ミニ・ストラーデ・ビアンケ
ストラーデ・ビアンケに登場する未舗装路が一部登場し、登坂の難易度も未舗装路の難易度も本家より一段階軽くした「ミニ・ストラーデ・ビアンケ」とでも呼びたくなるレイアウト。
4級山岳が2つに3級山岳が1つ、そしてフィニッシュの5kmほど手前には、登坂距離1.2km・平均勾配8.4%・最大勾配20%の坂が登場。
逃げ切りか、パンチャー系の飛び出しか、それともまさかの総合争いか、ちょっと展開の予想が難しい…。
アクチュアルスタートが切られると、やはり多くの選手が逃げ切りの可能性を目指して、激しいアタック合戦が繰り広げられる展開に。
激しすぎて…逃げがなかなか決まらない。
スタートから79km地点にある1つ目の4級山岳を越えても、まだバチバチやり合っている。
やっと7人の逃げが決まったのは、100km近く走ってから…って、折り返しを過ぎるまで決まらなかったのか…。
その逃げのメンバーは、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)、マッテオ・トレンティン(チューダー・プロサイクリング)、ルーク・プラップ(チーム・ジェイコ・アルウラー)、カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)、アンドレア・ヴェンドラーメ(デカトロン・AG2R・ラ・モンディアル)、ペラヨ・サンチェス(モビスター・チーム)、フィリッポ・フィオレッリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)と、なかなかに豪華。
対するメイン集団は、総合2分33秒遅れのプラップが逃げに乗っているので、最大でも2分45秒ほどしか先頭にリードを許さない。
この日の目玉とも言える未舗装路区間に入ると、メイン集団は危険回避のための位置取り争いが激しくなり、結果的にペースが上がったことで、先頭集団との差は縮小傾向に。
残り44km、先頭ではプラップが加速を見せて、この動きに反応したアラフィリップとサンチェスと共に、3人で新たな先頭集団を形成。
一方のメイン集団は、「先頭集団を捕まえる意図」を強く持っている訳ではないようで、先頭とのタイム差は1分30秒まで縮まった後に、また2分30秒ほどまで広がっていく。
残り30kmで2分30秒差は…、逃げ切りか吸収か、まだどちらに転ぶか判断が難しいな…。
残り20kmを切ると、残り17.9kmから始まる最後の未舗装路区間に向けて、メイン集団が再度ペースアップ。
メイン集団が未舗装路に突入したタイミングで、先頭との差は1分40秒。
この縮まり方は…このペースが続くと捕まるか?
いやしかし、やはりメイン集団には「逃げを捕まえてやろう」という意気込みをあまり感じないのも事実。
ただそれでも、このままペースが上がったままだと、結果的に捕まえる可能性は十分にあり得る。
メイン集団が未舗装路を抜けて残すは15kmほど、先頭とのタイム差は…1分20秒。
これだけあれば、残り5kmの激坂で更に縮まるとしても何とか逃げ切れるように思えるけれども…、まだ確定ではない感じだ。
先頭集団は、サンチェスがコーナーでのオーバーランによって遅れそうになるシーンがありながら、3人で必死に逃げ続ける。
そして残り5kmを切り、最後の勝負所となる激坂に突入。
メイン集団とのタイム差は…45秒、これまた何とも言えない絶妙なギャップだ。
勝負を決めるべく先にアタックを仕掛けたのは、3人の中ではスプリント力に欠けるプラップ。
しかし逆に、サンチェスがカウンターを見舞うけれども、この動きも決まらない。
更に、勾配が厳しくなる区間ではアラフィリップが腰を上げてペースアップを図るけれども…サンチェスもプラップも粘る!
そのまま3人で頂上を越え、後方とのタイム差は…30秒。
メイン集団はこのタイミングで、ロマン・バルデ(チームDSM・フェルミニッヒ・ポストNL)のアタックにより、ペースが上がる!
メイン集団も頂上を越えてタイム差は22秒、残す距離は4km弱!
ただ、メイン集団は…そこからあまりペースを上げる様子を見せない。
アンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト)による単発のアタックはあったけれども、逆にこの動きの影響で集団は落ち着く格好に。
そして単独で先頭を追うピッコロも、追い付ける雰囲気は無い。
これは…逃げ切り、3人での小集団スプリントだ…!!
残り1.2km、スプリントでは勝ち目がないであろうプラップが最後の望みを賭けて加速を見せるけれども、これは2人に余裕をもって対応されてしまう。
そのままプラップが先頭で残り1kmのアーチを通過、ここでサンチェスはラインをずらして「アラフィリップを前に出させる」という、若手とは思えない狡猾で度胸のある動きを披露して、最後尾へ。
そのままプラップ、アラフィリップ、サンチェスの並び順で巡行しながら互いに様子を伺い合う。
残り200mを切って、真っ先に仕掛けたのはアラフィリップ!
「それを待っていた!」とばかりにサンチェスがその背中を利用して加速、そしてプラップは早々に諦めたか…!
残り50mを切って最後の緩いカーブ、外側からサンチェスが踏み込む!!
鋭い加速でアラフィリップを捲る…!!
白熱の小集団スプリントを制したのはサンチェス!!
強さ、上手さ、度胸を見せつけて、ワールドツアー初勝利!!
特筆すべきは、残り1kmでの動き…!!
プラップの背後からラインを外して、アタックでも仕掛けるのかと思いきや、元世界王者のアラフィリップを前に押し出すとは、なんて度胸!!
この日のレイアウトと展開、かなり厳しいレースを生き残っただけでも評価できるのに、最後の最後にこの上手さと度胸を加えて、見事に勝ってしまうとは…!
24歳のスペイン人、楽しみな選手がまた1人増えて、嬉しい限りだ。