本領発揮
2週目の幕開けとなる第10ステージは、カテゴリー山岳が一つも無い、ど平坦なレイアウト。
一応、「横風分断のリスクあり」という情報もあるけれども…まあ十中八九スプリント決着でしょう~。
スタートしてから、選手たちは驚くほどのスローペースでレースを展開。
なかなか逃げも発生せず…と言うか、少し抜け出したベルギー人トリオ、コーベ・ホーゼンス(アンテルマルシェ・ワンティ)、ブレント・ファンムール(ロット・デスティニー)、マクシム・ファンヒルス(ロット)もしばらくするとまたメイン集団に戻って、選手たちは一つの集団のまま緩い雰囲気で走り続ける。
警戒されていた横風による分断も、一瞬だけ緊張感が高まったけれども風の強さが足りなかったようで、結局は未遂に終わることに。
そのまま何も…展開が動くようなことは本当に何も起こらず、レースは集団スプリントに向かっていく。
残り5km、幅の広い道路に各チームが隊列を展開する中、前方に良い形でトレインを作っているのはEFエデュケーション・イージーポスト、アスタナ・カザクスタンチーム、イスラエル・プレミアテックといったチーム。
そしてその背後では、強力なメンバーを揃えるアルペシン・ドゥクーニンクが、虎視眈々と息を潜めている。
残り3.5kmのラウンドアバウトで集団は一旦左右に分裂、この動きでアスタナは位置を下げてしまう。
残り3kmで先頭は依然EFの隊列、しかしこの位置でアシストが2人しかいないのは、少し厳しそうだ。
EFは残り2.5kmでアシストが1枚剥がれると、そのまま先頭で無理をせずにイスラエルの隊列を利用することを選択、これは悪くない判断に見える。
その隙に位置を上げてきたのはロット、そしてアルペシンは相変わらず先頭を争うチームの背後で、力を温存している。
残り2kmを切ると、アスタナがなんとか再び最前線に上がっていこうと試みたけれども、アルペシンがその動きを利用して先頭を奪う!
アルペシンはロベ・ヘイス、ヨナス・リッカールト、マチュー・ファンデルプール、そしてエースのヤスペル・フィリプセンと並ぶ、万全も万全、完璧と言っていいぐらいの体勢だ!!
残り1km、アルペシンの横から上がっていくのは、チーム・ヴィスマ・リースアバイクのクリストフ・ラポルトとワウト・ファンアールト。
総合争いの安全確保のために集団前方に居続けたヴィスマは、この2人だけで勝負を仕掛けてきた。
最終コーナーを抜けて残り400m、ここでファンデルプールがフィリプセンを引き連れて一気に加速!!
猛然と踏み込むファンデルプール、他チームが横に並ぶのすら許さない、相変わらずとんでもない最終リードアウト!!
そして最高の形からフィリプセンがスプリントを開始!!
後ろに張り付くライバルは…並べない!!
最高の形で発射された「現役最強」に、並べる訳がない!!
これが現役最強のスプリンター、フィリプセンの強さ!!
苦しんだ1週目を乗り越えて、改めてその力を証明してみせた!!
残り2kmからは完全に主導権を握り、最終発射台ファンデルプールがライバルチームの希望を粉砕し、最後はフィリプセンが横にも並ばせない素晴らしいトップスピードでフィニッシュまで突き抜ける!!
これは…誰にも止められない!
1週目はなかなか上手く機能しなかったけれども、昨年のツールでは4勝と他を圧倒した、この破壊的な強さ。
ここからまた実力を発揮し続ければ、ビニアム・ギルマイ(アンテルマルシェ)を74pt差で追うポイント賞争いも、面白くなってきそうだ。