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【レース感想】ロンド・ファン・フラーンデレン2024

雨のコッペンベルグ

石畳と激坂の組み合わせが過酷な展開を生む、「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン

モニュメント(5大ワンデーレース)の一つに数えられるこのレース、事前の展望として今回注目を集めていたのは、明らかに抜きんでた優勝候補の存在。

つまり…2020年と2022年の優勝者、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)をどうやって止めるのか、だ。

対抗できる存在の筆頭候補、ファンデルプールにとって最大のライバルであるワウト・ファンアールト(チーム・ヴィスマ・リースアバイク)は、4日目のドワーズ・ドール・フラーンデレンで落車により骨折、欠場を余儀なくされてしまった。

同じく優勝候補として考えられていたマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)も、同じ落車に巻き込まれていて、出場はするものの明らかにコンディションは万全ではない。

チーム力も強大だったはずのこの2チームは、セカンドエース…リドルはクリストフ・ラポルト、トレックはヤスペル・ストゥイヴェンと、重要な駒を欠いた状態でレースに臨まざるを得ない状況でもある。

果たして、ファンデルプールを止められるのか。

止められなかった場合、何が起こるのか。

雨で路面が濡れる悪条件の中、スタートの号砲が鳴る。

 

8人の逃げに対して、メイン集団を牽引してレースをコントロールするのは、やはりアルペシンのアシスト、シルヴァン・ディリエ。

レース中盤に訪れる最初の難所、1度目のオウデ・クワレモントに突入して、レースは本格的に「開戦」する。

 

レースの構図は、完全に戦前の予想通りだった。

絶対的な優勝候補であるファンデルプールを擁するアルペシンと、その牙城を何とか崩そうと試みるライバルチーム。

焦点は、ファンデルプールを「丸裸」にして、そこから消耗させられるかどうか。

ライバルチームは、積極的な動きで揺さぶりに掛かる。

しかしながら、アルペシンは数年前までのような、ファンデルプールのワンマンチームでは無くなっている。

アクセル・ローランスが、ジャンニ・フェルメールスが、そしてメカトラブルで一度は遅れたセーアン・クラーウアナスンが、ライバルのアタックを潰し、そしてファンデルプールをエスコートする。

ヨナス・アブラハムセン(ウノエックス・モビリティ)のアタックも、マッテオ・ヨルゲンソン(ヴィスマ)のペースアップも、ピーダスンの飛び出しも、余裕をもって防がれる。

世界王者の証である虹色のジャージを身に纏うファンデルプールは、優秀な従者に護衛されながら、慌てず騒がず、集団の中で静かに存在感を放っていた。

 

残り56km、2度目のオウデ・クワレモントに先頭で突入したのは、積極的なアタックで飛び出しを見せたピーダスン。

ただし、その背中にはしっかりとフェルメールスがマークで張り付き、しかも後方のメイン集団とのタイム差は10秒強しかない、極めて厳しい状況。

オウデ・クワレモントの中ほど、ファンデルプールは集団の先頭で自らペースを上げて、ピーダスンをそのまま飲み込むだけでなく、厳しい絞り込みを掛けにいく。

ファンデルプールに付いていけたのは、オイエル・ラスカノ(モビスター・チーム)、ローランド・ピシー(グルパマFDJ)、ディラン・トゥーンス(イスラエル・プレミアテック)、ティム・ウェレンス(UAE)、そしてピーダスンと、わずか5人のみ。

直後の舗装路区間で後続集団が一旦追いつくけれども、力の差は明白。

ファンデルプールに対して、ここから何か打てる手はあるのか…。

 

続くパテルベルグのの登坂を抜けた直後、飛び出しを見せたのはイヴァン・ガルシア(モビスター)。

ガルシアは続く難所…急勾配と荒れた石畳が特徴的なコッペンベルグに、20秒ほどのタイム差を有して突入していく。

しかし、コッペンベルグに入ってほどなくして、ガルシアはバイクを降りて立ち往生…?

どうやら、雨で濡れた石畳に対して明らかにグリップ力が足りなかったようで、タイヤをいじって空気圧を下げようとしている。

20秒のマージンが水の泡になってしまったガルシアを抜き去るメイン集団、その先頭はファンデルプール。

悪路と悪名高いコッペンベルグの石畳登坂、ライバルたちが明らかに苦しむ中、シクロクロス仕込みの悪路の名手、ファンデルプールの力強い踏みが止まらない…!!

ヨルゲンソンが単独での追走を試みるけれども、その差は明らかに開いていく!

そして後方の集団は、ほとんどの選手がそのまま登るのを諦めて、バイクを手で押して歩く、地獄絵図に…。

 

コッペンベルグを抜けた時点で10秒弱だったファンデルプールとヨルゲンソンのタイム差は…徐々に開いていく。

これは…明らかにヨルゲンソンのペースが遅いか?

ターイエンベルグを抜けて残り37km、気が付けば50秒ものタイム差に…。

ヨルゲンソンは追走集団に追いつかれ、そして追走集団のペースは上がらない。

アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)とディラン・トゥーンスが2人で飛び出してファンデルプールを追いかけるけれども、ファンデルプールとの差は広がるばかり。

3度目の…最後のオウデ・クワレモントを抜けて残り16km、ファンデルプールのリードは、2分弱。

もう、追いつきようがない。

冷たい雨の中、残りはファンデルプールのウィニングランだ。

 

雨の影響でまともに登るのも困難なほど過酷になった難所、コッペンベルグの登坂での抜け出し。

残り数kmは、少し力を抜いて走る余裕があるほど、力の差を見せつけての独走。

3度目のロンド・ファン・フラーンデレン制覇は、あまりにも圧倒的に。

世界王者による圧勝は、力強く、そして美しいフィニッシュポーズで締めくくられた。

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ファンデルプール、格の違いを見せつけての圧勝!!

3度目のロンド・ファン・フラーンデレン制覇は、史上最多タイとなる偉業!!

とにかく、コッペンベルグの登坂よ…!

雨に濡れた石畳の急勾配登坂は余りにも過酷で、ほとんどの選手がまともに登るのを諦める中、ただ一人激走!!

シクロクロス仕込みの悪路適正、そして「怪物」とも称される規格外のパワーは、本当に圧倒的だった!

そして同じように称賛するべきは、アルペシンのチーム力と戦術。

ひたすらにファンデルプールの力を信じて、勝負所までしっかりと守り切ったその判断と遂行力は、完璧と言っていいほどの素晴らしさ。

これでアルペシンは、ミラノ~サンレモに続いてのモニュメント2連勝。

4/7のパリ~ルーベも、このまま制覇となるだろうか。

 

後続の表彰台争いは、抜け出していたベッティオールとディラン・トゥーンスが、フィニッシュ直前…本当にフィニッシュギリギリ、残り50mで追走に吸収されて、小集団スプリントに。

先着で2位に入ったのは…ルーカ・モッツァート(アルケア・B&Bホテルズ)!?

3位にはマイケル・マシューズ(チーム・ジェイコ・アルウラー)かと思いきや、マシューズはフィニッシュスプリントでの動きが危険な斜行と判断されて降格処分、3位の座はニルス・ポリッツ(UAEに。

正直言って、モッツァートの2位は意外過ぎる…。

そしてポリッツ…と言うかUAEは、追走集団に4人も選手を残した結果、3位ポリッツ、4位ミッケル・ビョーグ、5位アントニオ・モルガドと、3人もトップ10入り…って、モルガド!?

モルガド、恐るべしプロ1年目の20歳…。

 

「クラシックの王様」の王

これでファンデルプールは、2019年以降は毎年ロンド・ファン・フラーンデレンに出場して、その成績推移は4位→1位→2位→1位→2位→1位となっている。

初出場だった2019年の4位が唯一の表彰台圏外、その後は1位と2位を交互に繰り返すという、本当にとんでもない成績だ…。

「ライバル不在」とか、関係ない。

ただ、ファンデルプールが強い、単純にそれだけだ。

4/7のパリ~ルーベも、どんな走りを見せてくれるのか、楽しみにしていようではないか。

 

それでは、また!!

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おまけ

第2の推し、ポリッツの雄姿…!

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うおお~!

3位入賞、2度目のモニュメント表彰台、おめでとう!!

このまま、パリ~ルーベを勝ってしまえ!!

2019年の忘れ物を取り戻すのだ~!!