイン集団の先頭に出たのは総合3位のアルメイダ。
アルメイダが静かにペースを上げたその直後、総合2位のログリッチがアタック!!
この動きに総合首位のトーマスは即座に反応、アルメイダは若干離されるも得意のペース走で食らいつき、残り1kmのゲートをくぐった直後に合流してみせる。
総合トップ3による緊張感の漂う山岳決戦、ここからが佳境だ…。
アルメイダは改めて集団の前に出て、アタックを防ぐ目的もあってか淡々とペースを刻む。
残り500mを切ってペースを上げたのは、ここまでは守りに徹していたトーマス!!
この動きにログリッチは反応できているけれども、アルメイダは付いていけない…!!
そのままトーマスが踏み続けると、ログリッチが離されそうになっている…!!
ただ、トーマスは仕掛けるのが早すぎたのか残り100mを切ると若干失速、逆にログリッチは腰を上げてラストスパート!!
ログリッチが最後の最後でトーマスを抜き去る…!!
そのままログリッチが先着、トーマスとの秒差は…3秒!!
アルメイダは、ログリッチから23秒遅れでのフィニッシュ…!!
いや~!!
激熱!!
厳しい勾配でのガチンコバトル、素晴らしかった!!
これで、総合のタイム差は…総合首位のトーマスに対して、ログリッチが26秒遅れ、アルメイダが59秒遅れ。
そして…最終決戦となる第20ステージは、登坂距離7.3㎞・平均勾配12.1%・最大勾配22%というとんでもない勾配を駆け上がる、個人タイムトライアル。
調子次第では1分なんて簡単に逆転し得る、恐ろしいレイアウト。
総合争いの行方は、まだ分からない。