「マン島の超特急」の終着駅
イギリスはマン島出身のスプリンター、マーク・カヴェンディッシュ。
アスタナ・カザクスタンチームに所属する39歳の大ベテランは、本来は昨年末を予定していた引退を、1年延長して今回のツールに挑んでいた。
目標は当然、歴代最多タイとなっている34というツールのステージ勝利数を、単独最多へとするべくもう1勝を挙げること。
流石に往年の力は失ったように見えたカヴェンディッシュを、チームは信じた。
ただツールへ出場させるだけでなく、盟友ミケル・モルコフを筆頭に、ダヴィデ・バッレリーニやケース・ボルという優秀なトレイン要員を揃えるほど、カヴェンディッシュを信じた。
そしてカヴェンディッシュは…応えた。
見事にという表現が適切か分からないほど、あっさりと…要するにしっかりと強さを見せつけて、文句なしのステージ勝利。
ツール・ド・フランス2024、第5ステージ。
単独最多となる35勝目が、ツールの歴史にしっかりと刻まれた。
大きな動きが起こりようのない平坦ステージは、予定通り集団スプリントに向けて進んでいき、最終盤に入るとスピードと緊張感が高まっていく。
フィニッシュまで残り1.5km、アスタナは2人のアシストがカヴェンディッシュを引き連れて集団の先頭をキープと、完璧な体勢に持ち込んだように見えた。
しかしここから隊列は乱れて、残り600mでカヴェンディッシュは完全に孤立してしまう。
それでも冷静に、カヴェンディッシュは現役最強と名高いヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)の背中を捉え、機を窺う。
そして残り400m、イスラエル・プレミアテックのパスカル・アッカーマンが好ポジションに上がっていくのを見つけると、すぐさまその背後に乗り換る。
そのまま早めにスプリントを開始したアッカーマンを、まるで最終発射台のように利用して、カヴェンディッシュが加速。
コースを急激に変更しながらの鋭い加速で、アッカーマンをすぐさま抜き去り、一気に先頭へ。
フィリプセンがわざわざカヴェンディッシュの進路変更に反応して張り付いてくるけれども、背中を捉えるのが精一杯で、横に並ぶ事すらできない。
最後は余裕のガッツポーズを見せながら、喜びを爆発させてのフィニッシュ。
実にあっさりと、まるで簡単なことのように。
マーク・カヴェンディッシュ、歴代単独最多となるツールのステージ35勝目を達成!!
正直言って、もう勝つのは厳しいかなと思っていたけれども…この日の強さ!!
アシストとはぐれながらも、最適解を見つけ出したその嗅覚は、まさに経験の賜物!
そして何より、フィリプセンを寄せ付けないほどのトップスピード…!!
運の要素が強かった訳では無く、この日はただただカヴェンディッシュが最も強かった!!
歴史に刻まれる記録を、内容の伴った勝利で達成したのは本当に素晴らしい!!
おめでとう、カヴェンディッシュ!!
ありがとう、カヴェンディッシュ!!
偉大なスプリンターが伝説となる瞬間を目の当たりにできて、本当に幸せだ!!